最終更新日 平成14年4月19日
その年の納豆の日本一を決める全国納豆鑑評会で入賞すること3回。実力日本一と言われる大力納豆さんに、平成14年4月12日、工場見学にお邪魔しました。建物に入る前にまわりを見ますと・・・、あっ!納豆自動販売機がありました。
価格は100円均一で、納豆のほかに納豆スナックも売られています。自動販売機をイジりたい気を抑え、ご挨拶しながら建物のなかに入らせていただきます。今回ご対応頂いたのは、坂詰社長とご子息である坂詰取締役。早速、色々なお話をお聞きしようと、いきり立っておりますと坂詰社長から、「まぁ、お茶一杯飲んでから・・・」と、お手製の大根の漬物とぜんまいの油炒め(1本もの)、いわゆる小出の「ごっつおぅ」とお茶を頂きました。久しぶりに、お茶受けとしての漬物に出会い、遠慮なくボリボリと食べていると、ふと目に入った水墨画。
大力納豆さんの主力商品「小出っ子」のパッケージになっている水墨画です。地元の早津画伯の作品だそうで、その昔小出町のポスターを早津画伯が描いた際、その出来の良さに真似をした「パチモノ」が町中に氾濫。気を悪くしていた早津画伯と友人であった坂詰社長は、納豆パッケージに同じような絵柄を使用する際、「筋を通すため」ご挨拶に行ったところ、同じようなものではなく、「私が書く!」と半年の期間で早津画伯から描いて頂いたそうです。「筋を通す」坂詰社長、お茶を飲みつつ、お話を聞きます。まずは、大手納豆メーカーさんにはできないと噂される職人技から。「職人技のメーカーさんと言われますが、製造についてはコンピュータ制御をご利用ですか。」「そうねぇ、いまは使っているわねぇ。引き割りはなんかは、蒸かしていると10秒と気を抜けないでしょ。昔は大変よ、生活してても納豆がどうなってるか気を抜けなくて。いまは、コンピューターの蒸かしに変わって、やっと私の思う蒸かしが他の人でもできるようになったの。」
「あくまで坂詰社長の代役としての機械ということですね。」「でもね、ここらは雷が落ちることも多いのよ。そうすると、機械に影響があるでしょ。そうしたら、もうー昔とった杵柄。いつでも現場復帰できるし、10時間あれば機械なしで同じ納豆が作れるわよ。お客さんにはキチンとした納豆をお出ししたいでしょ。」・・・・お、恐るべき、プレイング・マネージャー。機械はただの道具であり、強みはあくまで自分の腕の職人技と断言されます。その坂詰社長、実は納豆があまりお好きではなく、好きでないからこそ、納豆の出来不出来をみる検品は他の方より厳しいそうで、社員の方からも、「社長、厳し過ぎます」との指摘を受けることもあるそうです。検品は毎朝4人の方で行い、発酵させる室のなかでいうと、
・湿度が高いところの納豆・湿度が低いところの納豆・温度が高いところの納豆・温度が低いところの納豆を食べるそうですが、一つでも「納得のいかない納豆」があった場合には、その納豆を作ったロットを丸ごと廃棄する徹底ぶりです。私であったら、「もったいない、もったいない」で食べてしまいそうですが、そこが職人とただの納豆好きの差でしょうか。ポリシーをお聞きしたところで、工場内に入ります。二万食を製造するこの工場は、平成元年にできたそうで、対角線上に配置された製造ラインは、コンパクトにまとまっております。
大力納豆さん、先代、昔の工場時代に納豆ファージ(納豆が作れなってしまいます)にやられてしまった経験があるそうで、300俵もの大豆を無駄にして廃業危機に見舞われたそうです。そんななか、坂詰社長が、「一回でいいから納豆を作らせてほしい」とお父様である先代に懇願。二週間に及ぶ洗浄、改良努力によって、美味しい納豆の製造に成功!涙の復活劇でございます。その廃業危機があってのことでしょう、衛生面での気遣いはいままで見学させて頂いた納豆工場でもトップクラスです。設備面では、・配管屋さんに一回断られたぐらいの配管溝通常は四角い溝を作るのですが、清掃のしやすさを考え、円形の溝になっています。
・床コンクリートは張替えのいらないもの約9倍のコストをかけ、新潟では初の張替えのいらないコンクリート。多くの納豆屋さんが床の張替えで製造日程調整、清掃に苦労していますことを考え、張替えのいらない床コンクリートを採用。となっており、人の面では「従業員の白衣は毎日洗うこと」を義務づけ、洗ってこなかったら、即クビ!と断言。そして、納豆ファージによる廃業危機を乗り切ったからこその「衛生状態は納豆の顔に現れる」というお言葉、重みがございます。また、発酵させる室も通常1間半の製品を2間(4坪)にカスタマイズ。基本的に納豆製造機械メーカーさんの標準は信じないそうです。工場見学を終えたところで、NHK新潟さんから坂詰社長にインタビュー。納豆にかける熱い想い、そしてありがたいことに納豆業界にとっての納豆学会の存在を語っていただきました。実は今回、NHK新潟さんの人物紹介の企画で、僭越ながら私が取り上げられることになったので、レポーターさん他スタッフの皆さんと伺いました。坂詰社長へのインタビューが終了したところで、工場見学終了・・・・では、ただのTVロケ。チッ、チッ、チッ、納豆学会は、そんなことでは終わりません。大力納豆さんのご協力を得て、大豆が変わるとどれだけ納豆の味が変わるのか、「エンレイ」と「鶴の子」の2種類の大豆で作った納豆をレポーターさん、NHK新潟のスタッフの皆さんに食べ比べて頂きました。
普段、二種類の納豆を同時に食べることがないだけに、皆さんからは「あっ、違う・・・」とのコメント。「ザクとは違うのだよ、ザクとはね」『機動戦士ガンダム』ランバ・ラル風納豆啓蒙活動「成功!」でございます。また、納豆があまりお好きでない坂詰社長のオススメの食べ方、大根おろし+じゃこを納豆の量の3倍入れるということも体験させて頂きました。
廃業危機をのりきり、機械に支配されない納豆製造を推し進めるプレイングマネージャー坂詰社長。ご子息である坂詰取締役との2ショット写真での微妙な距離は、次世代に期待する強烈なプレッシャーでしょうか。
坂詰取締役(左) 坂詰社長(右)
プレッシャー?
撮影も終え、お茶を飲みつつ、雑談をして見学を終えました。ご対応頂いた坂詰社長、坂詰取締役をはじめとする大力納豆の皆様、誠にありがとうございました。当日の模様は、4月18日(木)18:00からのNHK新潟
「新潟発ふれっしゅ便」内「噂の新潟人」コーナーで紹介されました。