「大豆を食べてイキイキ健康!」
関東大豆シンポジウム

 最終更新日 平成15年2月15日

 平成15年1月23日に、埼玉県さいたま市のさいたま新都心にて、農林水産
省関東農政局さん主催の「関東大豆シンポジウム」が開催され、出席してきました。
 200名を超える、農業関係者、大豆製品製造者、一般消費者の方が集まり、
かなりの熱気でアツーーーイ質疑応答もございました。
 当日の模様を、簡単なメモではございますが、以下にまとめましたので、ご報告します。
*大変失礼ながら、敬称略とさせて頂きました。

 1.主催者挨拶(農林水産省関東農政局長) 

   毎年大豆の作付け面積は伸びているが価格は下降気味。
   転作大豆を見ると手抜きをしているという感じがするという意見もある。
   プロダクトアウトからマーケットインへの転換が必要に思っている。
 
2.「世界の大豆・日本の大豆・関東の大豆」
    農業技術研究機構 作物研究所 豆類栽培生理研究室長
                       有原 丈二
 
  ・大豆の祖先であるツルマメからの歴史を説明
  ・世界の大豆の作付け面積は、アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、中国の順に多い。
  ・大豆は政策に非常に作用されやすい穀物である。
  ・アメリカの大豆は歴史が浅く、第二次世界大戦後から本格的に栽培に始まった。
  ・ブラジルの大豆は、痩せた土壌との闘いであり、ニクソンショック移行、日本政府
   も動いた。一番ポピュラーな大豆に当時の経団連会長の名もついていた。
  ・インドは、バーティフルと呼ばれる黒い土に栽培する努力をした。インドにとって、
   大豆は国を変える作物。
  ・直接水稲ののち、耕さず播種する方法で、かつ窒素固定能の良い作系4号と
   エンレイの新しい品種を投入するよう研究している。
  ・種子水分が低いと種皮を除いた種子は数時間の浸漬で崩壊する。
   11%では危ない。15%に!
  ・春に種をまいた際、水分が多く浅い場合に、熱い気候が来ると青立ちがよく起こる。
   地球温暖化が進んでいる今日、この被害は多い。
  ・種皮の割れやすい大豆を見ると、カルシウムが少ないことが多く、主な原因と考えて
   いる。対応策は研究中。
  ・豆腐の凝固と栽培条件についても研究している。
  
3.「転作大豆栽培の取組〜安全で安心・低コスト栽培」
        埼玉県農業振興公社 営農推進部長 福田 悟
 
  ・北埼玉郡川里町をモデル地区として、安全で安心・低コスト栽培に挑戦した。
  ・連作障害を回避するために、夏は大豆と飼料イネとした。
  ・機械収穫に向いたタチナガハを作った。
  ・低農薬に近づこうと努力はしているが、消費者の要望である無農薬の栽培まで
   はいたっていない。
  ・大豆のためのヘリコプターによる農薬散布は、地上1mほどで散布し、ヘリ自体
   からの風も利用して、葉の裏側までいきわたるようにしている。
  ・現在の課題は、担い手育成。
  
4.「土と食づくり・地元産大豆利用の食提供」
       企業組合ふるさと薬膳「森樹(しんじゅ)」理事長
                     前島 節子
 
  ・山梨県小渕沢町の婦人を中心に農業の町として街おこしをしている。
  ・「薬食同源」の考えをもとに地元の大豆を使った豆腐や低農薬有機栽培
   による野菜を利用した食事を提供している。
  ・平均年齢60歳の婦人による運営で、年間350名の営業を
   し、来客は約3万5千人。年間売上約4560万円。
  ・食材は会員からの仕入れ、町内一般商店からの仕入れで、売上の80%が
   地元に還元されている。
  ・組織は、生産部、加工部、体験工房部、郷土食研究部に分かれている。
  
5.質疑応答
  Q1.先ほどカルシウムの問題で種皮が破れるとあったが、対応策はないのか。
     (長野農協関係者・新井氏)
  A1.石灰をまくという対応策がある。(有原講師)
  Q2.石灰はまいたのだが・・・(長野農協関係者・新井氏)
  A2.刈り取りの遅れがあるのではないか。(有原講師)
  Q3.「しも」の問題もあったので、刈り取りの遅れはあった。
                   (長野農協関係者・新井氏)
  A3.皺が急にでる時期があるので、それも研究している。(有原講師)
 
  Q4.豆腐の凝固と栽培の関係を研究されているとあったが、凝固材の種類によって
    変えているのか。(三井田)
  A4.にがりの量を0.25%に固定して実験している。今後は対象を増やす。(有原講師)
  Q5.担い手を育成するのが課題とあったが、「農業をカッコイイ」と思わせることと、
     今回成功したモデルの推進のどちらを重点的にやっていくのか。(三井田)
  A5.担い手育成は、営農場所の確保を優先的にだが、一緒に実施していこうと考え
     ている。(福田講師)
  Q6.「森樹(しんじゅ)」の定食の価格2000円は、その
     価値が伝わる人にしか分かってもらえないと思うが、理解
     活動は何か行っているか。(三井田)
  A6.安い単品料理も用意しており、お金を惜しむ人にはそれ
     なりに楽しめるようにしている。(前島講師)
  Q7.一般的な安全と法的な安全は違うのではないか。
     完全に無農薬の大豆は収益を上げる大豆は作れないと思
     うが、講師の先生はどう思われているのか。
                  (長野県農業試験場職員)
  A7.実際に成功している例はある。(有原講師)
  Q8.何をもって安全、安心と呼ぶのか。
     また、若い方が就農した場合に生活はできるのか。
                  (長野県農業試験場職員)
  A8.安全、安心は生産者の顔が見えること、国の決めた基準の農薬量などで
     生産することでクリアしていると思う。
     就労に関しては、なんとか食べていけるところまでは、お手伝いしている。(福田講師)
 
     三井田、愛のツッコミ:回答になっていない・・・
 
  Q9.GMOの研究はしているのでしょうか。 (イベント演出会社経営)
  A9.他の機関で研究している。(有原講師)
 Q10.講師の先生方はさかんに安全、安心というが、安全の基準は本当はリスクの
    理解にあるのではないか。 (イベント演出会社経営)
 A10.安全、安心は、先ほど説明したように、国が評価した農薬、その使用限度を
    守ったもので、クリアできるものである。(福田講師)
 
     三井田、愛のツッコミ:
         食品の安全は、リスク・マネジメントの考えを取り入れて、
         しっかり説明すべき!
 
6.「大豆を巡る食文化」
   東京農業大学 応用生物学科 醸造学科 教授 小泉 武夫
 
 ・縄文中期には炭化した大豆がでてきている。
 ・『古事記』『日本書紀』にも大豆はでてきており、日本民族の貴重なタンパク源である。
 ・縄文中期の沖縄遺跡からは、北海道しかとれない黒石も発見されており、食文化の
  流通は現在創造するよりもはるかに盛んだったと予想される。
 ・「真面目」の語源は豆である。
 ・正月行事の「歯がため」は消えつつある。年をとるごとに大豆の葉っぱや枝を乾燥して
  保存しておき、それを煮だし、ご飯をいれ、雑炊を作る。これが、「歯固め」の儀式であり、
  無病息災を願った。
 ・小正月の行事はもう消えつつある。大豆の皮を干したものを家の周りにまく風習もあった。
 ・豆には呪力がある、霊力があると考えられてきた。
 ・奈良時代からの大豆に関する情報を集めると、病気に直結する。
  疫病や結核、歯の痛みに豆は効くと思われてきた。
 ・平安時代には生の豆を噛んで、痛い歯に塗った。
 ・『灰の歴史』という本を書いたことがあるが、灰に大豆を12個埋めて、1年間の占いをする
  風習が日本にあったことが分かった。
 ・錠剤の「錠」は豆の意味であった。
 ・五穀のなかで2番目に体に良い、1番は胡麻と書かれている。
  『イ心法』。豆の煮汁で食中毒に良い、産後、むくみ、胃腸、貧血、お腹の張りに効くと
  書かれている。発酵した大豆、「クキ」も良いと書かれているのには驚きがあった。
 ・「クキ」は純日本的なものだと思っている。
  発酵に麹菌を使っており、麹菌は米文化につきもの。
 ・納豆を食べるのは、日本だけであり、糸引き納豆も日本独自に発展したと思っている。
 ・長野県飯田市に強く残っている、味噌信仰も面白い。
  家によって、薬効が違うと伝えられている。
 ・米を作るときには、田んぼのあぜに大豆を作るのは、太古より、鉄則だった。
  実りも良いという研究結果もでている。
 ・タンパク質は和牛18〜19%、大豆17%程度。大豆は根瘤バクテリアの窒素固定
  により、アミノ酸を作り、そこからタンパク質を作る。米作りには窒素、リン酸が必要。
  昔の日本の田んぼで、蓮華草を育てていたのは、豆科のこの植物によって、窒素
  固定の補助をしていたのではないかと思う。日本人の智慧。
 ・肉食信仰、スタミナ食万歳の日本の今の食文化はおかしい。
  民族には刷り込まれた、食文化、遺伝子があるはずである。
  モンゴロイドには変わりなく、西洋人と同じ肉食で繁栄するとは限りない。その民族
  は、長い時間かけて染み付いた、その土地の食文化を守るべき。
 ・日本型の食事で真似できない特徴があると、アメリカの食文化の学会で言われている。
   カロリーの取り方
   食材の取り方
   世界一ヘルシーな食文化
 ・食料自給率を早く上昇させないとこの国は滅びる。地産地消を推進すべき。
 ・「腐」の中国語の意味は、以下の3つあるが、一般的には
  ブヨブヨしたもの。
   集める
   ブヨブヨしたもの
   腐る
 ・納豆は「納所」が語源と言われているが、藁に「納める」が語源だと個人的に考えている。
 ・日本では発酵させた豆腐が少なく、沖縄の「豆腐よう」ぐらい。
  紅麹をすりつぶして泡盛に入れ、それに豆腐をつける。
  古代沖縄では、豆腐に紅麹をつけることもあったようだ。
 ・台湾の臭豆腐などは臭いが、油で揚げた途端食欲をさそう。
  これからの豆腐は発酵の時代だと思う。
 ・自分が好きな豆腐は、水分を飛ばした豆腐を、梅酢に10日間ほどつけたもの。
  これは酸っぱくない。豆腐のタンパク質が緩衝能をもっている。
 ・高野豆腐(凍み豆腐)、袋状の油揚げは日本だけであり、煮しめのなかの
  高野豆腐は一番の好物。栄養も豆腐の4倍。
 ・糸引き納豆は、関西で食べないと言われているが、それはウソ。
  『納豆の快楽』を書いたときに、納豆のご飯についてを書いたが、納豆をご飯
  にのせる食べ方は、どの文献にもない。
  江戸時代には、納豆をかけるご飯も少なかったこともあるのではないかと思っている。
 ・蕪村は納豆好きだったようで、安い遊郭に遊びに行った翌朝に
  納豆汁を好んで食べていたようだ。(兵庫県室津)
 ・関西ではほとんど納豆汁。味噌(豆麹)を作ろうと思うと、当時のずさんな温度管理
  のなかで、納豆になったと考えられる。具は豆腐。
 ・日本人はタンパク質をほとんどとらない、炭水化物の民族だと思われてきたが、
  実際には大豆類に助けられ、タンパク質をとっていた。
 ・八丁味噌の巨大な漬け桶の中心にある、「トロ味噌」はいままで食べたことがない
  ほどの美味だった。
 ・「かしいた」の漬物が食べてみたいと思っている。(昆布の味噌漬け)
 
7.質疑応答
 Q1.ご飯と納豆の食べ方という点で、私も調査しているが、いつから納豆をご飯の上
    にのせるようになったかが、いまだに色々な文献を探してもでてこない。先生は
    いつから納豆を ご飯にかけるようになったとお考えになっているか。(三井田)
 A1.明確に記載された文献はないが、個人的には明治初期だと思っている。 (小泉教授)
 Q2.湯葉を豆乳からとって楽しんでいるが、湯葉が良くとれる豆乳ととれない豆乳がある。
    これは何の違いからくるのか。                 (埼玉県の主婦)
 A2.専門外なので、答えられません。
    知らないことについては、語らないことにしている。             (小泉教授)

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