最終更新日 平成14年2月25日
平成14年2月22日(金)、宮城県仙台市にありますJAビル宮城(宮城県仙台市青葉区上杉1−2−16)にて、納豆に日本一を決定する「第7回全国納豆鑑評会」が行われました。今回は、全国納豆協同連合組合連合会の会員の40%にあたる124社から一企業一部門のみ出品で、極小・小粒部門(6.5mm未満)ひきわり納豆も同部門中粒・大粒部門(6.5mm以上)の2部門での審査です。。面白いことに、毎年出品は小粒、大粒ほぼ半分ずつだそうです。審査員は26名。失礼ながら敬称を略し、役職名で列挙させて頂きます。・高星進一 全国納豆協同連合組合連合会会長・同 副会長・同 常務理事・同 相談役・須見洋行 倉敷芸術科学大学産業科学技術学部教授・永山久夫 食文化研究所・茨城県工業技術センター主任研究員・宮城県地域婦人団体連絡協議会会長・宮城県PTA連合会会長・納親会会長・宮城県消費生活センター技術次長・宮城県学校給食会理事長・青森県納豆組合理事長・岩手県納豆組合理事長・宮城県納豆組合理事長・秋田県納豆組合理事長・山形県納豆組合理事長・福島県納豆組合代表理事長・武陽食品株式会社東北第一営業所所長 常務取締役・三倉産業株式会社部長・全国農業協同組合連合会農産部大豆販売課職員・東北農政局 企画調整部 部長・宮城県産業経済部長・宮城県農業協同組合中央会 会長・農林水産省総合食料局食品産業振興課 課長補佐・厚生労働省医薬局食品保健部企画課 課長補佐一次審査は、審査員が大粒組と小粒組に分かれ、8:30より始まりました。
評価は5点満点、一次審査で約1/4に絞られ、その後に二次審査、同点があった場合には三次審査が行われます。審査会場に入りますと、「むおわぁ」という納豆の匂いのなかに、真剣なまなざしで納豆を食べる白衣の審査員のお姿に圧倒されます。
永山先生、須見教授も真剣です。大粒、小粒色々な納豆が、メーカー名を特定できないように番号をつけられ並べられています。
「あっ、金粉・・・・」『メーカー名が分からないように』と記述してしまいましたが、明らかに菊水食品さんの「Gold in Nattou」と分かってしまったような気もします。第一次審査が終わったところで、マスコミへの説明会となりました。全国納豆協同連合組合連合会PR委員長の岡崎様、「納豆市場は113.4%の個数の伸びがある。全国納豆鑑評会はPR目的もあるが、品質の向上も目的である。来年は長野で開催予定」「この不況の時代のなかで納豆が伸びているのは、納豆の本当の良さを分かってくれている人が増えているから」とのご挨拶ののち、質疑応答となりました。
Q.審査のポイント、最近の納豆の動向は?A.審査のポイントは3つ。食感、納豆菌の繁殖の具合、糸引き、香り。(回答 黒田様)最近の納豆の動向としては、臭い抑えめで糸引きの弱いもの、コストの安いもの、それと対極に位置するこだわりの納豆です。(回答 野呂様)おっと、質問「魔」の私としてはここで質問しなければなりません。三井田:スイマセーン、2点質問があります。審査風景を拝見させていただいて、発酵過程で一般的な発泡スチロール容器、カップ、経木、藁を使ったものが分かったのですが、経木の香りがあった場合の評価はどうなるのでしょうか。2点目の質問は、評価の基準なんですが、最近は安いから買うという方が増えております。価格と味のバランスという面での審査を今後行う予定はあるのでしょうか。ご回答:経木の香りが評価の裁定に入るかということですが、総合的に製品として評価しますので、結果的に良い香りに仕上がっていれば評価の対象となります。また、値段を考慮しての評価を行う予定はありません。(回答 野呂様)直接の回答になるかどうか分かりませんが、先日消費者にリサーチをかけたところ、値段が安いから買うという人より、健康に良いから買うという人が増えてきていること分かりました。 (回答 リサーチ会社 IMPさん)ようし、調子に乗って、さらに質問です。三井田:今回、黒豆の出品はないように感じましたが、粒割りや黒豆の出品があった場合、それらに対する色の評価等は通常の大豆と異なると思いますが、どのように評価しますか。ご回答:評価を細分化していく案はでているが、実際には評価者の食べる量の問題もあり難しいので、それ単体でよく出来ているかできていないかで評価する。 (回答 野呂様)もういっちょ、配布された資料について質問。三井田:消費者に対するリサーチ資料のなかに、納豆購入時重視点として、1.日付の新しいもの 69.3%2.価格 66.3%3.納豆の種類(大粒/小粒など) 57.6%となっておりますが、家でゴロゴロしているオトーサンが「あらヤダ、(手首のスナップ効かせ)この納豆安いわぁ〜」(会場の一部で寒い笑い)と言って買うとは思えません。男女別の集計結果はございませんでしょうか。ご回答:男女別、都道府県別に集計した資料がございますので、お名刺を頂ければお送りいたします。(回答 リサーチ会社 IMPさん)配布された全国納豆協同組合連合会PR委員さんと納豆インフォメーションセンター(IMPさんに委託)による「納豆に関する全国消費者調査<サマリーレポート>」という2141名を対象に行ったインターネットでのリサーチ(今年1月18日〜25日)の結果ですが、なかなか興味深いものもあり、例えば「試したい納豆調理方法」なんてものもあり、1.納豆餃子 20.3%2.天ぷら、フライなどの揚げ物 19.2%3.マグロ納豆 17.9%という結果でした。マスコミ説明会が終わり、3時間経過。同点決勝による三次審査もあったとのことで、かなり遅れ気味の結果発表となりました。その結果は、以下です。最優秀賞 農林水産大臣賞「なっとう村」栃木県・こいしや食品優秀賞 農林水産省総合食料局長賞「国産大豆100%納豆」宮城県・わたり納豆農林水産省総合食料局長賞「道産納豆」北海道・道南平塚食品
厚生労働省医薬局食品保健部長「お豆腐屋さんの納豆」北海道・オシキリ食品厚生労働省医薬局食品保健部長「ふるさとカップ納豆」大分県・原田製油
優秀賞 東北農政局長賞(東北6県のみ)「白神山麓の有機大豆納豆」青森県・太子食品宮城県知事賞(宮城県のみ)「ふるかわ納豆」宮城県・細川食品優良賞 全国納豆協同組合連合会長賞(大粒)「すず丸っ子ちゃん」北海道・中田園納親会長賞(小粒)「吟選 つるの子」新潟県・大力納豆
最優秀賞となったは、栃木県のこいしや食品さんでした。
やはり国産大豆の強さが目立ち、中国産大豆での入賞は、宮城県の細川食品さん「ふるかわ納豆」だけでした。また、北海道のメーカーさんの底力も垣間見たような気もします。発表後、高星進一全国納豆協同連合組合連合会会長より、「納豆の質がよくなってきており、優劣をつけがたい。これを機会に、皆さんには納豆の良さをさらに知ってほしい。今年も納豆の需要は伸びている。この追い風を生かしたい。これは今回出席頂いている永山先生や須見先生のお陰によるところも大きい。これからも美味い納豆の提供にむけて頑張っていきたい。ありがとうございました」とのご挨拶があり、続いて須見洋行倉敷芸術科学大学産業科学技術学部教授、永山久夫食文化研究所オーナーより、以下のようなご挨拶がありました。須見教授:納豆の売れ行きがいいそうですが、一般の方が興味をもって本物の食品を求めてきていると思います。納豆は女性ホルモン不足やボケの問題に答えてくれる食べ物でありますし、江戸時代ぐらいから変わらなく輝いている食品です。和食の見直しとともに納豆が脚光を浴び、欧米でも注目されています。永山先生:自己責任と言われている現代、健康も自分で管理するのものであり、その管理で注目されているのが納豆であると思います。美味しく食べることができ、安価でしかも身近にある食品である納豆は、時代が要求している食品でもあります。また、レシチンや大豆イソフラボンなどは、IT時代、高齢化社会に必要な栄養であり、まさに時代の食品です。ソルトレイクオリンピックでの成績不振は日本人の体力のおとろえであり、食の乱れと感じています。皆様を含む日本人には、これから納豆を基本にしっかりとした食生活をおくってほしいと思います。ここで質問タイムとなりましたので、早速の質問。
私、ホント、やな奴なんです。三井田:須見先生、永山先生と両先生がいらっしゃっるので、1点ずつお伺いしたいことがあります。まず須見先生にご質問なのですが、先生が発見された血栓溶解成分であるナットウキナーゼは既に一般の方に知られるところとなりましたが、その一方、ビタミンKによる血液凝固作用もワーファリンと納豆の関係から知られるところとなりました。このことが混同してのことと思いますが、消費者からは、ナットウキナーゼとビタミンKの関係がよく分からず、「納豆は血液を固める」といった内容の質問ももらうときがございます。先生の場合は、こういった質問に対してどうお答えになりますでしょうか。須見教授:これは多くの医者も間違っているところでもありますが、ビタミンK自体の血液凝固作用で、血栓ができることはありません。これは医学上の常識にもなっています。ですので、ナットウキナーゼの問題とビタミンKの問題は切り離してお答えしていいと思います。三井田:ありがとうございます。続いての質問で申し訳ありませんが、永山先生にご質問です。よく昔から関東では納豆をよく食べ、関西では一切納豆を食べなかったという噂がありますが、これに対しては、納豆売りの発祥が京都であったことを考えますと俗説に過ぎないと言えますが、その際に関西で納豆が定着しなかった理由として、ご飯を炊く時間という説がございます。江戸では朝にご飯を炊くから、熱々のご飯で納豆が定着、京では夜にご飯を炊き、朝はお茶漬け、ぶぶ漬けが主で納豆は定着しなかったと。この説につきましては、永山先生はどうお考えになりますか。永山先生:まったくもってその説の通りだと思います。ただご飯にも関係ない、納豆汁すらも京では普及しなかったのも事実で、これは豆腐の繁栄によるところと考えています。また、江戸での納豆の爆発的な定着は、東北からの出稼ぎが多かったことと、醤油の違いで、特に醤油は濃口醤油の浸透が関係したと思っています。三井田:ありがとうございます。最後に高星会長をはじめ、納豆業界関係者の方への質問ですが、宜しいでしょうか。(「おい、コイツまだ質問するのかよ」といった冷たい視線あり)現在の納豆マーケットのほとんどは大手メーカーさんの支配によるところですが、納豆が持つ地域性や文化性といったものを経済による支配だけではなく、何か保存する、というようなものはお考えになってはおりませんでしょうか。高星会長:特には考えていませんが、地方の父ちゃん母ちゃんでやっているような納豆屋さんは、「こだわり」ある納豆を造っていかないとやっていけません。固定客をつかむ経営なので、それで保存していくと思います。三井田:(背中に冷たい視線を浴びながら)ありがとうございました。今回の納豆もかなりのレベルアップがあったようで、審査時間が長くなった鑑評会でしたが、前日の国分町でのお遊び・・・もとい、歴史散策の疲れも吹っ飛ぶようなアツイ納豆談義が会場のあちらこちらで行われ、充実した一日となりました。事務局の皆様、出品された皆様お疲れ様でした。次回は長野で開催とのことですので、「質問魔・三井田」、来年も潜入したいと思います。