1992年の新聞記事

最終更新日 平成13年5月3日
それぞれの記事は引用です。

 
『中部納豆特集=新たな対応を迫られる納豆業界』
92/12/09 日本食糧新聞
 
 【名古屋】ここ数年間、消費者ニーズである健康志向に沿っ
て順調に伸びて来た納豆業界が、ここへ来て岐路・曲がり角を
迎えた感があり、業界は新たな対応を迫られているといえそう
だ。その一つを象徴するものが、このたびの“四強”の一角崩
壊であろう。積極的な設備投資に対して、期待通りの需要がな
かったことによる誤算。業界に与えた影響は決して少なくな
い。
 
 その背景となった需要動向を総理府家計調査資料でみると、
昭和60年以降の一世帯当たり消費金額は、昭和60年の全国
平均一六五五円に対して、61年一七六五円(前年比一〇六・
六%)、62年一九八七円(同一一二・六%)、63年二二四
九円(同一一三・二%)、平成元年二三三九円(同一〇四・
〇%)、同2年二五三二円(同一〇八・三%)、そして昨3年
二八八〇円(同一一三・七%)となっている。
 
 これを見ても分かるように、62・63年と二ケタアップに
より一気に需要を拡大、その反動というべきか平成元年は停滞
したが、同2年には何とかペースを取り戻して来ている。そし
て、昨3年は二八八〇円で計算上は一三%アップとなったが、
この時期には価格改定が行われており、これを勘案すると、伸
びは元年程度に迫ったものとみられる。
 
 そうした経過のなかで、業界にとってのエポックメーキング
は、平成2年に一世帯あたりの消費金額が二五三二円に達した
ことにより、推定だが、小売マーケットサイズで念願の一〇〇
〇億円を突破したことだろう。業界としては、この大台を当面
の目標としてひたすら頑張り、需要拡大を図って来ただけに、
業界にとって画期的なことだった。
 
 そして、その背景が大手筋の積極的な設備拡大による市場開
拓が、スーパーでの売場面積の拡大につながり、これが客需要
増に結びついたことは論を待たない。と同時に、その積極策
が、今回の不詳事に見られるように、裏目に出る結果にもなっ
た。
 
 さて、迎えた平成4年。月別の消費金額をみると、1月二四
〇円(前年同期比一〇六・一%)、2月二八七円(同一二四・
二%)、3月二九一円(同一一一・四%)、4月二七一円(同
一〇七・五%)、5月二七〇円(同一〇八・四%)、6月二四
六円(同一〇三・三%)、7月二三七円(一〇一・二%)、8
月二三八円(一〇五・三%)となり、8月までの累計金額は二
〇八〇円となる。同期の昨年対比では一〇八・五%となり、昨
年のように価格改定の効果はなくなっているだけに、まずまず
の経過となっており、それほど悪いという感じはない。
 
 こうした状況を背景に、中部地区の消費金額をみると、次の
とおりである。
 
 ▽岐阜‐昭和60年一一三一円、61年九三三円(前年比八
二・四%)、62年一〇九四円(同一一七・二%)、63年一
二三二円(同一一二・六%)、平成元年一六七九円(同一三
六・二%)、2年一七八〇円(同一〇六・〇%)、3年一七八
二円(同一〇〇・一%)▽愛知‐60年一〇一〇円、61年一
〇四七円(同一〇三・六%)、62年一二五七円(同一二〇・
〇%)、63年一三五〇円(同一〇七・三%)、平成元年一四
八〇円(同一〇九・六%)、2年一六一七円(同一〇九・二
%)、3年一六八八円(同一〇四・三%)▽三重‐60年九三
二円、61年九六八円(同一〇三・八%)、62年一〇六八円
(同一一〇・三%)、63年一三四四円(同一二五・八%)、
平成元年一三一一円(同九七・五%)、2年一六〇五円(同一
二二・四%)、3年一八一八円(同一一三・二%)
 
 以上のように、全国平均には、平成3年でもまだ一〇〇〇円
以上およばないものの、それなりに伸びて来ている。そして、
これらを換算して中部地区の消費金額は推定実績で約七七億
円、メーカー出荷額では約三七億円程度の規模になったものと
みられる。こうしたことから、中部では当面出荷額五〇億円を
目指し、激しいシェア争いが展開されることになりそうだ。
 
 

 
『中部納豆特集=業界首脳に聞く−東海納豆組合理事長・小杉力氏』
92/12/09 日本食糧新聞
 
 中部地区の納豆専門業者で組織されている東海納豆組合は昭
和26年に組織され、毎年会員の協調と親睦をはかり消費拡大
への啓蒙をはかっている。最近の動きとこんごの業界の対応な
どを小杉力理事長にたずねた。
 
 ‐‐中部市場の動向について。
 
 小杉 中部地区は全国消費のなかでも以前から納豆をよく食
べるという地区ではなかったが、最近では関東筋のメーカー進
出もあり、スーパー各店での売場面積が拡大し易い傾向にあ
る。しかし、前年比の伸びをみると微増の域を脱していない。
 
 ‐‐需要の傾向は。
 
 小杉 東海地区の納豆は全体的にみて納豆特有の香りがうす
く、豆そのものも白味をおびたものが主流となっている。ねば
りと香りが納豆の大きな特徴といえるが、需要は天然健康食品
の大豆タンパクが豊富なだけにヘルシー志向の消費者には毎食
欠かせない食品として定着している。また、最近ではダイエッ
ト食品として女性の間にも納豆のファンが増えており、病院、
工場、学校などの給食分野でも健康食品としての採用が多いだ
けに動きそのものはコンスタントだ。
 
 また、最近の消費傾向をみると、従来の大粒ものよりもひき
わりや小粒のものへと移行する傾向がみられる。これは関東筋
の製品がねばり、香りともに本来の納豆のイメージを強くも
ち、さらに小粒化していることもあって、当地区のメーカーに
もこの流れが反映している。総じて関東筋の製品に当地の消費
者が慣れてきたという現象だ。
 
 ‐‐こんごの対応は。
 
 小杉 当組合は愛知、岐阜、三重の三県下で組織され、会員
一七社が加盟しているが、私は前服部理事長の後任としてバト
ンを受け、組合の運営を引き継いでいる。
 
 会の活動としては、だいたい中央でまとめられた年間の行事
に添って運営されており、本年は7月10日の納豆の日に業界
一体となって消費PRをはかっていく計画が現在進められるな
ど、地味ではあるが企業それぞれの努力によって消費の拡大を
はかっているのが現状だ。当地区の納豆業界は一部を除き生
産、販売の面でも大手との格差が大きく、それぞれ独自のルー
トに限られた販路をもつメーカーが主流だが、こんごは会の組
織をつかって納豆のもつすばらしい健康性へのアピールなどを
啓蒙する機会をつくりたいと考えている。
 
 納豆は畑の肉としてなじみのある大豆を主原料にしたもの
で、ヘルシー食品としては万人が認める健康食品の代表だけ
に、業界ではこのあたりを消費者によくわかるよう啓蒙してい
く必要があると考えている。こんごは味の提案、食べ方の提案
などを行い、市販向け以外の外食分野への開拓を高め、汎用性
の高い納豆消費拡大を地道にPRしていくことが重要課題と考
えている。  (小杉食品社長)
 
 

 
『中部納豆特集=業界首脳に聞く−全国納豆協組副会長・服部政明氏』
92/12/09 日本食糧新聞
 
 〇…全国での納豆の消費の伸びは、ひと頃の二ケタアップに
比べると、やはり落ちて来ている。この原因については、消費
者の嗜好が変化して来ているのではないかとの感じもする。従
来からみれば、納豆は栄養があって、しかも低価格で、こうい
う内食回帰の時には一番力強い商品ではないかと思う。それ
が、現実には意外とアピールさせてもらっていないということ
は、やはり食生活が変化して来ていると見なければならないだ
ろう。味噌がいい、米がいいということは聞いているが、大半
の食品が需要の低迷下に置かれている。この変化は納豆業界に
とって厳しい環境になったことを意味すると思う。
 
 〇…こうした状況下で、今後納豆の需要を伸ばしていくため
には、一言でいって、健康食品のうえにもう一つ、健康志向が
必要ではあるまいか。
 
 今までのように、ヘルシーだとか、いうことだけでは駄目だ
と思う。納豆を食べながら、さらに何かがあるということ。納
豆に何かが付くということだ。
 
 〇…消費者そのものは増えていると思うが、やはりいろいろ
なものを食べなければならないから、今まで一人で一個を食べ
ていたものを、一個を家族中で食べるということだろう。従来
だと、納豆を他の食品と違って、少し多めに食べてもらえたも
のが、いまは食卓がバラエティー化して来ている影響を受けて
いるということだろう。その辺で伸び率が低くなったというこ
とで、消費が鈍化したこととは違うと思う。
 
 そういう風にしか考えようがないのではないか。そういう状
況を特に今年あたりから感じている。納豆の消費とバブルとは
関係ないと思う。納豆は安い商品だから、こういう時期には売
れていいはずなんだが…。そうでないということで、われわれ
もよく分からない原因がある。要は回数は減らず、量が減って
いるということだろう。
 
 〇…状況をみていると、業界では一〇〇%を切っているメー
カーもいっぱいあるのではないか。だから、ある意味ではあく
せくしている向きがあるのだと思う。そうした中で、ラベルを
変えたり、容器を変える程度では駄目で、われわれとしては一
段上の付加価値商品を考えることが必要だろう。
 
  (丸愛納豆社長)
 
 

 
『中部納豆特集=美濃久商店社長・加藤数也氏語る』
92/12/09 日本食糧新聞
 
 自然、健康食ブームや景気後退下での内食回帰が色濃く出て
いる現在、発酵食品として古くからある納豆の消費量も増加傾
向と聞く。納豆自体の味はもちろん、消費者嗜好を左右する、
もう一つの縁の下の力もちとなるのがタレとからし。
 
 原料消費量と生産量では国内最大規模を誇る粉からし、練り
からし専業メーカー・(株)美濃久商店(愛知県一宮市、05
86・69・0309)の加藤勉専務は、最近の傾向を「納豆
製品のサイズや包装など規格が様変わりしてきているが、なか
に付けるからしもスパイスのより効いたものやエスニック風味
を生かしたものなど、メーカーはさらに消費拡大を狙った差別
化商品を開発しようと色々相談を受ける」と語る。
 
 というのも、元々関東地区を発祥とする納豆の消費マップ
は、メーカーの販路強化とともに中部、関西、九州方面へとN
B(ナショナル・ブランド)化を狙った南下傾向を辿ってお
り、地域ごとの老舗メーカーとの販売合戦で、より地域性、年
代層分けの製品化が急ピッチで進んでいることを物語る。これ
に呼応して同社のからし出荷量は、どんなユーザーからの要望
にも対応できるだけのアイテム数を揃えていることもあり、前
年対比一五〜二〇%伸びている。
 
 つまり、納豆消費量に比例した伸縮となるが、「納豆業界で
の本格的な受・発注を受けるようになったのはここ、三、四年
で、当社はそれだけ後発メーカー。ただ、専門的に営業活動で
きる体制も整い、市場拡大では将来性有望な分野だけに、より
営業を強化し、ゆくゆくは三割のシェアを確保したい」(加藤
数也美濃久商店社長)と意欲的。味、色など品質面ではグレー
ドの高商品を提供してきているだけに、目標達成もそう遠くは
なさそうだ。
 
 

 
『中部納豆特集=納豆業界にショック“四強”一角の崩壊』
92/12/09 日本食糧新聞
 
 今回の、納豆業界“四強”の一角を形成していた茨城水戸食
品の倒産は、業界に大きなショックを与えた。負債総額は一四
〇億円といわれており、この12月上旬現在、同社の経営トッ
プは不明のままで最悪の事態となっている。
 
 納豆業界は、周知のように、ここ数年来、健康志向というフ
ォローを背に、飛躍的に伸びて来た。一九八五年(昭和60
年)以降の一世帯当たりの納豆購入金額が、八五年に一六五五
円だったものが、昨九一年(平成3年)には実に二八八〇円と
なり、この間の伸び七四%増、平均伸び率が一二%強という事
実がそれを証明する。
 
 その躍進の主因は、何といっても大手筋による設備投資↓積
極的な販売‐‐に絞られるだろう。勿論、健康ニーズにより
「これはいける」という感触をつかんだからこそだが、これに
より業界の構造は零細・家内工業から近代工業へ大きく転換し
て来た。もっとも伝統を誇る納豆だけに、メーカーは北海道か
ら九州まで全国に散在、その数ざっと八二〇〜八三〇社。極論
すればその九九%が家内工業であり、したがって残り一%が大
手ないしはそれに近い企業規模といえるわけだ。
 
 その納豆業界は、大手筋による積極的な投資・販売が、ここ
数年来、業界に地殻変動を起こして来たことは周知のとおり
だ。それまでの業界は、それぞれ地場の納豆業者ががっちり市
場を握り、他地区から参入される心配もなく、大して伸びはな
いものの何とか商売が維持できたといえよう。しかし、逆に、
それだけに特に脚光をあびることもなく、“細々”にちかい状
態で推移して来たというのが実態だろう。
 
 そこへの関東勢を主力にしたブランドの参入。これは泰平の
眠りをさます以上のショック度ではなかったか。ここ数年来
の、それぞれ地域の中小業者は、大手の侵攻におびえ続けて来
たともいえよう。反面、納豆がここまで評価されて来たのは、
やはり何といっても大手筋の積極的な市場開拓のおかげであ
り、中小筋もその点について、異論をはさむ向きはない。それ
はそうだろう。それまでは、小売店の売場では極く僅かのスペ
ースしか与えられなかった。全く目立たなかった。それが、大
手筋の積極攻勢により、今日ではチルド商品の売場で最高の場
とスペースを与えられるようになった。売れるからスペースを
広げる、広げるからまた売れる。その好循環で、ここ数年来、
大躍進を果たして来たと言ってよい。
 
 さて今回の倒産劇は、その順風満帆で来た業界に大きな落と
し穴が待っていた。前述のように、好調な需要に気をよくし
て、関東に拠点を置く大手筋は、ここ数年来、一気に大型投資
を行って来た。食品業界での投資は、今でも二〇〜三〇億円の
投資といえば、ちょっとした話題になる。それが、納豆業界で
は数年前から軽く五〇億円、一〇〇億円といった投資を行って
来ている。投資額については、売り上げとのバランスもあり、
過剰投資は当然「大丈夫か」と憶測を呼ぶことになるが、納豆
業界の場合は、需要環境がよかっただけに、そういう心配を吹
き飛ばしていたといえよう。
 
 実はそこに落とし穴が待っていた。将来を見こしての積極投
資はどうしても過剰気味となる。順調に売れているうちはそれ
でも回っていくだろうが、売れが鈍って来ると、どんどん出来
る製品に対して我慢ができなくなり、つい安売りすることにな
る。好環境から悪環境となったわけで、そうなると坂道をころ
がるようなもの。
 
 納豆がいくら健康食品といっても、今日の食品業界はまこと
に多彩。食卓はあらゆる食品で満艦飾となる。さらに数年以上
も快調を走り続けていれば、需要に一服のときも来よう。一服
のときは、商品のニーズに対応した、さらなる研究も要求され
よう。そういう意味で、業界は今回の不祥事を対岸の火とせ
ず、大いに警鐘とすべきだ‐‐との見方が支配的だ。
 
 

 
『中部納豆特集=メーカープロフィール−丸愛納豆看板の「丸愛デラ納豆」』
92/12/09 日本食糧新聞
 
 丸愛納豆(株)(愛知県春日井市庄名町九一三、0568・
51・1710)は、創業が明治20年という、伝統を誇る
(株)丸竹(服部政明社長)の子会社で、納豆専業メーカー。
 
 丸竹は昭和26年から納豆の製造販売を行っており、中部地
区の最大手として、ユーザー筋から高い評価と信頼を得てい
る。
 
 その納豆部門が昨年、丸愛納豆に移管されたもの。
 
 同社の主力商品は「丸愛デラ納豆」で、中部の消費者には早
くからなじみ深い。同品は、北海道産大豆(きたむすめ)を使
用した、大粒でソフトな歯ごたえとうま味を兼ね備えた自信
作。その他、チビヨン納豆(五〇グラム×四)、ワラ納豆(一
〇〇グラム×二〇)、カップ納豆(五〇グラム×三×一五)、
ひきわり納豆(四五グラム×二×一〇)なども人気商材として
手堅く需要を伸ばしている。
 
 

 
『中部納豆特集=波乱含みのシェア争い』
92/12/09 日本食糧新聞
 
 中部の納豆市場が、大手筋のここ数年来の侵攻により、それ
まで平穏だった市場に地殻変動を超こしたのは周知のとおり。
すなわち、業界の“四強”といわれるタカノフーズ、朝日食
品、あづま食品、茨城水戸食品が東西と同様、中部地区にも進
出、一気に大手筋リードの市場を形成した。こうした大手の動
向に対して、地元中小筋は、ここ数年来、非常に神経を使って
来たわけだが、今日では「大手が出て来たことにより、スーパ
ーでの売場面積が広がり、そういう点では納豆需要の底上げに
大いに貢献している」と地元勢も大手の貢献を評価している。
 
 半面、大手筋の飛躍的な生産増強は、価格競争をも誘発した
わけで「もう少し、しっかりした価格で売ってほしい」との注
文もつける。
 
 そうした中、前記の四強のうち、茨城水戸食品が倒産、業界
にショックを与えた。中部では同社のシェアは「大手のなかで
はまだ小さかっただけに、影響はほとんどない」と冷静だが、
それなりのシェア変動も出ているわけで、今後大手三強による
中部でのシェア争いは一層激烈なものになりそうだ。
 
 その三強の争いは、現在のシェア三五%前後を持つ朝日食品
が圧倒的にリード。タカノフーズ、あづま食品を大きく引き離
している。
 
 こうしたシェア争いが、トップブランドがますます二番手以
降を離していくのか、二、三番手が差をつめて来るのか、その
動向が大いに注目される。
 
 

 
『中部納豆特集=量販店の動向−ユニー』
92/12/09 日本食糧新聞
 
 健康食ブーム、内食回帰といったフォローの風を受けている
食品業界のなかで、納豆製品の動向を大手スーパーのユニー
(名古屋市中村区、052・585・3141)を例に定点観
測してみた。
 
 周知の通り、歴史的には関東地区が主流であった納豆も、自
然、健康食ブームも手伝って七、八年前から関東に拠点を置く
メーカーが頻繁に同社を訪れるようになり、朝日食品、あづま
食品といった業界大手商品を中心に、現在一四アイテムを販売
している。店頭販売形態は六〇〜一二〇センチメートル、通常
六段で取り扱い、三、四アイテムの逐次入れ替えが現状。ま
た、同社では朝日食品、あづま食品についてはPB商品を手掛
けており、それぞれ納豆売上高の一割弱、二割を占める主力商
品も揃えている。販売価格(ゾーン)は一一〇〜二三〇円、中
心価格帯は一六〇円前後。
 
 最近の消費者動向については、「商品特有の匂いが嫌いとい
うお客さんも結構多いが、バイオを駆使した新商品(旭松食
品)などが注目され、当社長野エリアでも評判なことから12
月から全店に入荷した」(田島重治ユニー食品本部デイリー食
品部バイヤー)というように、消費拡大を狙った新アイテムも
出てきており、従来の定番商品を軸に、新しい層の客筋も生ま
れようとしているようだ。このため容器、パッケージも従来の
トレー収納(六〇グラム×三)や子供向けのプチカップ(三〇
グラム×四)などへ移行してきている。こうしたメーカー側の
戦略にもかかわらず、同社における売上高の推移は、数量ベー
スで前年対比四%増(単月)、通年(2〜10月)でも五%
増、売上高ベースでは同七%増(通年では九%増前後)とここ
二、三年続いた二桁の伸びは観測されていない。ちなみに前年
(一昨年対比)は数量ベースで一〇%増、売上高ベースは一七
〜一八%増。内食回帰傾向から、現実より良い数字が出ている
と思われたが、アイテム数が飽和状態にある今日、「メーカー
さんは原点に戻って、単品の販価を値上げする一方、色々な商
品をまとめ買いする組み合わせ購買ニーズを狙っているのでは
ないか」(同)という意見が聞かれるように、消費の横ばいな
いしは落ち込みを値上けまたは数量増でまかなう戦略を打って
出ている。
 
 いずれにしろ、極端な伸びを期待できないだけに「アイテム
などの見直しのほか特売(全体の三分の一)攻勢が重要」(
同)で、売れ筋商品発掘のためにも小量商品、無臭など新商品
などの開発をメーカーに要望しているようだ。
 
 

 
『中部納豆特集=メーカープロフィール−小杉食品 人気続く「おちびさん」』
92/12/09 日本食糧新聞
 
 (株)小杉食品(0572・22・1871)は、三重県下
のトップメーカーとして業界のリーダー的存在にある。
 
 昭和8年創業以来、常に安定した品質の納豆を県下を主体に
広く中部、関東、関西筋に販売してきた。
 
 最近の傾向としては、ミニパックの台頭が目立ってきている
が、同社でもこの傾向が強く、毎年小粒ものの製品が着実に伸
びている。
 
 同社は昭和47年8月に現在の桑名市安永一‐九三八に新工
場を建設し量産体制を確保してきた。
 
 しかし、毎年順調な伸びに支えられて生産面が対応できず、
さらに増設工事を行い鉄骨スレート三階建ての生産体制を確保
し、一気に需要の拡大に対応している。
 
 現在、同社では都納豆のブランドで小粒ふる里の味カップと
して「おちびさん」「黒豆納豆」「本小粒」など高級品から普
及品まで幅広い製品を生産しているが、ミニパック製品は消費
者の個食化傾向がすすむなかで着実に伸びている。
 
 販売は地元三重県下を一円に京都、関西、関東筋へと幅広
く、吉川水産、ヤマシンの中央市場内仲卸会社と水産、チルド
に強い昭和のルートにより末端小売店へ配送されている。
 
 

 
『中部納豆特集=問屋はこう見る−(株)昭和 加工惣菜部副部長・加古博嗣氏』
92/12/09 日本食糧新聞
 
 流通から見た納豆の動向について、中部地区で大手取り扱い
の(株)昭和・加古博嗣加工惣菜部副部長に聞いた。
 
 〇…当社の今期4〜11月のの取扱実績は一〇四%の推移と
なっている。私の部門の加工惣菜のなかで、納豆はここ数年
来、ご承知のように納豆業界の規模は順調にふくらんで来てい
る。しかし、そのなかで残念ながら一昨年くらいから伸び率は
鈍くなって来ている。
 
 傾向として、スーパーさんが売場を六〇センチメートルあっ
たものを一二〇センチメートルにするとか、まあ平均して一〇
五センチメートルくらいだと思うが、そこまで売場のスペース
が伸びて来たわけだ。その売場の拡大が現在とまっている。ス
ーパーの平均の売場からいくと、アイテムは一三から一四くら
いだと思うが、そのアイテム数のなかで、逆に競争店の関係か
ら売価が下がって来ているのではないかと思う。とくに当社だ
と、ユニーさんとかユーストアさんの大手量販店がプライスリ
ーダーになっていたわけだが、こうした筋も、さっき言った通
り売価を若干下げて、流れが若干変わって来たかなあという感
じがする。これは、メーカーも設備が大きくなっているため、
メーカー事情もあるのかも知れない。
 
 〇…ユニーさんは別格として、やはり中堅の量販店というの
は、これは納豆だけではなく、生き残り云々ではないと思う
が、価格に関して、昔のスーパーというのか、大量に、そして
安くという流れに変わって来たのではないかと思う。その流れ
のなかの一環として、納豆もそういう傾向になって来ていると
思う。
 
 〇…ここ二年くらい前までは、スーパーさんもカップにし
ろ、グラム数にしろ、かなり細かい要望があり、それに対して
メーカーサイドも一生懸命付いて行っていた。最近は、それに
付いて行けないメーカーさんも出て来ているのではないか。そ
のなかで、当社でいうと、大手の量販店さんは納豆のコーナー
取りをしっかり固めている。しかし、中、小といった量販店
で、納豆が市民権を得ていないところがまだまだある。たとえ
ば、惣菜コーナーとか、豆腐コーナーで展開しているわけだ
が、売場も構成比からするとまだ少ないところがある。そうい
うところのオーナーとか商品の責任者に、問屋とかメーカーが
どういう風にアプローチしていくかによって、まだ伸ばしてい
くチャンスはあると思う。そのように一つずつ拾っていくとこ
ろがあるのではないか。正直いって大手量販店に関しては頭打
ちになって来ているように思う。そういう傾向が出てきている
ようだ。
 
 〇…今まで納豆は、健康志向で、なおかつ、とくに大手にメ
ーカーさんが食べやすい、納豆くささというのかこれを取った
味、いわゆる万人向けの商品をつくって、もう一段上へステッ
プして来たわけだ。しかし、ここへ来て付加価値という部分
で、食べ方をメーカーさんもアピールするチャンスだと思う。
 
 それが、現実にはまだ出来ていないようだ。メーカーの上位
三位くらいは、もう少し一致団結して、おいしい食べ方をもっ
とアピールする場所が必要なのではないか。もっとも、このこ
とは私の部門で取り扱っている日配商品の全般にいえることだ
が…。業界をリードし、引っぱっていく牽引車的なメーカーが
まだ少ない業界だから、そういった部分が今後の課題になって
来ると思う。
 
 〇…当社の惣菜商品というのは、会社としては一〇八%くら
いを見込んでいるので、納豆の一〇四%は、やはり伸びが悪い
という感じだ。そのなかで、今回大手の一角が崩れたわけだ
が、当社としては取り扱いが極く僅かだったので、影響という
点ではほとんどなかった。代替えするものにスライドしていっ
ている。全部が全部ブランド品にスライドしたわけではない。
納豆のアイテムがふくらんでいるので、逆にいえばアイテムを
絞るチャンスだったかも知れない。
 
 〇…ここへ来てスーパーさんも、さきほど言ったように納豆
は飽和状態になって来ているので、自社のブランドをアピール
することも大切だが、むしろ業界として、どこのメーカーがど
ういう風にリードしていくかということになって来るだろう
が、もっと業界全体が消費者に対してアピールすることが必要
だ。
 
 あとは、どういう風にニーズに応えていくかだと思う。カッ
プが簡便性の部分、食べやすさの部分でウエートが高くなって
来ている。アイテム的にはまだトレー物の方が多いが、単品の
売れ筋というのは全部カップになって来ている。各社とも、来
年はカップがまだ増えると思う。グラム的には三〇グラムくら
いがカップの主流になって来るだろう。トレー物も今まで五〇
グラムがなかったが、量が多いということで、これも四〇グラ
ム、三〇グラムになって、今まで四段が結構売れていたのが、
いまは三段が主流になって来ている。
 
 ともあれ納豆がヘルシーフードという観点から、今後とも期
待している。
 
 

 
『からし特集=業務用 量的にはやや苦戦』
92/11/09 日本食糧新聞
 
 今年度の加工・業務用向けのからし(マスタードを含む)
は、市場のけん引役を果たしてきた「納豆」(別添小袋)に、
一時の勢いがみられなくなり、全体では横ばい基調で推移して
いる。さらに、バブル崩壊にともなう外食のカゲリで、量的に
ならせば「それ程変わらないが、一回の量が小口化している」
と、心理的影響もあってか、メーカーへの注文が細かくなる現
象もでてきている。このように、量的にはやや苦戦を強いら
れ、勢い競合も激しくなり、メーカーの選別がより強まる気配
を示している。
 
 このため、この分野でも技術力やルートを含めて、ユーザー
のニーズにいかに応えられるかなど、企業の特性や力量が問わ
れている。
 
 加工・業務用向けのからしの需要は、加工原料用と外食等向
け食材の分野に分かれる。ただ粉わさび原料やマヨネーズ、あ
るいはドレッシングなどの加工向けは、粉わさびそのものの減
少や、マヨ・ドレなどの飽和・成熟市場、他調味料との競合な
どで、いずれも低迷。一方、外食関係もファミリーレストラン
の停滞や和食回帰で、かつての成長分野にカゲリが出ている。
 
 この間、納豆やシュウマイ、おでんセットなどの別添小袋物
は好調で、なかでも納豆の健康性がけん伝され、関西地区の消
費が急増を示すなどして、市場をリードする役目を果たしてき
た。が、小袋物はそれなりの設備や人手などが必要で、「注文
があっても対応しきれない」と手をこまねくメーカーも。納豆
の伸びは「落ちついてきた」とはいえ、小袋タイプは今後も有
力な分野ではあり、「量をこなす程メリットがでる」のも事
実。小袋関係の設備強化をめざすメーカーがある一方で、それ
から取り残されるメーカーもでるなど、この分野での選別も急
速に進んでいる。
 
 また、平成3年度の加工・業務用向けの生産額は、前年並み
の四三億円前後にとどまったとみられる。これは、量的な低
迷、競合の激しさなど成熟市場を背景に単価の伸び悩みが主因
とみられる。とくに、練りタイプなどウエットの量的ダウンが
激しく、それが全体での金額の低迷につながったようだ。
 
 ちなみに、この分野における練りタイプと粉末の比率は、練
りが五二〜三%を占めるとみられるが、粉末タイプも二〇億円
前後と安定しており、粒度など技術的な差がはっきりと出る
「粉末タイプに注力する」というメーカーもでてきており、家
庭用では一割にも満たない粉末タイプも、クロウト筋の多い業
務用分野では健闘している。
 
 加工・業務用向けの有力メーカーは、カナダ工場の建設を進
めている埼玉のサカイスパイス、同じく埼玉にあり東日本を主
体に全国展開をはかっているチヨダ、西の横綱に位置する愛知
の美濃久の三社がビッグスリー。首都圏ではカレー、ショウ
ガ、ニンニクを主力に展開するテーオー食品、タレ・スープ、
カレー全般を手がける平和食品などが目立つところ。
 
 

 
『インドネシアの健康食品、大豆発酵食品テンペに注目』
92/11/01 日本農業新聞
 
 転作大豆の需要拡大に″インドネシアの納豆・テンペ″はい
かが――。大豆を発酵させて作るインドネシアの伝統食品「テ
ンペ」は良質な植物性たんぱく質食品として、また転作大豆の
活用にと再び脚光を浴びている。宮城県農業センター(名取市
高舘、菅原浩治所長)でも、テンペみそ造りに取り組むなど研
究を重ねており、今年も仙台農業改良普及所管内の農家、JA
を集めて研修会を開くなどしている。
 
 「テンペ」は水煮した大豆に、クモノスカビの一種、リゾー
プス属菌(俗称テンペ菌)を生やし、発酵させたもの。大豆と
大豆がびっしりくっつき、表面は真っ白な綿毛のような菌糸で
覆われブロック状に固まっている。
 
 インドネシアでは良質なたんぱく源で、しかも安いことか
ら、屋台で揚げたての「テンペ」を売っていると言う。米国で
も二十年ほど前から菜食主義者の間で普及、定着している。
 
 納豆に比べて粘りがなく香りも強くないため食べやすい。ビ
タミンB2、 12
 
Bが多く、消化吸収が良い。
 
 また油は酸化すると発がん性があると言われが、「テンペ」
は抗酸化作用が強く、抗変異原性があり、ほかの物の酸化を抑
える働きがある。 この健康食品「テンペ」に着目して、宮城
県農業センターでは、テンペみそ造りに取り組んだが、残念な
がら失敗。酸味が強く、黒ずむのが早いなど悪い面が多くあき
らめた。しかし、ひき肉代わりにハンバーグに入れたり、フラ
イにしたものは十分食べられたと言う。
 
 一ノ渡咲子同センター農産加工科技師は「塩分を含まず味も
濃くない。固まりになっていることもあって、さまざまな加工
材料として向いている」と話している。
 
 今年も仙台農業改良普及所管内のJAや農家から作りたいと
要望があり、同センターでは研修会を開いている。転作大豆の
需要拡大に「テンペ」に注目が集まってきている。
 
 

 
『ご飯の朝食人気おかず、東は「納豆」西が「漬物」』
92/10/27 日本農業新聞
 
 ご飯好きの輪を広げようという「日本ごはん党」(嵐山光三
郎党首)が、東京と大阪で開いた討論会に参加した四百二十一
人を対象にした「私と朝ごはん調査」を実施。その結果、一番
人気のおかずが東京は「納豆」、大阪では「漬物」と東西の違
いがくっきり。
 
 それによると、調査対象の八割近くを占めた″朝食はご飯″
派が平日食べるおかず(複数回答)は、「漬物」(四三%)、
納豆(三二%)、焼き魚(三二%)がベスト3。
 
 ところが東西別に見ると、東京は納豆(四四%)、漬物(三
九%)、焼き魚(三五%)の順。大阪は漬物(四八%)、ハム
エッグ・卵焼き(二九%)、のり(同)が上位。
 
 

 
『[あぐり相談]納豆用小粒大豆、山形で栽培可能な品種を育成中』
92/07/26 日本農業新聞
 
 【問い】納豆用の小粒大豆を栽培したいと思います。種子を
販売している所を教えて下さい。
 
 (山形県東田川郡三川町、安藤淑)
 
 【答え】東北地方に向く納豆用の小粒大豆としては「コス
ズ」があります。
 
 「コスズ」は、秋田、宮城、岩手、福島の各県では奨励品種
として、産地化が進んでいます。しかし、山形県では、奨励品
種に採用されていません。
 
 それは、山形県で栽培すると、カッパン病に弱く、品質を落
とす恐れが強いためです。
 
 農水省東北農業試験場作物開発部刈和野試験地(秋田県仙北
郡西仙北町)で、カッパン病に強く、山形県でも栽培可能な品
種育成を進めていますので、しばらくお待ち下さい。
 
 

 
『旭松食品、マルカ食品の友部工場を買収、関東地区の拠点に』
92/04/22 日本食糧新聞
 
 凍豆腐、即席味噌汁、納豆のメーカーである旭松食品(株)
(本社‐大阪市淀川区、本店‐長野県飯田市)は、関東地区に
おける製造・配送の拠点を確保するためマルカ食品(株)(本
社‐神奈川県藤沢市)の茨城県友部工場を譲り受け、1日から
稼働を始めた。友部工場の概要は次の通り。
 
 ▽所在地‐茨城県西茨城郡友部町一二〇〇▽規模‐納豆製造
工場(付属設備を含む)土地一万四二九七・五三平方メート
ル、建物一二八九・四〇平方メートル▽製造能力‐納豆日産四
〇俵▽従業員‐社員一二名(他パート)
 
 なお、投資額は四億三〇〇〇万円。
 
 

 
『旭松食品、マルカ食品の友部工場を買収。関東地区の拠点工場として4月1日から稼働』
92/04/03 日本食糧新聞
 
 凍り豆腐、即席味噌汁、納豆メーカーの旭松食品(株)(本
社‐大阪市淀川区田川三‐七‐三、資本金七億四〇〇〇万円、
木下晃一社長)は、豆腐メーカーのマルカ食品(株)(本社‐
神奈川県藤沢市、資本金一億四八〇〇万円、加藤信忠社長)の
友部工場(茨城県西茨城郡友部町一二〇〇)を買収、関東地区
の拠点工場として4月1日から稼働させた。
 
 買収した工場は、敷地面積一万四二九七平方メートル、建物
一二八九平方メートルで、ここに約一億円を投資、当面は納豆
の生産を行い関東地区に出荷するが、敷地に余裕があるため将
来はカップ味噌汁などの配送センターとして活用する方針。生
産能力は二・四t(六〇俵)/日。買収にあたって同工場の従
業員一二人も継承、マルカ食品の納豆生産も行う。
 
 同社は凍り豆腐のトップメーカーだが、近年カップ味噌汁や
納豆にも参入、特に匂いの少ない納豆を開発し、元来納豆を食
べない関西市場での先駆者として、地盤を急速に拡大し関東市
場の開発にも積極的姿勢をみせている。
 
 平成4年3月期売上高は約一四〇億円(見込み)と順調に推
移、なかでも納豆が三〇%を超える伸びをみせているが納豆工
場(長野県・本店)に位置し、市場が拡大するにつれ鮮度、配
送などで消費地に近い生産拠点の構築を計画していたもので、
関西地区の工場建設も検討している。
 
 

 
『内村東京農大教授の、発酵食品のルーツ探る講演会(前橋)』
92/03/23 日本食糧新聞
 
 【前橋】東京農業大学農学部農芸化学科応用微生物研究室・
内村泰教授は16日、群馬県工業試験場と県食品工業協会共催
の平成3年度食品産業講演会で「東および東南アジア(主にネ
パールとブータン)の発酵食品‐照葉樹林の酒文化と納豆文
化」を刻明なスライド記録で紹介した。講演会には協会関係者
五〇名が出席、神戸県工試場長は「日本人の食のルーツを振り
返ってみようということでこの講演会を開催した」とあいさつ
した。
 
 内村教授は「発酵法を用いたいわゆる発酵食品は、アジアの
ある地域を発祥地として発達、その形態としては魚醤、穀醤、
バター、発酵乳などとしてアジア圏に広がった。この広がりの
中でネパールあるいはブータン、北インドの山間部などでは今
でも古い伝承方法でチーズや塩納豆類似の食品を作り日常食に
用いている。特に温暖多湿の照葉樹林地帯が微生物に恵まれ、
発酵食品は現代風のものから昔のままの食品まで多彩だ」とし
て、現地で取材したスライドを用いて、住民の生活風土と食生
活を十分に紹介、感銘を与えた。
 
 特に照葉樹林の酒文化と納豆文化に関するものは、東京農大
応用微生物学研究所がめざした新規微生物発見の宝庫になって
いる。わが国に存在する発酵食品が古くからアジアの食文化と
深くかかわり、その技法が現在まで伝えられてきたことを理解
するうえで有益な研究会であった。
 
 

 
『朝日食品、燃やせるオパレイカップ容器を初採用、「水戸のモーニングさん」など3品』
92/03/11 日本食糧新聞
 
 大手納豆メーカーの朝日食品(株)(茨城県行方郡牛堀町、
0299・64・2711)はこのほど新製品三品を開発し、
1日から発売した。製品名は「水戸の華」「水戸のモーニング
さん」「水戸の田舎炭造」。いずれも個食対応の三食パック、
極小粒の大豆を使用している。
 
 「水戸の華」は“美味第一主義”キャッチフレーズ。通気性
のあるレスピカップを採用し、発酵初期に生じる匂いを排出、
納豆本来の香りをかもし出すと共に、うまみ成分を豊富に熟成
させることに成功した。原料にはアメリカのアーカンソー州で
育てた極小粒の茨城産大豆改良品を使用している。
 
 内容量‐三〇グラム×三パック、荷姿‐一〇個入り、標準小
売価格‐一七八円。
 
 「水戸のモーニングさん」はたれ、からし、ネギがセットさ
れた「オリジナルたれキャップ」を採用しているのが便利。さ
らに燃やせる「オパレイカップ」を採用し、環境保護に配慮し
ている点も見逃せない。いずれも業界初の試み。たれキャップ
はトレー型でネギ、たれ、からしがそれぞれ簡単に取り出せ
る。手が汚れる心配もなく便利だ。
 
 原料は同じくアーカンソー州で採れた納豆用極小粒大豆。最
新工場による人手を必要としないハイテク発酵法で作られる。
 
 内容量‐三〇グラム×三パック、荷姿‐一〇個入り、同価格
‐一六八円。
 
 「水戸の田舎炭造」は伝統的な田舎炭火による作り方を現代
の技術で生かした。雰囲気のある好商材となっている。カップ
には燃やせるオパレイカップを採用。原料も他の二品と同様に
極小粒大豆を使用している。
 
 内容量‐四〇グラム×三パック、荷姿‐一〇個入り、同価格
‐一五八円。
 
 〈ワンポイント〉環境問題への対応が食品メーカーで活発と
なってきた。今回、焼やせるオパレイカップの採用は納豆業界
として初めてのもの。環境にやさしい商品となった。さらにた
れキャップも初めて。容器が開発の大きなポイントとされてい
るようだ。
 
 

 
『バイオ食品開発賞=旭松食品、なっとういち』
92/03/10 日本食糧新聞
 
 【大阪】納豆はおいしいが臭いが嫌いで、納豆を食べない人
が多い。中小企業情報センターの需要動向調査でも納豆を食べ
ない理由の五五・六%が臭いを上げている。
 
 この商品のうま味をつくり、消化吸収を助けているのが納豆
菌による発酵でのたんぱく分解酵素の形成である。しかし、こ
の発酵が進めば独特の臭いが生ずる。このため好き嫌いの明確
な食品で、とくに若い人には受け入れられない要素のひとつに
なっている。
 
 この納豆の最大の欠点である臭いを押え、色、糸ひき性に優
れている品質の安定化した納豆「なっとういち」をバイオの技
術で開発した。
 
 一〇度C以上の温度になると、この細胞菌は繁殖を続け二次
発酵という現象を引き起こす。この結果、なっとう菌は、たん
ぱく分解酵素の働きで生じたうまみのもとであるアミノ酸をさ
らに分解してアンモニアを主成分にした独特の納豆臭を発生、
納豆も褐変して色が濃くなり、糸ひきも弱くなるという品質劣
化現象を呈する。しかもこの繁殖で二〇〜三〇度Cにのぼる二
次発熱を発生、その自らの熱で再繁殖も促進されることにな
る。
 
 この現象を防ぐため同社の長野本社にある食品研究所では、
バイオ研究過程から納豆菌の改良に乗り出した。納豆菌株に紫
外線を照射して株の性質を変え、変異株一万五〇〇〇個をつく
り、その性質をひとつひとつ検証、その中より納豆をつくるの
に必要な発酵温度の四〇度Cでは、従来の納豆菌と同じように
生育。二〇度C以下の温度では生育しないという性質の納豆菌
一種を発見した。
 
 この改良菌でつくられた製品は、普通の納豆に比べて納豆臭
が、かなり少なく、糸ひき性、味、色とも格段に良く、しかも
安定した品質をもたらすことが分った。現在納豆は低温流通で
扱われているが、現実には輸送の一部や、中継地点、小売店で
の店頭に出るまで、さらには消費者段階などで夏場には温度が
上昇することが多く、一次発酵するケースは避けられない。こ
の現状の中では普通の納豆は二五度Cで一日、二〇度Cでは三
日でアンモニア臭が強く食べにくくなるのに対して、この納豆
は二五度Cでは六日、三〇度Cでは一〇日間保存してもおいし
く食べられる。
 
 その技術は臭うから嫌いということで、購入しなかった需要
層へも納豆の市場を拡大するだけでなく、将来は良質のタンパ
ク食品として海外にまで、商品普及を図れる道をつくったもの
で、業界に対する貢献度は大きいものがある。
 
 

 
『納豆育ちの鶏卵、殻硬く黄身むっくり、三浦市の高橋さん』
92/02/25 日本農業新聞
 
 【神奈川・三浦】三浦市で開かれた農水産物品評会で、一個
の鶏卵が話題を独占した。一地方のささやかな品評会だった
が、養鶏農家に夢と希望を与える中身を詰め込んだ卵は、出品
した養鶏農家も気付かないほどの未知の情報を詰め込んだ卵だ
った。
 
 この品評会は、三浦市産業祭の一つとして開かれたもので、
このほど審査が行われた。 三浦では少数派の養鶏農家が出品
した一個の卵が、審査員の目を引きつけた。普通の卵よりやや
大きめのこの卵は、形も良く、殻の組織のきめが細かく、殻も
硬かった。割ってみると卵白、卵黄ともに申し分なく、卵白が
黄身を持ち上げていて、黄身が下につかなかった。
 
 審査員の一人、横須賀農業改良普及所で畜産を担当している
真野忠一技幹(横須賀班班長)も「長年、卵をみてきたが近年
まれにみる逸物」と興奮を隠さない。審査の結果、この卵は優
秀賞に選ばれた。
 
 この卵を出品したのは、三浦市初声町下宮田の高橋良夫さん
(五二)。現在、六千羽飼育している三浦では普通の養鶏農
家。高橋さんは、昨年、鶏に納豆を食べさせると食欲が増進
し、卵の殻が硬くなって、傷玉がなくなるという話を、横須賀
市の鶏仲間から聞き、昨年七月から試してみた。
 
 六月にふ化したひなにも食べさせた。六月は、ひなを育てる
には大変難しい時期で、養鶏農家の間では、この時期の育すう
はタブーとなっているが、高橋さんはローテーションの関係で
この時期にぶつかってしまった。
 
 七月から、納豆五個(一個八十五グラム入り)を、米ぬか
一・八リットルと水九リットルで混ぜ合わせて作った元菌をえ
さに混ぜ合わせて与えたところ、食欲おう盛で、タブーを吹き
飛ばしてしまった。
 
 納豆は夏の暑い時期だけで、秋から冬にかけては食べさせて
いないが、育すう期の発育が良かったためか、今でも元気いっ
ぱいで、産卵率もいい。品評会に出品した卵も″納豆育ち″の
若鳥が産んだものだ。
 
 納豆を食べさせると、なぜ鶏の食欲が増進するのか、そのメ
カニズムはまだ解明されていない。まして、卵のスタイルが良
くなったり、殻が硬くなったり、味が良くなったりするのは、
推測の範囲を出ないが、市販されている納豆で、卵の品質が向
上するならば、養鶏農家にとって明るいニュースであることは
確かだ。
 
 

 
『亜鉛の摂取で、紫外線の影響抑制、抹茶や納豆にたっぷり』
92/02/06 日本農業新聞
 
 亜鉛をとることで、皮膚がんや白内障の原因となる紫外線の
影響を抑えることが、国立環境研究所と共立薬科大学の共同研
究で五日、明らかになった。オゾン層破壊が進み紫外線の影響
が心配されているが、亜鉛を多く含む豚肉や鶏卵、大豆、丸干
しなど食べることも紫外線予防に有効のようだ。
 
 亜鉛を体に投与すると、たんぱく質の一種であるメタロチオ
ネインが体内に作られる。このたんぱく質はカドミウムなどの
金属を吸着し、解毒に関与することが分かっている。実験では
このたんぱく質が紫外線によって発生する活性酸素も除去して
しまい、体を守ることが確認された。
 
 実験はラットの腹こうに体重一キロ当たり十ミリグラムの亜
鉛を与え、一平方メートル当たり十二キロジュールの紫外線を
数分照射した。これは紫外線量が多い那覇で真夏に七時間太陽
を浴びた紫外線量に相当する。その結果、亜鉛を与えたラット
のメタロチオネイン量は与えないラットの五倍に増え、有害物
質の過酸化脂質量、炎症とも阻止された。
 
 これは人間の細胞でも証明された。亜鉛を投与しない細胞に
紫外線を照射すると細胞増殖は半減してしまったが、事前に亜
鉛を与えた場合はメタロオネインが増加し、細胞の増殖率、生
存率は八〜九割まで改善した。
 
 強い紫外線を長く浴びると細胞内に活性酸素が発生し、細胞
のたんぱく質、酵素、核酸、膜にダメージを与え、それにより
突然変異や細胞死を招く。メタロチオネインができたマウス皮
膚内では、こうした変化を食い止めていることが分かった。
 
 亜鉛は生殖や骨の形成に深くかかわり、人が生きていくため
不可欠な元素。厚生省は「一日十ミリグラム程度が必要量」と
いう。
 
 国連環境計画(UNEP)では、オゾン層が一%破壊される
ごとに有害な紫外線の地表面への到達量は二%増加し、白内障
の発生率は〇・六%、皮膚がんの発生は三%増えるという。さ
らに今後十〜二十年間で三%のオゾン層が失われ、人体や農作
物にも深刻な影響を与えると警告している。
 

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