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納豆の糸について

 

最終更新日 平成14年5月10日

納豆の糸は、生の納豆の0.1〜0.8%ほど含まれますが、何できて

いるかと言いますと、以下の2つが混ざってできています。

1.グルタミン酸がチェーンみたいに何個も繋がった、高分子のポリペプチドと呼ばれるもの、ポリグルタミン酸(PGA)。

2.フラクトース(果糖)が繋がった、フラクタンと呼ばれる多糖類。果糖というぐらいですから、果実に多く含まれるもので甘いものです。

  が、繋がったフラクタンは甘くありません。

 「果糖ちゃん、ペッ」

さて、それぞれの役目ですが、1がネバネバの本体で、2がネバネバの安定性を保ちます。当然、舌で感じる美味しさは1が担います。

では、この1と2がそれくらいの割合で混ざっているかといいますと、いつも一定ではないのですが、だいたい(ザックリといいます)1が55%、2が45%で、熟成がすすむにつれて1の割合が増え、2が減少していきます。

また、1と2はどちらとD型(D体)とよばれる変わったアミノ酸または糖が含まれます。

L型、D型は何のことを言っているかといいますと、アミノ酸の立体構造のことです。

1つのアミノ酸には、鏡に映ったような鏡像関係にある立体構造がありまして、これを光学異性体と言いますが、それがL型とD型です。

ここで、

「えっ、血液ガッタ型?、グハッ、グハッ」

と言った方は立派なオヤジギャグの使い手です。今後、ご一緒に精進しましょう。

当然、1のグルタミン酸ナトリウムにもD型とL型がありまして、それぞれL−グルタミン酸ナトリウム、D−グルタミン酸ナトリウムと表記されます。

このL型とD型の大きな違いは、人間の舌が旨みを感じるか否かにあります。皆さんがよくご存じの「味の素」などの旨み調味料はL−グルタミン酸ナトリウムです。

旨みのないD型は主に医療、農薬、食品合成料として使われます(ちなみに普通の酵素ではなかなか分解されません)。

自然界に存在するもののほとんどはL型で、納豆菌の胞子のなかやネバネバには、珍しくD型が含まれます。

また、納豆の発酵にしたがって糸が増えるメカニズムですが、キーとなるのが、「ComXフェロモン」と呼ばれる信号物質(ペプチドフェロモン)です。

フェ、フェロモン・・・と過剰反応したオトーサン、お気をつけ下さい。

納豆菌(Bacillus natto)が増えると、納豆菌が「ComXフェロモン」を分泌し、濃度が高まります。

「ComXフェロモン」は、まわりの納豆菌に自分たちがどれだけいっぱいいるのか(密集度)を知らせ、納豆菌の表面にある「ComP」遺伝子がセンサーとなって、「ComXフェロモン」の量を感知します。

つまり、「ComXフェロモン」で、

「おーい、俺もここにいるっぺよー」

とコミュニケーションをとっているわけです。

そして、密集度が一定以上の量になったとき、納豆菌の細胞膜の受容体に結合して、ポリグルタミン酸(PGA)を作る反応を促すという仕組みになっています。

*「ComP」遺伝子がポリグルタミン酸(PGA)の生産を制御

また、買ってきた納豆を長く置いておくと、糸を引きにくくなります。

これは、納豆菌が増えて過密状態になってきたことで、糸の成分であるポリグルタミン酸(PGA)をグルタミン酸に分解する酵素も作るようになったためで、納豆菌も生きるため、グルタミン酸を栄養として再利用する(糸は納豆菌の保存食)わけです。

参考:「納豆菌による粘物質の生成に関する研究」、『日本農芸化学会』誌

    昭和38年 福岡女子大学家政学科 藤井久男

  「納豆菌γ-グルタミルトランスペプチダーゼによる

                    ポリグルタミン酸の分解」、

    平成13年3月24日『2001年度日本農芸化学会』、

    独立行政法人 食品総合研究所 稲津康弘、木村啓太郎、

              Lam-Son Phan Tran、宮間浩一、伊藤義文


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