食と農について
武部農林水産大臣と消費者が語り合う会

 最終更新日 平成14年2月25日


 少ない脳納豆、いや脳味噌ながら、「日本の農と食」につい
て、一応考えておりますので、平成14年2月17日(日)、
農林水産省7階講堂にて行われた、
「食と農について武部農林水産大臣と消費者が語り合う会」
に行ってまいりました。
 内容の方は、後半にご報告とするとして、私が感じた大きな
ところは、次の3点です。
 
 1.農林水産省の軸足シフト 生産者から消費者へ
 
 2.厚生労働省との縦割り問題 
 
 3.トレース・アビリティ・システム
 
 2と3については、あらかた懇談会のなかで議論されたのです
が、1については、参加者の皆様に異論がなかったようであまり
議論されませんでした。
 
*3は、実業家にとってはかなりのビジネスチャンスと思います。
 
 軸足のシフトというのは、いままでの農林水産省が生産者サイド
で運営されており、消費者サイドに立っていなかったとの反省から、
軸足を「生産者」から「消費者」に移す改革です。
 一見、手放しで賛成したくなるようなご意見なのですが、私は
バランス感覚を欠くのではないかと思っております。消費者に目を
向けるというのは、当然のことで大切なのですが、農林水産省自体、
国策としての生産者支援、保護が設置理由のはずです。
 時には生産者の支援、保護、時には厚生労働省とともに消費者へ
のサービスと臨機応変なパワー配分が必要ではないでしょうか。
 優秀な方が多いのでそのようなことはないと思いますが、言い方
だけの問題であったにしろ、「軸足のシフト」ではなく、
 
 「生産者と消費者をつなぐ、やじろべえ」
 
とでも宣言し、バランス感覚をアピールしてほしかったと思います。
 エラソーなことを書いてスイマセン。
 勉強不足の点があると思いますので、ご指摘、ご意見頂ければ
幸いです。
 
 ちなみに、当日はブッシュ大統領の来日もあったため、霞ヶ関
は警備の警察官の方が多くいらっしゃり、
 
 「あ〜、これからどちらに行かれるんですか?」
 
と、プチ職務質問され、一応の受け答えをしたものの、
 
 「小型プラスチック爆弾かなんかで、
       爆弾テロなんかしないんで大丈夫ですよ」
 
などと余計なことを言って、かなり不審がられてしまいました。
 
 思春期の頃、いかがわしい本を読んでいるところを
 
 「あっ、お兄ちゃん、エッチな本見てる!」
 
と妹に見つかり、
 
 「いいか、お母さんに言うじゃないぞ!」
 
と釘を刺したものの、トコトコと母親の元に駆け寄った妹が、
 
 
 「お母さん!
  お兄ちゃんがエッチな本見てたなんて
   【知らないよ】
 
と余計なことを言われたときに似ているような、似てないような。
 
 以下に議事メモを掲載しますが、極力パソコンにてリアルタイム
で書き留めたものの、発言者の意図と若干違っている点があるかも
知れませんので、あくまでもご参考ということで
お願いいたします。
 

 
 「食と農について武部農林水産大臣と消費者が語り合う会」
 
 
 1.開会宣言
     (嘉田農林水産政策研究所政策研究調整官殿)
   食の安全性が重要視されている昨今、大臣からの発案で
  実施したこの懇談会がこれからの日本の食を変えるきっかけ
  となれば幸いに思う。
 
 2.大臣挨拶(武部農林水産大臣殿)

  

   大臣に就任した際に職員に対し、以下の3つを宣言した。
 
   a.農林水産業の構造改革
 
   b.都市と農山漁村の対流
 
   c.食と農の一体化
 
   今までの農林水産省は、生産者に軸足をおいた運営がされて
  おり、消費者に向けての活動をしていなかったことを反省して
  いる。今後は消費者の皆様に軸足を置いた農林水産省に改革する。
   また、今日は率直な意見をお聞かせ頂きたい。
   この会が農林水産省が消費者サイドに立つための礎、スター
  トになれば幸いと思っている。
 
 3.政務官挨拶(宮越農林水産大臣政務官殿)
   大臣の挨拶がすべてであり、このような機会は農林水産省が
  消費者サイドへの運営に変わるきっかけであると思っている。 
 
 4.内 容

 *出席者の方全員に、発言内容の確認がとれてはおりませんので、
  発言者はイニシャルでの掲載としました。
  同一のイニシャルが続く場合もございますが、ご了承下さい。
 
   テーマは大きく2つに分けられ、ある程度の意見がでたとこ
  ろで、大臣が回答する形式となりました。
 
☆テーマ1:食品の安全性、BSE(狂牛病)問題
 
  S :1980年代は羊がBSEの原因という報道があった
     のか?
     現在の日本で、羊に対してのBSE検査体制はどうなっ
     ているのか。
     また、イギリスではBSE問題がでた段階で肉骨粉は
     全面禁止となったが、日本では法で全面禁止する気は
     ないのか。
  T :なぜ、肉骨粉は必要なのか。いまだによく分からない。
 大 臣:当時はイギリスからの牛肉の輸入は禁止したので、問題
     はない。
     また国内でも牛に肉骨粉を与えていた酪農家は0.05%
     でしかなかった。
     今に思えば法で肉骨粉は禁止すべきだったと思うが、法
     で禁止したところでリスクは0%になるわけではない。
     検査体制をキチンとすることで、焼却処分などで対応す
     ることができると考えている。
     また、ご指摘のように当時の検査体制を含めての対応の
     悪さは反省すべき点がある。
 政務官:羊のえさには肉骨粉を使っておらず、動物性たんぱく質
     は与えていない。
  A :肉骨粉の感染経路がつかめていない事が怖い。
     生産者が、牛の飼料に肉骨粉が混入しているかどうか
     判断できないのが問題ではないか。
 大 臣:現在、肉骨粉は国内、輸入ともに全面禁止であり、流通
     していない。ペットフード、肥料にも使用していない。
     感染ルートについては、洗いざらいで調査し直しをさせ
     ている。そのなかでいくつか問題になる点がでてきてお
     り、
 
     a.鳥・豚用の肉骨粉を作っていた工場で混入した
 
     b.魚粉の工場で混入した
 
     c.イタリアの肉骨粉が
            熱処理の基準温度に達していなかった
 
     などがある。これらについては現在、分析中であり、
     特定はできていないが、全力で原因究明し、ご報告する。
  Y :肉骨粉がエサやその他についても全面禁止と聞いている
     が、燃料用として輸入される可能性はないのか。
 大 臣:燃料用という名目での輸入があるのかどうかは不明だが、
     徹底的に調査するという方針のため、これから調査する。
  W :調査の遅れは事実であり、行政の対応は遅い。
     小出しに対応し、問題が大きくなってから、やっと腰を
     上げる。
     最初に国が調査した牛肉のサンプル数も少ないし、買い
     上げ価格の設定も業界団体に差益があるのはおかしい。
     今日の新聞にも載っていたが、価格の設定をし直すとい
     う農林水産省のコメントがあった。
  F :1996年に狂牛病の可能性がある牛は届けるようにと
     いう農林水産省指導があったが、届出があった場合の
     マニュアルがなかったという。農林水産省の体制が信じ
     られない。
  M :農林水産省と厚生労働省の縦割り行政に問題があるので
     はないか。行政の改革をしっかりと行ってほしい。
 大 臣:17日以前の肉は市場隔離(13000トン)をしよう
     としている。
     当初は焼却する予定はなかったが、現在は焼却する計画
     である。
     また当時、届出に対するマニュアルがなかった件は、
     まったくご指摘の通りで、調査検討委員会でも検討して
     いる。厚生労働省とともに危機感がなかったことを反省
     すべきと思っている。
     厚生労働省との縦割りの件もおっしゃる通りであり、
     第三者委員会での検討結果を待って改革にのり出したい。
畜産部長:10月17日以前の隔離作業を開始し、当初は売り戻し
     条件付、キロ780円(部分肉換算1114円)で買い
     取った。  
     焼却することが決まったため、部分肉換算が1500円
     程度での買い取りとなった。
 大 臣:抜き取り検査は、当初、ゆるい方の国際標準で行ってい
     たが、今後は、200日かかるような厳しい方の国際基
     準で行っている。
     92万箱(500日必要)のほとんどをカバーできる。
 司 会:行政サイドに危機管理意識がないというご指摘が多々と
     思いますが、大臣は率直に反省し、対応しているという
     回答でした。
     危機管理については、2つに分かれ、
 
        a.未然に防ぐ対応
       b.事件・事故の対応
 
     があり、後者は防ぐことができないので、迅速に対応
     できる体制を整えているということも回答になると
     思います。
  K :厚生労働省、農林水産省の間の縦割り行政は即やめて
     もらい、一貫した行政を行ってほしい。
     また最近ではトレース・アビリティの問題もある。
     本当に厚生労働省と連携してやっていけるのか。
 
*トレース・アビリティ
  直訳では「追跡可能性」とされますが、どこで生産し、どの
  ような課程で流通してきたかどうか証明もしくは追跡できる
  かどうか、といった意味です。
 
  Y :いい加減な業界に消費者はうんざりしている。行政も
     小出しの対応はやめ、厚生労働省と一貫した対応して
     ほしい。
  S :アメリカはOー157問題でHACCAPができ、
     ヨーロッパはBSEで目覚めた。
 
  *HACCAP
  (Hazard Analysis Critical Control Point、ハサップ)
   食品の安全性を確保するために、それに関する危害を確認し
   制御するためのシステムです。
 
     日本は今回はやっと食の安全に気づき始めた。
     アメリカは9月(食の安全月間)、3月(栄養教育月間)
     を行って官民一体で食の問題に取り組んでいる。
     また、日本のマスコミも食の記事が非常に少ない。交通
     安全には国の予算がつくのに、なんで食の安全には予算
     があまりつかないのか。
 
  H :私は消費者モニターになっており、色々な良い資料を農
     林水産省から頂く。そんな良い資料がなぜ図書館や駅に
     ないのか不思議。また、小学生にも教育が必要であり、
     特にJASやJISマークなど多くあり過ぎて一般の大
     人にもよく分からない。
 大 臣:危機対応マニュアルがなかったのは非常に反省すべき点
     であり、行政の構造的な問題と思っている。トレース・
     アビリティも食品衛生法の障壁があるが、実現させてい
     くつもりでいる。
     現在も、モデルケース作りとして、全農とともにスーパー
     で、端末から生産者が分かるシステムを入れているので、
     今後もこういった努力を続けていく。
  S :日本の学校カリキュラムに体育はあるのに、食育がない
     のが問題の根底なのではないか。
     食の激しい変化に、行政が対応できなかったこともしか
     りである。
     子供への食育の専門家を育てる必要もあるのではないか。
 司 会:今までのご指摘はもっともで、食を選ぶ賢さも重要であ
     りますが、一方で経済性と安全性のバランスもあります。
     食の研究者の共通といってもいい認識ですが、ゼロ・リ
     スクを求めるのは無意味といいます。それよりは、リス
     クを明らかにする方が重要であり、消費者が賢い選択を
     できるようにするのが最終的なものではないでしょうか。
 
  K :トレース・アビリティの問題で、厚生労働省の担当者か
     らのコメントは、流通している肉を追うことはせず、農
     林水産省もそこまでやらないだろうという内容だった。
     厚生労働省がその程度の認識なのに、共同してやってい
     けるのか。
 政務官:トレース・アビリティのやり方は色々とあるが、将来的
     にはiモードでその生産者が追えるといったものまで考
     えている。役所がガチガチで決める必要はなく、民で
     作っても良いとも思っている。
 大 臣:厚生労働省との問題もあるが、生産者の顔が見える流通
     は絶対実現すべきと思っている。
  T :食品表示については最近分かりやすくなってきているが、
     特に海産物が分からない。
     例えば、イカだったら「イカ」だけではなく、「モンゴ
     イカ」や「するめイカ」などの種類を明記する必要があ
     るのではないか。現在の法では取り決めがないが、問題
     ではないか。詳細まで法で規制してほしい。
 大 臣:詳細まで法で決めてほしいという議論もあるが、なんで
     も規制するよりは一番「賢い」やり方を選ぶつもりで
     ある。
  Y :私たち消費者は、安全に対してどこまでリスクや経済的
     負担を負う必要があるのでしょうか。
  O :どこまで表示を信じていいのか分からない。
  F :表示に関して、複数の色々な法律が関係しているのが問
     題ではないか。関係法律を一元化をしてほしい。
 大 臣:自己責任といわれているが、農林水産省としては人の命
     に危害をあたえない、そして不正を許さない点に向かっ
     て努力していきたい。
  O :食品表示のウオッチャー制度が予定されているが、詳細
     を教えてほしい。
  W :表示について、法律でガチガチにするのは確かに無駄か
     もしれないが、しめるところはしめ、ある程度のルール
     は定める必要はある。企業のセールスポイントとして、
     「きちんと表示する」を認めるのはいいが、そのような
     ことが最も不正の温床になる。不正については、企業名
     の公表を行ってほしい。
 大 臣:安全や表示を企業セールスポイントにしてもいいのでは、
     と発言したのであって、無理にセールスポイントにすべ
     きとは思っていない。
総合食料局長:来年度、消費者700名のモニターを使って、食品
       表示について情報収集を行い、表示の不正について
       調査するのがウオッチャー制度。
  O :消費者が生産者までトレースするのか。消費者にそこま
     でやらせるのか。それであれば、意味がない制度と思わ
     れる。
総合食料局長:消費者から頂いた情報をもとに、行政側で調査する。
 
 *ここで傍聴者による質問タイム
 
傍聴者A:トレース・アビリティの問題で、民間で作ったものを
     使っても良いという発言が政務次官よりあったが、これ
     までの農林水産省の取り組みは無駄なのか。
 政務官:ガイドラインはいままの農林水産省の取り組みが生きて
     くる。これまでにないシステム作りに民間の力が必要。
 
傍聴者B:ニセ表示の問題には、実際どうやって行政は対応するの
     か。やり方が見えない。
 大 臣:2月8日に表示対策委員会を設置した。法的な規制の在
     り方から考えていく。
 
 
☆テーマ2:日本の農業の将来について
      40%以下という世界一食料自給率の低い先進国で
     あるわが国の今後について話し合った。
 
  T :農業従事者になにが望まれているのかよく分からない。
     行政側でシステム作りはしてもらっているが、経済的負
     担は結局、生産者が負い、最終的には値段で消費者が
     負っている。
  A :食品衛生法を改正しようと運動しているが、現在起きて
     いる問題は、食品衛生法の範囲を超えている。国民の食
     の安全性を守るという基本概念が行政に抜けているので
     はないか。
  O :自給率の拡大の経済性と安全性はどうバランスするのか。
  O :消費者の目からみると、行政が今まで生産者を補助して
     きたものの成果が見えない。加えて、農協の体質改善に
     ついても話してほしい。
 大 臣:より安く、より安全で、より美味しい、新鮮な農産物を
     供給するのが消費者への生産者の目的であると思ってい
     る。
     現在、1ヘクタール未満の米生産者が8割である現状を
     考えると、経済性についても何とかしたいと思っている。
     (大型経営にならないため、コストダウンが難しい)
     対策としては、意欲も能力もある経営を支援していく計
     画をたてている。都市と農漁村をつなぐことができれば、
     それも対策になると思っている。
     また、食料自給率は45%への向上を目指しているが、
     結局は国内の生産者が国民の求めるものを作らないと
     いけないのは事実。
  Y :JAS法が知られていないし、「国産牛」と「和牛」の
     表示の違いが分かる人は少ない。もっと啓蒙活動をした
     方が良い。
     また、伝統食を復活させることにも力を注いでほしい。
  Y :都市と農漁村との共生についても推進してほしいと思っ
     ているし、新規農業への支援も積極的に行ってほしい。
     また、国際貢献の観点でアフリカの飢餓対策などに備蓄
     米をだしてほしい。
  Y :日本テレビの番組『鉄腕DASH!』で、農村にアイド
     ルが行き、農業をやっている企画が非常に高い視聴率に
     なっている。農業をやりたい人が多いのではないか。
     それを支援することをもっと行ってほしい。
     また、食育で郷土料理を取り上げて推進してもいいので
     はないか。
  S :私自身は、キャラクター等を使って食育活動をしており、
     最近は要望が多くきている。特に、和食の見直しが始まっ
     ていると思う。
  K :1ヘクタール未満の農村で安さの追及は無理と言われる
     が、本当に農家の規模の問題なのか。小さな規模でもで
     きる農業を支援するのが本来なのではないか。
  T :自分自身が生産者だが、消費者の声はほとんど聞こえて
     こない。
     生産者に消費者の情報がくるようなシステム作りが必要
     と思う。
  W :農林水産省が消費者に軸足が移すところまで本当にいく
     のか。
     また、今日だけではなく、こういった機会を多く持って
     いくのか。
 大 臣:新規農業への要望が多いのはよく分かるので、支援する
     体制を作っている。
     消費者に軸足を移すこともなおざりにやる気はなく、
     本気で改革し実施する。
     また、消費者が求めるものを生産者が作らないと食料
     自給率があがらない。そのための支援並びに、都市と
     農漁村をしっかりとした対流、共生を行っていきたい。
     そして、日本がもっていた「瑞穂の国」の魅力
     を再生させたい。
 政務官:消費者と生産者とのマッチングを重点的にやっていき
     たいと思う。
 
 司 会:ここまでをまとめてみますと、次の点があげられると
     思います。
 
 ・農林水産省の軸足を生産者から消費者に移す。
   これはリップサービスではなく、構造改革である。
   消費者に逃げられたら、日本農業は沈没する。
   食と農のつながりを見直していく。
 
 ・危機管理、対策の充実
   また、これまでにはない、消費者110番の設置や今回の
   ような懇談会も計画している。
 
    以上、農林水産省も変わろうとしておりますので、
    今後もご協力をお願いいたします。
 

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