最終更新日 平成13年6月9日
平成13年3月17日、広島県広島市は中区にございます納豆料理専門店『納豆家』さん(広島県広島市中区胡町3−24 ムシカビル1F 電話082-545-0100)に調査にやってまいりました。純和風的な入り口からお店に入りますと、藁つとをイメージしたディスプレイのなか、ジャズが流れ、まさに隠れ家といった風情です。周りのお客さんを見ますと約8割が女性であり、糸を一所懸命に伸ばす20代らしい清楚な女性、ご両親と一緒に来たのでしょうか高校生の「〜したけぇ、そんでぇ」といった広島弁も聞こえ、一種独特の雰囲気に好感が持てます。席に案内されて、置いてあったお通し(鶏でダシをとったと思われるひじきと大豆の煮物、お冷やは置いてありません)を口に運びつつ、ビールを注文して約10分、レスポンスなし。
20時という混雑した時間なのでしょうか、とりあえず待ちます。おっ、やっとビールとともにオーダーをとりに店員の方がやってきました。納豆家さんのメニューを見ますと、粒納豆、挽き割り納豆、黒豆納豆、納豆パウダー、ドライ納豆を使用しているそうで、一品一品の名前を見る限り、それぞれの納豆の特性を生かしていうような感じで、期待に胸高まります。今回はさすがに全メニュー制覇とはいきませんので、各カテゴリーから代表的なものを選択し、次の14品を注文しました。・前菜、小鉢1.「色彩(いろいろ)納豆 750円」 (ひきわり納豆、他)2.「鮭おやこ納豆 450円(ひきわり納豆)3.「土佐鶏たたき納豆包み 600円」(黒豆納豆)・冷菜・サラダ4.「味噌そぼろ納豆レタス包み 680円」(ひきわり納豆)5.「あなごと納豆のサラダ(バルサミコ風味) 650円」(粒納豆)・揚げ物6.「納豆のさつま揚げ 400円」(ひきわり納豆)・魚介類7.「豪華な納豆エビフライ 800円」(ひきわり納豆)・肉類8.「牛タンスパイス煮込み納豆グラタン 820円」(粒納豆)・その他一品料理9.「ニラ玉納豆チヂミ風 550円」(ドライ納豆)10.「納豆クレープ合鴨ロースト包み 750円」(納豆パウダー)・ご飯もの11.「黒豆納豆焼飯スープ添え 700円」(黒豆納豆)・スープ12.「フレンチ納豆スープ 350円」(粒納豆)・デザート13.「納豆のムース仕立て 350円」(納豆パウダー)・酒類14.「納豆酒 500円」(粒納豆)注文してから、約14分(タイムを計測しはじめる三井田)。まずは1品目。一番人気という「味噌そぼろ納豆レタス包み 680円」(ひきわり納豆)です。
ネギ、ゴマ、鶏の挽肉、味噌、挽き割り納豆を甘めに味付けたそぼろを、シャキシャキ感のあるレタスで巻いて食べます。味噌も入っているからでしょうか、納豆の匂いは感じられません。いままで同様の料理をつくる際には、合い挽き肉(牛、豚)と納豆、バジルをスパイシーに炒めていたのですが、甘い味噌というのも悪くはありません。前菜としては、むしろこういった味付けの方がいいかもしれません。続いて、2品目。メニューでその文字を見つけた途端注文した「納豆酒 500円」(粒納豆)。
濃いめのレモンチューハイ(クセのない米焼酎と思われます)にレモンの薄切り、氷、そして粒納豆が底に沈んでいます。納豆の風味、ネバリ等は強く感じることが出来ず、期待した割にはそのままでやや奇を衒っただけだったという感があります。3品目は、「納豆のムース仕立て 350円」(納豆パウダー)。
ここで、「えっ?もうデザート?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、できたものから順次だしてくるというスタイルのお店のようです。ムースの方はストロベリー味を基本としたもので、ミントの葉が良いアクセントとなり、生クリームと納豆パウダーとつぶつぶがよく調和しています。ネバリ、納豆の匂いも少なく、納豆嫌いの方への納豆デザートとして良いのではないでしょうか。4品目は「納豆のさつま揚げ 400円」(ひきわり納豆)。
最初に言ってしまいますと、このさつま揚げが今回食べた納豆料理のなかで一番美味しいものでした。外側がカリッと揚げられたさつま揚げに和がらしをチョイとつけ、ぽん酢のタレにつけて食べますと、ネギの香味、挽き割り納豆の旨味、白身魚のふわふわ感が広がり、幸福よりも口福となります。あっと言う間に全部食べ、良い勉強になりました。5品目は、「ニラ玉納豆チヂミ風 550円」(ドライ納豆)。
豚肉、ニラ、ドライ納豆がのったチヂミ風の生地に、お好みソースがかかっており、エビのヒゲ?でデコレイトされています。この料理はさすが広島といった感じで、ドライ納豆のアクセントとしての働きよりも、お好みソースの旨さが光る一品でした。・・・と、ここでアクシデント発生。女性の店員さんが「味噌そぼろ納豆レタス包み」を持ってきました。「はい、納豆レタス包みでぇ〜す」「あの、スイマセン。先ほど、食べたんですけど」「お客様のご注文通りにお持ちしましたが・・・」メモをとりながら、注文、料理の評価、デジカメでの撮影をしているので、私が食べていないことはありませんので、しばらくやりとりをしていると、「分かりましたっ。下げますっ」と逆ギレされてしまいました。店内に広がった気まずい雰囲気のなか、6品目「豪華な納豆エビフライ 800円」(ひきわり納豆)がきました。
えびチップ、キャビアにまわりを飾られ、生野菜の絨毯の上にのせられた海老フライに、タルタルソース、ネギとひきわり納豆がかけられ、最後に細かいドライ納豆がふってあります。内容自体は、この豪華さとは裏腹で納豆をソースとして使う料理としては、安易過ぎる料理ではないでしょうか。7品目は、「土佐鶏たたき納豆包み 600円」(黒豆納豆)。
ニンジン、カイワレの上に切断面を誇らしげにならぶ、包み揚げの中には、チェダーチーズ(?)、大葉、黒豆納豆、鶏肉がはいり、濃いめのソースがかかっています。このソースがくせ者で、中に入っているチーズの塩気もあるので、全体の味が濃くなり、黒豆納豆の良さも殺しています。ここで、やっとご飯ものの8品目「黒豆納豆焼飯スープ添え 700円」(黒豆納豆)。
焼き海苔で風車状に飾った皿の中心に「こんもり」と鎮座する焼飯。黒豆納豆、ベーコン、ネギ、卵が具となり、糸引きも少なく、XO醤の旨味と黒豆納豆の深みが良くマッチします。普段は大粒納豆もしくは小粒納豆でチャーハンにしますが、黒豆納豆も深みがあっていいものと再認識させられました。スープは、甘い白味噌の味噌汁で、化学調味料を入れていないところがニクイ一品です。9品目は、「色彩(いろいろ)納豆 750円」 (ひきわり納豆、他) 。実は前菜として、納豆料理喰いのスタートダッシュをかけるべく、注文したのですが、9品目となって登場しました。内容としては、納豆とその他の食材を混ぜた以下の6品で、特筆すべきは「a.広島菜と小女子と小粒納豆」です。食感の妙があり、かつ広島らしい一品で旅心をもくすぐります。長野県でも「野沢菜と蜂の子納豆」、福岡県でも「高菜と明太子納豆」などが考えられると思います。(チョー・食マニア向け)
a.広島菜と小女子と小粒納豆b.麹納豆c.イクラと大根おろしと小粒納豆 ・・・イクラは人工!d.鶏わさにネギ、タマネギ、黒豆納豆をかけたものe.ブリの刺身、おろした山芋、わさび、ダシと挽き割り納豆f.挽き割り納豆に辛子明太子小鉢を次々と平らげたところで、10品目「納豆クレープ合鴨ロースト包み 750円」(納豆パウダー)。
納豆パウダーを入れて焼いた厚めのクレープに、ローストした合鴨と白髪ネギをはさんで、北京ダック風につけダレ(テンメンジャン)につけて食べます。味わうほどに、つけダレの味にクレープに練り混まれた納豆パウダーが負けていることに気づかされ、「納豆どこ?」といった感じです。ただ一品料理としては、美味しいものですので、つけダレにカシューナッツやピーナッツを砕いて入れ、食感のアクセントをつければ面白い料理になると思います。11品目はスープ系で「フレンチ納豆スープ 350円」(粒納豆)。
オニオンが入ったコンソメスープに粒納豆、麩、チーズ、クコの実を入れ、グラタンスープ風にしたものです。いままでの料理が比較的納豆の匂いを抑えたものでだったからでしょうか、この料理の納豆&チーズの香りは「納豆の故郷」?を想起させます。納豆とチーズの発酵食品に支えられた麩は、もはやスープのなかの一つの具ではなく、主役となっており、一品料理として十分なものです。納豆がスープの具に対して補助を行う、というパターンの好事例だと思います。スープだから軽いだろうと思っていたものの、麩がかなりヘビーで胃の許容量がレッドゾーンに近づいた12品目「あなごと納豆のサラダ(バルサミコ風味) 650円」(粒納豆)。
醤油に浸してから揚げたと思われるそうめん、かいわれ、レタス、タマネギ、揚げたアナゴに小粒納豆が入り、バルサミコ酢が全体をさっぱりとしています。「納豆を酸っぱくした納豆料理は成り立つか」という納豆料理のテーマが私のなかであるのですが、バルサミコ酢ですとあまり違和感なく食べられることが分かり、参考になりました。ラストに近づいた13品目は、「鮭おやこ納豆 450円(ひきわり納豆) 。
薄塩の鮭の切り身に、大根おろし、イクラ、ひきわり納豆が添えられています。先ほどの小鉢にもイクラがあったので、気づいていたのですが、人工イクラを使用しているようで、食べてもプチッの後、皮が口に残る感じがあり、料理全体の足をひっぱって残念に思います。・・・とここで、またもアクシデント発生。「鮭おやこ納豆」を持ってきて頂いたのは、男性の店員さんだったのですが、今度は女性の店員さんが「鮭おやこ納豆」を持ってきました。「お待たせしました。ゴトッ」「あの〜ぉ、スイマセン。これ先ほど、食べたんですけど」「伝票では2となっておりますが」「えっ?2つも頼んでないですよ」私もバカとは言われますが、メモをとりながら注文して2つも同じ注文をする(あえて注文するときはありますが)ほどバカではないと思っておりますので、店員さんとしばらくやりとりをしていると、先ほどの男性店員の方が女性店員に向かって、「さっき置いたよっ!」と言い、女性店員の方はそのまま何も言わず、皿をもって下がっていきました。お店として女性店員さんをフォローしない男性店員さん、何も言わずに立ち去る女性店員さん、さらには周りのお客さんからは、「何、問題起こしているんだろうね、アイツー」と言わんばかりの目で見られ、ヘコんできた私は・・・・・もう、早く帰りたい、アタシとなぜか少女のような気持ちになってきました。ですが、あともう1品が残っています。納豆学会としては、注文した納豆料理はすべて食べなければなりません(本当はただの貧乏性)。またも待つこと16分(今回もタイム測定)。嫌われたから持ってきてくれないのかな、と不安になりながら待っていたところ、ラスト14品目「牛タンスパイス煮込み納豆グラタン820円」が来ました。
バターの効いたガーリックトースト2枚を添え、ミニトマトでちょこんとのっけたアツアツの煮込みです。カレー風味のソースに溶けたチーズと熱を加えられた納豆が、柔らかく煮込まれた牛タンに絡み、ハフハフのあとにガツーンと旨みが訪れます。アクの強さそうな食材の組み合わせをうまく取りまとめているカレー粉の勝利です。全14品を食べ終え、お店を後にしたのですが、やはり何か心にひっかかるものがあります。今回食べた納豆料理のなかに色々な可能性を見いだせただけに、客への配慮という点で非常に残念に思います。新潟から広島まで食べにきたからというわけではありませんが、少なくとも私は二度と行く気にはなれません。多くのお客様が入っており、スタッフの忙しさもあると思いますが、ミスからのリカバリーなど、もっとサービス面でのご努力を頂きたいと思います。以上で、報告を終わります。*納豆家さんでは、納豆アイデア料理を募集しており、姉妹店さんでも使用できる食事券、金賞10000円分、銀賞5000円分、銅賞3000円分がもらえるそうです。