納豆屋台出店
最終更新日 平成14年6月24日
平成14年6月初旬、『男はつらいよ』のビデオを見ておりましたら、寅さんがお祭りで、「さて! いいかねお客さん。角は一流デパート赤木屋、黒木屋、白木屋さんで紅白粉つけたおねーちゃんから下さい頂戴で頂きますと五千が六千、七千が八千、一万円はする品物だが、今日それだけ下さいとは言わない!!ねっ!」と啖呵売をするシーンがあり、ふと、こう思いました。「お祭りで納豆は売れるのか・・・・・」何の才能もございませんが、好奇心だけはあります。幸いにも、ちょうど地元である新潟県柏崎市では、露天商が500店以上出店する大きなお祭り「えんま市」が、6月14日から3日間予定されておりましたので、早速、屋台を出店し、納豆を売ってみることにしました。もちろん商売ではないため、少ないと思いますが、利益はすべて公的機関を通じて福祉団体に寄付するようにし、しかも、ただ一般的に売っている納豆を扱っては面白くありませんので、その土地でしか買えないオリジナル納豆を企画。また、一般の方には、納豆だけでは集客能力がないかも知れませんので、長野県名物の「おやき」を用意してみました。1.もぞく納豆(限定100パック)昆布を入れた昆布納豆というものがございますが、柏崎名物のもずく(地元では「もぞく」と呼びます)を入れたらどうなるのか?というアイデアから造った納豆です。大豆は北海道産「トヨマサリ」を使用し、塩漬けのもずくを水で戻して入れてみました。新しい柏崎名物となれるのか、地元振興の気持ちをこめた実験の納豆です。
2.藁つと納豆(限定200本)きちんと大豆が直接藁についている昔懐かしい藁つと納豆です。
3.長野名物「おやき」(限定260個)高速道路や長野の観光地でみる「おやき」ですが、やたら油っぽく、なかの具も少ないことが多いので、具がたっぷりで炭火で焼いた「おやき」をだすことにしました。生地には小麦粉だけではなく、同じく長野名物の蕎麦粉を練り込んで、味は野沢菜、本しめじ、切り干し大根の3種です。長野の山奥で生まれ育った私の祖父がよく囲炉裏からだしてきた灰だらけの「おやき」をホイと私の手にのせることがあり、子供心には「きったねー」と思いつつ食べましたが、今考えると本来の「おやき」の姿だったような気がします。*ちなみに山梨県の「おやき」はとうもろこしを粉末にして入れるようです。
4.水ようかん(限定100食)北海道の小豆を使用した水ようかんです。手首が腱鞘炎になるかと思うほど、きちんと練り、和三盆糖を使って上品な甘さに仕上げました。これにつめた〜く冷やした京都の宇治茶をつけて、原価割れ100円(約40円の損)という破格の品・・・趣味で作りました。結果的には、この「こだわり」で原価が高騰し、利益(粗利)が一つの商品につき20円〜40円になってしまいました・・・・。さらには、これら「こだわり」の商品を安っぽいテントを張って売っても、自分のなかで納得できませんので、本格的な和風の屋台をDIYで作ってみました。『機動戦士ガンダム』のプラモデルにはじまり、田宮模型さんのラジコン、なぜかお城のプラモデル、電子工作キット、Z80のパソコン、DOS/Vパソコンと、自称「職人になりたかった男」の私でございますので、中途半端は嫌いです。分解、組立、持ち運びが可能になるよう、屋根は二分割方式に設計し、『夜も寝ず、昼寝して』総費用6万円、総製作日数4日間で仕上げてみました。
スケルトン 屋根に藁をふく前
屋台本体完成 縁台も作ってみました。
「納豆学会」「めしや」それぞれのマークを入れた暖簾をつけて完成!ついでに、右肩に「納豆学会」、左肩に「めしや」のマークを入れたスタッフTシャツも作りました。
6月14日は講演会だったため、お祭り2日目の平成14年6月15日が出店初日。地元新聞『柏崎日報』さん、地元ラジオ局『FM PIKKARA』さん、新潟県内誌『越後タイムス』さんにご紹介頂いたせいか、一時は行列もできるほどの売れ行きで、初日だけでなんと商品の90%が売れ、「もぞく納豆」などは完売してしまいました。ありがたいことでございます。売れなかったときには、「ようし、こうなりゃヤケだ!ヤケのヤンパチ、日焼けのなすび、色は黒くて食いつきたいが、アタシャ、入れ歯で歯が立たないよ、ときやがった」と原価を割ってでもサバくつもりでしたが、その口上も必要ありませんでした。また、地元の飲み屋さんでも話題になっていたようで、飲み屋のカウンターで納豆屋台の事を小耳にはさんだという、酔っ払ったオトーサンが、完売となってしまった後に「もぞく納豆」をお求めにいらっしゃり、「申し訳ありません、完売なんですよ」とお伝えすると、「完売?越の寒梅(新潟地酒の名前)・・・なんちゃって、ガハハハ」などと由緒正しいオヤジ・ギャグをおっしゃっておりました。初日に納豆屋台をやってみまして感じたのですが、「みのもんた」氏の(失礼ながら)おばちゃん世代への影響はかなり大きいということに驚きました。「もぞく納豆」の説明をしようとすると、「こ、これ、みのさんが良いって言ってたヤツ?」とか、「海草は良いってみのさん言ってたしねぇ〜」(手で頬をささえるポーズで)という反応でした。お、恐るべし、『おもいっきりテレビ』&みのもんた氏。しかし、「良い」という言葉だけで、理由など中身が伝わっていないところが、それ以上に怖いところです。翌日は朝10時開店し、16時にはおやき、藁つと納豆、水ようかん、すべて完売致しました。一部の方にご心配頂きました、露天商の方、香具師さんとの関係も、特にモメることなく好評で、初日に「もぞく納豆」3個、藁つと納豆5本をお買い上げ頂いた「ハゲシク怖い」風貌で金ネックレス&白いブカブカジャージの男性が翌日、「うまかったけん、もう10本」と、追加でお買い上げいただきました。ありがたいことでございます。ちなみに焼き立ての「おやき」を直接手渡しときには「アチーよ、おい!」と怒ってました・・・・・意外にも繊細な手先をお持ちのようです。この出店により得ました2日間通しての純利益は、頂いたお志を含めて、9075円。(屋台、消毒設備、人件費、保健所の許可申請費、検便費は三井田負担)
出店するより、かかった費用をそのまま寄付した方が良いんじゃないかというツッコミもありますが、「気持ちの問題」でございます。こっちも楽しめ、結果的に役立ててもらえれば良いと、功利主義的に思っているベンサム・三井田です。金銭的には、ちょっと中途半端な額となってしまったので、自分で足して1万円にし、6月17日、柏崎市役所福祉課を通じて、寄付をさせて頂きました。
*6月20日刊『柏崎日報』
お越し頂いた皆様、ご興味をもって頂いた皆様、応援頂いた皆様、誠にありがとうございました。ちなみに、フト思ったのですが、今回の屋台出店に際して、保健所の検査(4000円)、検便(1000円)を受け、アルコール消毒設備(14800円)も購入し、新潟県より「臨時飲食出店許可証」の発行を受け、万全の衛生を心がけたのですが、お好み焼き(広島風)の屋台をだしている、ちょっと効きすぎパーマおばちゃんが「犬」を抱きながら、お好み焼きを『ペシペシ』やっているのを見て・・・・ガックリ。「まぁ、こんなもんだ、こんなもんだ」(昭和のいる、こいる)これも夜店の魅力なのでしょうか。この気持ちは、「露天お好み焼きにみたペシミズム」として、論文にまとめたいと思います。(ウソ)
また、ありがたいことに、今回の納豆屋台の出店をお知りになった、観光関係団体より、面白い屋台として、その地で行われるお祭りにも出店してほしいとの連絡を頂戴しました。しかしながら、私だけなら自腹を切って「勉強」というかたちで行っても良いのですが、他の方にもお手伝い頂くとなった場合、人件費はもとより交通費等、2日間で純利益9075円程度では、採算がとれないので、残念ながらお断りさせて頂きました。次は、また来年の同じお祭りに出店してみたいと思います。