三重県・禁断の島「渡鹿野島」

最終更新日 平成14年4月14日

 「伊勢に行くぅ?じゃあ渡鹿野行ってこいよ、
           グフ、グフ

と悪い知人に言われ、平成11年7月31日、信ずるままに渡鹿
野島へ渡る定期船つきばまでやってまいりました。
 車を駐車場に近づけると、帽子をかぶったおじさんが寄っ
てきました。
 
 「泊まり?」
 「いえ、観光でちょっと・・・」
 「一人なん?」
 「え、ええ」
 「じゃあ、500円。船はあの赤い旗のやつあるやろ、
  あれに乗ってなぁ」

 
 駐車料金の500円をおじさんに渡すと、「埋立地利用券
No018094 三重県志摩郡阿児町国府 国府漁業共同組合 電
話(05994)7-3827(駐車場)」という券をくれました。おじさ
んは漁業共同組合の方のようです。
 島へ渡る船を見ますと、おじさんの言うとおり「赤い旗」
のついた船とついていない船があります。
 指示にしたがって「赤い旗」の船に乗ります。
 
 「100円ですぅ」
 
 船の運賃100円を支払い、イスに座って周りを見ますと、
頭頂部がお寂しいながらも脂分豊富、という方が3名ほどい
らっしゃいます。ポン、ポン、ポンと軽快な音をたてながら、
約10分で渡鹿野島に着きました。
 島に降り、さぁて島を一周してみようかな、とキョロキョ
ロしていると、ビニール袋をさげた普通の港のおばちゃんが
話しかけてきました。
 
 「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
 「えっ、僕ですかぁ?」
 「お兄ちゃん、松方弘樹の若いときに似とるわぁ」
 (えっ、松方弘樹?時代の違いを感じます)
 「そ、そうですかぁ?」
 「今日は何、泊まり、遊び?」
 「いえ、観光でちょっと・・・」
 「泊まりなら4、遊びなら・・そやなぁ2でええわ」
 「いや、あの・・・」
 「ハッキリしいぃ・・・まぁええわ、ついてき」
 
 おばちゃんが手をこまねきながら、おばちゃんの家らしき
場所までさっさと行ってしまいました。ついていく私もバカ
ですが、おばちゃんの後を追うと、家の玄関におばちゃんと
東南アジア出身らしき女性が立っていました。
 
 「エリいう娘(こ)やけどなぁ、まだ言葉がようできんか
  らな・・・おばちゃん、ちょっとどっか行くから、
  気にいったらお金払ろうて、な、ええな」

 「えっ・・・・」
 
 どうやら日本語ができない女性らしく、上目使いで私を見
ています。
 
 「Can you speak English?」
 「Sure!」
 
 久しぶりに喋る英語(多分2年ぶり)、舌がうまく動かな
くなっていたことに驚き、「アハン」という英語でのあいづ
ちを言うのが、何故か恥ずかしくなっていました。
 話をききますと、フィリピン出身で最初は東京の池袋で働
こうと思っていたけど、「なぜか」おばちゃんにお世話にな
ることになったそうです。
 「なぜか」という部分は、彼女の会話のなかに日本の地名
や人名が多く、本人はきちんと言っているつもりでも、私が
理解できなかったので「なぜか」です。スイマセン。
 他にも同郷の女性が、何人かおばちゃんに世話になってい
るそうで、他の女性はパーティにでてると言っていました。
ここで言っているパーティはただの宴会(エロおやじ参加)
と思われます。
 話をしているうちに、パラパラと小雨が降ってきたので、
家に入ろうということになり、雰囲気的に気まずくなってき
ました、ヤバイ!
 ちょっと言いづらかったのですが、結局単純な言い方で
 
 「・・・・・I have to go」
 
と言いつつ、おばちゃんに見つからないよう船着き場に走り
ました。来たときと同じように100円を払いつつ、船に乗
り込むと、
 
 「ちょっとお客さん!」
 
 あっ、この島でお金を使わなかったことがバレたのかな。
 
 「200円ですよぉ、200円」
 
 どうやら18時を過ぎると200円になるようです。
 駐車場へ戻り、車に乗り込もうとすると、さっきのおじさ
んが、
 
 「兄ちゃん、もうしまいかー」(お終いかの意)
 
 ・・・・この人、本当に漁業共同組合の方なのでしょうか。
 総面積0.69平方km、禁断の島「渡鹿野島」。
 どえりゃーとこです。

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