1993年の新聞記事

  最終更新日 平成13年5月3日
それぞれの記事は引用です。


 
『農芸化学研究へ財団を設立、タカノフーズの高野さん』
1993/12/29 日本農業新聞
 
 “おかめブランド”の納豆で知られるタカノフーズ(本社・
茨城県小川町)の創業者高野なをさん(八○)は、私財を投じ
て農芸化学分野の研究者への助成を行う財団を、このほど設立
登記を終え発足した。同社も財団事業をバックアップしていく
考えで、納豆業界初の試みだ。
 
 財団名は「財団法人高野農芸化学研究助成財団」。高野さん
は基本財産三億円を拠出し、同社社長の高野英一氏が理事長に
就任した。九四年五月から、農芸化学に関する一般研究者への
助成四件(各百万円)、若手研究者への助成五件(各三十万
円)を行う。
 
 

 
『真富士屋食品「DSふりかけ」サンリオキャラクターを起用、新発売』
1993/12/20 日本食糧新聞
 
 【静岡】真富士屋食品(株)(静岡市、054・286・2
281)はサンリオキャラクター「DS(ダイナソアーズ)ふ
りかけ」をこのほど新発売した。
 
 いま、人気の恐竜キャラクター。こだわりのミニパックふり
かけだ。小魚(二・三グラム×四袋)、かにたま(同)、なっ
とう(二・二グラム×四)、ツナ・マヨネーズ(同)の四品
種。小魚の素材を生かした味付、カニの風味と卵のおいしさが
程よくマッチ、本来の納豆のうま味をそのまま生かし、いま一
番うけている素材をふりかけにするなど、それぞれ特徴ある商
品。ミニパック一袋が三六グラム、荷姿は一〇×六。各袋に恐
竜のシールが入っている。標準小売価格二二〇円。
 
 

 
『◆中部納豆特集 今年は微増に止まる 過去5年で87%も伸張』
1993/12/10 日本食糧新聞
 
 納豆は、ここ数年来、健康志向にマッチした、しかも割安な
食品として、ぐいぐい売上げを伸ばして来たが、一世帯当たり
の消費金額からみた今年1〜8月の全国累計伸び率は二・一%
増に止まっており、さすがの納豆も今年は小休止の状態となっ
ている。
 
 納豆の、ここ数年来の全国消費動向を、前記の一世帯当たり
消費金額でみると、平成4年は昭和62年対比で実に五六・
一%増となる。その間年ごとの動きをみると、昭和62年一
二・六%増、同63年一三・二%増、平成元年四・〇%増、同
2年八・三%増、同3年一三・七増、同4年七・七%増とな
る。平成元年の四・〇%増という低い伸びは、流通費のコスト
アップによる大幅な価格改定が原因で、その年を除けば一言で
極めて順調に伸びて来ている。そして、バブルが弾けた昨平成
4年も七・七%増を達成。不況にはそれほど関係ないことを証
明した。
 
 そうした経過のあと、今年の状況が注目されたわけだが、1
〜8月の累計でみると僅か二・一%増に止まっており、伸びが
止まったのが数字上はっきり出ている。
 
 もっとも、今年は加工食品の全てが消費不振により売り値が
下がっているが、納豆もその例に洩れず下がっており、そのあ
たり勘案すると、ポイントはもう少し上がるはずである。しか
し、いずれにせよ、ここ数年来の低成長に止まることは避けら
れそうにない。
 
 とはいっても、昨平成4年の全国平均の一世帯当たりの消費
金額が三一〇二円であるので、これを逆算すると、昨年度の納
豆の全国消費金額は、一三〇〇億円を突破する大きな規模とな
る。
 
 そのなかで、中部地区の状況をみると、平成4年の一世帯当
たり消費金額を昭和62年と比べると、前年のように全国ベー
スで五六・一%増であるのに対し、中部は八七・四%増とな
り、これは沖縄の九九・八%増に次ぎ、二番目の高い伸び率と
なる。
 
 その間の伸びは昭和61年一〇・四%増、同63年一八・
〇%増、平成元年六・八%増、同2年六・二%増、同3年一
一・三%増、同4年二五・九%増となり、昨4年が飛翔的に伸
びたことが分かる。
 
 しかし、今年は1〜8月累計で一転、二・八%増に止まって
いる。
 
 納豆業界にとって、どうやら今年は“我慢の年”といえそう
だ。
 
 

 
『中部納豆特集 高まる大粒への人気=丸竹・丸愛納豆服部勝之社長』
1993/12/10 日本食糧新聞
 
 今年の納豆需要を見た場合、前年の実績はクリアしているも
のの、ここ二〜三年来の伸びからみると、やはり低調といえ
る。その中で、今年の傾向として言えることは、物量は前年よ
り増加、売上げも前年比増、しかし、原材料、人件費等、諸経
費の増加で利益率が低下していることだ。 また、当業界で
は、大手メーカーさんを含め、設備増設が行われ、生産量が大
幅にアップしつつある。今の状況では、供給過多となってしま
う恐れがある。ひところ、業界として伸び率も二桁を維持して
いた。そういうことも長く続かない現象とは思うが、このとこ
ろちょっと伸び率が鈍化というより、止まってしまったという
感じだ。今後はそのような伸びは望むべくもないが、少なくと
も需要と供給がバランスするよう、業界として消費の増加に努
めなければならない。
 
 大手メーカーさんの動向については、非常に積極的だった時
期がある。流通、とりわけ物流の進歩で遠方からの商品も随分
短時間で、流通するようになって来た。関東の大手メーカーさ
んも、それを利用して全国にシェアを拡げて来た。今でもその
傾向は続いていると思う。
 
 当社としては、地元の利を生かしながら、この地域を中心に
やってきた。このことは、遠方から時間をかけて運ぶことと違
うところだ。また、当社の武器でもあると思う。いまは、ご存
知のように、リアルタイムでの納品が求められている。そのた
めに、納入場所の近郊に工場とか、出荷の基地を持っていない
と、一〇〇%お応えするということは難しい。特に、納豆のよ
うな生鮮食品は、発注を頂いてから納入するまでのリードタイ
ムが短いので、とくにそのような体勢が必要ではないかと考え
ている。
 
 そういう点では、逆に当社が遠方に出て行きずらいことにな
る。その代わり、中部・地元についてはタイムラグを少なくや
れるし、工場とか、出荷基地を出てから、納入をさせて頂くま
での時間が短いことは商品にとっても良い訳で、また、それが
地元の一番強いということだ。われわれが現在行っている一番
短いリードタイムだと、夕方に受注させて頂き、翌朝の3〜4
時までにお届けできる。
 
 まさにリアルタイムそのものだと思うが…。いまは、必要以
上のものは、消費者も求めないし、小売店さんもそれに対応し
て、必要以上のものはいらないはず。そのためには、リードタ
イムは短い方がいいし、数量の変更などの対応にしても、幅を
もたせることが出来る。
 
 当社の看板商品は、ご存知のように、デラ納豆だ。特徴は豆
のつぶが大きいことだ。関東の大手メーカーさんは小粒とか、
極小粒を売り物にして、全国に広げているが、当社は創業以
来、大粒の大豆を使っている。本当の大豆というのは、やはり
豆そのものの味がいい。昔から食べて頂いている方には、やは
り大きい豆の方がおいしいということで、根強い人気がある。
また、最近は逆に大粒の人気が徐々に高まりつつある。先日
も、農水省の展示会でのことだが、来場のお客さまからは、大
粒大豆の製品指名が多かったことで、これが裏付けされている
と思う。始めた当時は、これが一〇〇%だったわけだが、今は
約二割というところだ。
 
 丸愛納豆イコール黄色い紙というイメージは残っているが、
種々の製品の開発・販売で自社生産の全体から見た比率は下が
って来ている。カップもの、ミニ容器の三段、四段ものが増え
て来ているということだ。とくにミニ容器の商品が多い。作り
やすい容器でもあり、そのための機械も改良されて来ている。
また、カップものの伸びも非常に高い。とくにカップ容器の場
合、環境対応というか、地球に優しい容器を使用している。紙
のように燃やせる熱カロリーの少ない容器になっているという
ことだ。今まではおいしい商品を、より安く作ることを考えれ
ばよかったが、今後は地球環境への配慮も加えて行かねばなら
ない。
 
 これも消費者ニーズの一つではないかと思う。また、無農薬
とか有機栽培とかいわれているが、できる限り消費者ニーズに
添った原料を使用した製品を実現できるようにしたい、当社で
も、すでに一部で使いはじめている。
 
 ともあれ、納豆の将来性は洋々だと思う。そういう意味で、
今後ともいい商品づくりを心掛け、業界ともども発展していき
たい。
 
 

 
『中部納豆特集 本来のからし製品化、シェア拡大狙う美濃久商店』
1993/12/10 日本食糧新聞
 
 景気は依然、底冷えの状況が長期化しているとはいえ、自
然、健康食は相変わらず根強い人気を誇っており、発酵食品の
代表食品の一つである納豆は、消費量も増加傾向。ここ数年の
内食回帰というフォローの風を受けていることも消費拡大には
少なからずとも好因といえそうだ。納豆自体、メーカーごとに
大きさ、パッケージなど千差万別であるが、その引き立て役‐
脇役として重要なポストを占めているのがからしとタレ。
 
 (株)美濃久商店(愛知県一宮市、0586・69・030
9、加藤数也社長)は創業まもなく、業務用マスタードなどの
ほかに、同納豆業界向けのからしを研究開発、生産・出荷して
きたが、「納豆業界の本格的な受・発注を受けるようになった
のは最近のことで、新規開拓も順調に推移しており、昨年に比
較すると三〇%ほど生産・出荷量が伸びてきている」と加藤勉
同社専務は語る。同社のからしの特徴は何といってもブランド
に恥じない高品質が“売りもの”。辛みはもちろん、色なども
業務用と同じく、同社独自の研究・技術で開発された製品。も
う一つが、従来のからしを使った場合、色・辛さが納豆の生産
課程で抜けてしまうところ、熱に強い、辛さも色落ちもしない
本来のからしを製品化していること。ユーザーサイドに立った
製品である。
 
 内容量的には最近の傾向である納豆の“プチ”化に併わせ、
従来一パック(食)に二グラム入っていたものが、今では一グ
ラム〜〇・六グラムと細分化。
 
 より消費者ニーズにマッチした小型化してきているのも特
徴。
 
 いずれにしろ、同社は今や専門的に営業活動できる体制も整
い、同業界での市場拡大もこれからが本当の意味での本格化、
といえそうだ。加藤社長が語る「ゆくゆくはシェア(市場占有
率)の三〇%を確保したい」という抱負をバネに、実現に向
け、まさに始動してきている同社だ。
 
 

 
『中部納豆特集 味や食べ方を提案=東海納豆組合小杉力理事長』
1993/12/10 日本食糧新聞
 
 東海地区の納豆は、全体的にみて納豆特有の香りがうすく、
豆そのものも白みをおびたものが主流となっている。ねばりと
香りが納豆の大きな特徴となっているが、需要は天然健康食品
の大豆タンパクが豊富なだけに、ヘルシー志向の消費者には毎
食欠かせない食品として定着している。
 
 また、最近ではダイエット食品として女性の間にも納豆のフ
ァンが増えており、病院、工場、学校などの給食分野でも健康
食品として採用が多いだけに動きそのものはコンスタントだ。
 
 また、最近の消費傾向をみると、従来の大粒ものよりもひき
割りや小粒のものへと移行する傾向がみられる。これは関東筋
の製品がねばり、香りともに本来の納豆のイメージを強くも
ち、さらに小粒化していることから、当地区のメーカーにもこ
の流れが反映している。総じて関東筋の製品に当地の消費者が
慣れてきたということになる。
 
 中部地区の消費動向については手固く推移しているという現
象が続いているが、最近では関東地区の製品の台頭が定着し、
量販・小売店での各売場における面積が拡大しており、市場そ
のものの拡大はひと頃に比べてかなり大きな数字となってい
る。
 
 東海納豆組合は愛知・岐阜・三重県の三県下の専門メーカー
が加盟し、会員数一七社であるが、いずれにしても業態そのも
のが他業界に比べて大きくないだけに活動費も少なく、積極的
な消費PRをうって出ることが難しいことが会の運営面で課題
になっている。
 
 会の活動としては、中央でまとめられた年間のスケジュール
に添って運営されており、年に一度7月10日の納豆の日には
業界こぞって消費の促進活動が行われるなど、地味ではある
が、企業それぞれの努力によって消費の拡大がはかられている
のが現状だ。
 
 当地区の納豆業界は一部を除き、生産、販売の面でも大手と
の格差が大きく、それぞれ独自のルートに限られた販路をもつ
メーカーが主流だが、今後は会の運営面では組織力により、納
豆のもつすばらしい健康性へのアピールなどを啓蒙する機会を
つくりたいと考えている。
 
 納豆は畑の肉としてなじみのある大豆を主原料にしたもの
で、ヘルシー食品としては万人が認めた健康食品の代表だけ
に、業界ではこのあたりを消費者によくわかるよう啓蒙し、消
費の拡大へつながるPRの実施も必要ではないかと考えてい
る。こんごは味の提案、食べ方の提案などを行い、市販向け以
外の外食分野への開拓を高め、汎用性の高い納豆消費拡大を地
道に推進していくことが重要課題と考えている。
 
 

 
『中部納豆特集 シェア争い激化、「タカノ」が巻返し』
1993/12/10 日本食糧新聞
 
 中部納豆業界でのシェア争いが、ここへ来て一層激化の様相
をみせており、先行き予断を許さなくなって来た。
 
 納豆業界は、茨城、関東勢など、業界の大半が近代設備を導
入して以来、地殻変動を起こしてすでに数年が経つ。その効果
は絶大で、ここ数年でとらえても需要は五十数%アップ。平均
すると、年ごとにきっちり二桁アップを果たして来ている。大
手各社は、キャパが出来た以上、売らなければならない。その
ためには、従来の販路だけでは到底充足されないわけで、大手
筋はその販路を全国に求めていった。それまで、納豆は地域食
品で、ざっと八〇〇有余の中小納豆メーカーが、それぞれ地域
に密着、ある意味では平隠無事の商内に終始していた。そうし
た形態が一挙にくつがえされたわけだ。まさに地殻変動という
表現がぴたりの大変動だった。このことは、中小メーカーにと
っては、死活問題といえたわけだが、それでは地殻変動がな
く、そのまま地域食品として推移していたならば、果たして今
日の経営があったかといえば、それは多分“ノー”であろう。
そのままでは、納豆が健康食品という大きな利点があったにし
ても、今日、小売規模で一三〇〇億円といわれる大型市場は望
むべくもなかったはずだ。結果的には納豆業界の地殻変動は、
時代の流れとして、そうなるべくしてなったといえよう。
 
 そうした、一言でいえば順風満帆といえた納豆業界だが、昨
年、大手の一角だった茨城水戸食品が倒産、業界にショックを
与えた。需要好調による強気の設備投資が裏目に出たものだ
が、業界に大いに警鐘を鳴らす結果となった。その後、業界も
やや一服という感じとなり、昨4年の伸び率は全国平均で七%
台に落ち着き、右肩上がりの成長も、ややカーブを緩める結果
となった。
 
 そうした中、今年の中部納豆市場をみると、大手ではタカノ
フーズが巻き返し、シェア争いは激烈化している。それまでの
中部での大手の動向は、朝日、あづま、タカノと続き、全国ト
ップのタカノは大手のなかでは後じんを背していた。それが今
年は一気に攻勢に打って出、とりわけ今秋以降のテレビCFの
大量投入は需要を刺激、巻き返しを成功させている。同社は三
重に工場を持っているだけに、強味を大いに発揮しているのが
現状で、同名古屋営業所によると、今年の伸びは実に一七〇〜
一八〇%という。それでは、朝日、あづまが手をこまねいてい
るかといえばそうではない。いずれも有力な流通業者と取り引
きしているだけに、積極的な販促で対応、それがシェア争いの
激化につながっている。
 
 一方、そうした大手の動きに対し、地元勢も地域密着の利点
を生かし、大手の積極的な宣伝をフォローとし、きめ細かい対
応で販路を死守している。地元の納豆業者は丸愛納豆、小杉食
品、こうじや、高丸食品、村山食品、高野元香商店、高田食
品、政岡食品、小森食品、貝崎商店、アサヒ食品、大進納豆本
舗、奥野食品、ハヤシ食品、ヤマジン食品、山下食品、湯葉勇
商店などが東海納豆組合のもとに結束、需要増へ懸命の努力を
続けている。
 
 今年の中部地区での伸びは微増で、二〜三%程度に止まるも
のと見られるが、健康食品という強いファクターを持つだけ
に、来年以降の巻き返しが期待される。
 
 

 
『中部納豆特集 ジャスコ、下期38%増を記録 PB商品が健闘』
1993/12/10 日本食糧新聞
 
 販売動向を知る上で重要な位置づけにある一つに、大手量販
店がある。そこで、GMSを核にイオングループを形成するジ
ャスコの東海事業本部(名古屋市中村区、052・583・5
664)を例に、定点観測した。
 
 同事業本部が管轄する店舗は一九店。うち、市内中村区の中
村店を除く一八店で食糧品を販売しているが、納豆については
大型店で一七アイテム、中・小型店が一三アイテムを揃え、こ
こ数年横ばい。
 
 納豆は、価格が安い割に“ナットーキナーゼ”をはじめとす
る栄養素が非常に多く含まれる食品で、「最近の健康食志向の
波に乗って、当社でも昨年の秋頃から販売量が伸びてきてい
る」(田中政子・同事業本部広報部部長)という。ちなみに、
ジャスコ全体(一九〇店)における納豆食品の販売は、上期が
前年同期比七〜八%増を記録。うち、同東海事業本部内では上
期の実績が一六%増、また、下期の中でも9、10、11月の
三ヵ月間は三八%増と、ここに来て再び脚光を浴びているとい
う。商品特徴としては「大粒タイプ二に対して小粒タイプは一
五と、圧倒的に小粒タイプの納豆製品が多い上、パッケージも
従来のトレイ入り一〇に対してカップ入り七となっている。毎
日の食卓に上る健康食品だけに、簡便性に富む商品を消費者は
好む傾向」(同)。また、同社の売れ筋を見ると、上位はPB
(プライベート・ブランド)商品である“J‐food しあ
わせ”(四個入り、タレ・からしなし、小売一四八円)や“お
かめカップ”など。中味がほぼ同じで価格が安いという商品価
値の比較訴求を前面に打ち出しているのがPB商品で、味や容
量などはもちろん、価格にも敏感な消費者ニーズにマッチして
いるだけに、この先、PB商品の売上げ上位も揺らぎそうもな
さそうだ。
 
 このため、同社では下期から新たなPB商品である“J‐f
ood 気くばり納豆”(三個入り、タレ・からし付き、小売
一三八円)を市場投入、消費者の購買意欲をさらに高める政策
をとっている。とはいっても、プライスゾーンでは「くめ納
豆」(二個入り、小売一八八円)から同社PB商品(一三八
円)ゾーンが中心で、内容量、質なども大手食品メーカー同士
はもちろん、PB商品との差別化が薄いだけに、他の食品アイ
テムなどと同様、企業努力によるロープライス製品の開発か、
もしくは他社にはない特徴を持った差別化商品を開発・製品化
することが要求されているといえそうだ。
 
 

 
『中部納豆特集 問屋はこうみる 大手の宣伝で動き出る=昭和冷凍冷蔵・前田係長』
1993/12/10 日本食糧新聞
 
 中部地区での今年の納豆の動きはどうだったのか。大手取り
扱いの(株)昭和(名古屋市熱田区、052・681・415
1)と(株)大一(名古屋市熱田区、052・682・758
4)に現場の話を聞いた。
 
 当社の納豆取り扱いブランドは主力で五社。丸愛納豆、あづ
ま、朝日、タカノフーズ、そして旭松、こういったところだ。
若干だがクメもある。ここへ来て、タカノの巻き返しが目立
つ。ご存知のように、昨年大手の一角が崩れたわけだが、それ
によりとりわけ関西、北海道では大手のシェアに変化があった
のではないか。東海地区はそれほどなかったと思う。
 
 その中で、当社の上期の納豆取り扱い数量だが、前年並みと
いったところだ。ここへ来ては、大手の宣伝効果により、若干
の動きはある。これには、いままで伸びすぎたという面もあ
る。バブル時代にはよく売れ、カク納豆でも一七八円くらいの
ものが売れた。それが、今は売価も若干下がって来ている。ア
イテムとしては、今はカップが主流。以前は、東海地区では四
段だったが、ここへ来てはカップがよい。
 
 しかし、比率は半々くらいではないか。やはり、お店の方は
カップは一アイテム、ないしは二アイテム程度。あとは四段、
三段、または引き割りとかワラ納豆といったところだ。スーパ
ーさんの低価格志向が、やはり納豆にもでて来ているというこ
と。ディスカウントに走るというか、やはりそういうところが
ある。食品の動き自体もここへ来て低迷している。ご存知のよ
うに既存店ベースでも、売り上げがだいぶ落ちている。大手は
新店効果で売上げは下がっていないが……。納豆についても、
金額の伸びは余り期待できないと思う。
 
 スーパーの納豆のフェイスは縮小はされていない。商品の差
し替えはあるが、品数のカットはない。差し替えはここへ来て
はかなり出て来ている。
 
 納豆の将来性については、ここ数年はこのままの状態が続く
のではないか。下がることはないと思う。健康食品ということ
で売れているはずなので、バブルとかは余り関係ない。ことし
は、4月だったか、「思いっきりテレビ」で一時間の納豆の特
集をやったが、名古屋は一週間くらい売れ行きがすごかった。
関東は二週間くらい続いたとか言っていた。
 
 数年まえ、納豆の効用が学会で発表されたが、これは分かり
にくい部分があった。今回は、具体的に、夜食べた方がいいと
か、何グラム食べなさいとか、きめ細かくやったので、分かり
やすかった。どんなのでもというと語弊があるが、ものすごい
反響があり、よく売れた。リアクションが明くる日からあり、
正直に言って、びっくりした。納豆は利益商材でもあり、今後
も積極的に取り組んでいきたい。
 
 ((株)昭和冷凍冷蔵食品部惣菜課係長・前田勝宏氏)
 
 

 
『中部納豆特集 問屋はこうみる 動きよい3、4段物=大一・松橋係長』
1993/12/10 日本食糧新聞
 
 当社の納豆の伸びだが、やはり一桁台に止まっていると思
う。オンになったのは宣伝を行ったタカノフーズの分だ。いま
まで、ある程度まで伸びて来ているので、ちょっと頭打ちのと
ころはある。それでも、テレビコマーシャルのお蔭で、かなり
成果は出たということだ。テレビで流す前と後とでは、メーカ
ーからグラフを見せてもらったが、かなり違う。一〇日から二
週間の間ですぐ効果が表れている。テレビの力というのはかな
り強い。末端の消費者からの反応が早い。当社の納豆の取り扱
い銘柄は、朝日、あづま、タカノフーズ、旭松、小杉、丸愛、
クメ、水戸食品、あと数量が落ちるが一〜二ある。タカノは一
〇年くらい前に来たことがあるが、その頃は発注システムが二
日前発注ということで、かなりスーパーさんには定番で入った
が、そういう関係でかなり欠品とかが多くて、ちょっと尻すぼ
みみたいになっていた。しかし、三重県に工場をつくってから
は、そういう対応がいい。日曜日でも休日でも配送がある。そ
ういう部分でまたちょっと違って来たということだ。
 
 納豆は以前に比べると、かなり食べるようになって来た。健
康にいいという部分で伸びて来たのはたしかだ。これからどう
なるかというと、難しい面もある。ともあれ、テレビの効果は
かなりあるということだ。バブルが弾けたあとの消費不況との
関わりだが、納豆の単価は他の食品に比べて安いから好きな人
は納豆で十分食べられる。そんなに影響はしてないと思う。そ
のなかで、やはり価格は下がり気味だと思う。量を売るには普
通の値段では難しい。その分値段が下がって、たとえ数量が倍
でたとしても、金額ベースでいったらそんなに伸びない。スー
パー自体の納豆売場は、逆に広い店のほうが多いのではない
か。もちろん地域性もある。あまり広げてもロスになりかねな
い。
 
 形態については、名古屋はカップよりもパック物のほうが、
なにか売れるみたいだ。三段、四段ものがいいように思う。N
Bと地元メーカーとの差は、営業力の違いと商品をアピールす
る力の差だろう。最近はよくなって来たと思うが、結局名古屋
向けというか、中部地区のお客のニーズにあわせたような商品
を段々作ってくれている。以前はそういうことに余り関係な
く、関東メーカーも地元で売れている商品をそのまま持って来
て、売って下さいという感じが強かった。いまは、私どもの声
も聞いてくれているのか、そういうように合わせて、価格帯も
こちら向けで若干安く、大体一〇〇円というのが境になる。他
で一五〇円で売っていても、名古屋ではこの値段では売りにく
い面がある。そういう部分でも歩みよってくれている。納豆は
一〇年前に比べると飛躍的に伸びているが、これからまだまだ
伸びると思う。まだ食べてない、嫌いな人もいっぱいいるはず
だから、そういう人達にどうやって食べさせるかだろう。今後
も積極的に拡販したい。
 
 ((株)大一営業部係長・松橋隆氏)
 
 

 
『中部納豆特集 全国納豆協同組合連合会の動き(5年度)』
1993/12/10 日本食糧新聞
 
 納豆業界の全国団体である全国納豆協組連合会(東京都台東
区、03・3832・0709)の平成5年度の活動状況は次
の通り。伸びが鈍化しているところから、消費拡大のためのキ
ャンペーンや日付表示問題への積極的な取り組みがうかがえ
る。
 
 ▽4月2日‐全国納豆厚生年金基金事務所開き▽7日‐流通
部会▽9日‐大豆油糧需給会議▽14日‐第一回大豆研究会
(農水省)
 
 ▽5月7日‐全納連総会・会館総会・厚生基金設立披露パー
ティー▽13日‐日本テレビ「裸の王様」納豆放映▽18日‐
日本テレビ「おもいっきりテレビ」納豆健康法放映▽31日‐
大豆供給安定協会理事会・総会
 
 ▽6月1日‐PR部会▽7日‐生鮮懇事務局会議▽18日流
通部会▽24日‐日付懇談会・日本食品衛生協会(生鮮懇構成
組合)▽30日‐特定加工大豆の取扱い・食糧庁検査課
 
 ▽7月10日‐納豆の日▽29日‐PR部会
 
 ▽8月10日‐国産大豆振興対策ヒアリング▽11日‐一〇
回流通部門▽12日‐食品産業センター理事長との懇談会・生
鮮懇▽25日‐日付表示懇談会▽27日‐PR部会(特別宣伝
委員)
 
 ▽9月1日‐生鮮懇・農水省他陳情(取引慣行改善、日付表
示、PL制度)▽14日‐カナダオンタリオ州大豆生産者販促
協議会M・ロー氏表敬訪問のため来所▽17日‐PR部会(特
別宣伝委員)▽20日‐食品産業センター連絡会議▽24日‐
農水省大豆銘柄格差小委員会▽30日‐NHK総合テレビ サ
イエンス番組 くらべてみれば「ヨーグルトと納豆」放映
 
 ▽10月2〜3日‐全日本学生柔道選手権大会・全納連協賛
▽3日‐テレビ東京、医食「食文化と栄養・大豆の巻」納豆関
連放映▽6日‐農水省大豆研究会▽13日‐生鮮懇事務局会議
▽14日‐農業水産祭朝市▽15日‐流通部会▽15〜17日
‐1993お米・ごはん食展・東京ドーム▽24日‐納豆学術会
議・日本都市センター
 
 ▽11月2〜3日‐全日本学生柔道優勝大会(大阪)全納連
協賛▽8日‐食品産業センター連絡会▽9日‐青年同友会▽1
5日‐農林水産省「食品の日付表示のあり方」(食品表示問題
懇談会報告書公表)、厚生省「食品の日付表示に関する検討会
報告書」公表▽17日‐理事長会議、厚生年金基金代議員会議
▽18〜19日‐全納連連合会研修▽19日‐PL制度「食品
に係る消費者被害救済防止・救済対策研究会」報告書(農水
省)国民生活審議会消費者政策部会に報告▽19〜21日‐農
業祭「実りのフェスティバル」
 
 ▽12月1日‐スズヒメ大豆実需者と全農打ち合わせ▽2日
‐生鮮懇総会〈予定〉10日‐分野調整法関連事項について中
小企業庁委託事業ヒアリング▽13日‐全国納豆厚生年金監査
▽九四年2月28日‐厚生年金基金代議員会議
 
 

 
『乾物・海産物・豆類特集 消費地、高い黒豆敬遠 小豆は依然堅調』
1993/12/03 日本食糧新聞
 
 北海道産小豆、大豆の凶作を中心に波乱含みではじまった本
年産豆類は、年末へ向かって今年も最需要期をむかえた。注目
の小豆は、ホクレンなど農協筋が新物不足で販売調整を行い産
地からの売物がほとんどなく高値からさらに先高気配にある。
こうした現況から当然安い輸入中国産に人気があり需要が回
る。しかし、大粒の大納豆小豆だけは、代替えがなく、六〇キ
ログラム九万円という最高値を記録している。また、北海大豆
も昨年をさらに上回る高値となり、とくに正月用黒豆は十勝光
黒一等が前年比五割高を唱え、函館大黒、東北もの大黒も軒並
み同様に高い。このため東京の雑穀卸店はヒネ手持に懸命な努
力を払う。
 
 幸い昨年12月末になってダブつきから下げた人気の丹波大
黒のヒネ在庫がかなり越年し、この年末まで食いつなぐ業者も
あって、函館大黒の三〇キログラム四万円、岩手雁食豆の三万
八〇〇〇円、十勝光黒三万五〇〇〇円が高すぎるとして現在敬
遠し、買い手控えムードが強い。それもこの不況では、高値追
いは危険だとする警戒感があるからだという。
 
 そのほか大正金時、大福、手亡、ひたし豆も冷夏の影響で軒
並み前年比四割以上の高値をよぶ。その半面、昨年より安くな
ったのは、赤えん豆、青えん豆、そして円高の輸入天津小豆
類。保合は丹波大黒、むらさき花豆。やや高いのが中長うず
ら、虎豆。
 
 このように小豆、大豆などの高値から、小袋豆も当然今秋値
上げに踏み切ったが、スーパーなどの要請に応えて、各社とも
内容量を減量して極力売値を抑えたのが特徴。また、昨年を上
回る最高値をつけた岡山産備中ダルマもさすがに二年連続更新
した一キログラム三〇〇〇円では、手が出ないとして、敬遠さ
れ、五分の一の値段であり輸入中国産ササゲに人気が完全に片
寄ってしまった。したがって、凶作高も限度があり、代替品の
ある豆類は、今後とくにきびしい選択に迫まられそうである。
 
 

 
『食品の日付表示問題、日配食品は期限表示を歓迎、併記・使用期限設定で困惑』
1993/11/24 日本食糧新聞
 
 懸案となっていた食品の日付表示について15日、農水、厚
生両省から報告書が出され、製造年月日表示を基本とした現行
表示制度を「期限」表示に改めることが明らかにされたが、こ
れに対して各業界では基本的に歓迎しながらも、具体的細目が
不明なことや業界それぞれの事情もあって一抹の不安を持つと
ころもみられる。「使用期限」表示が義務づけられることにな
る日配食品業界もそのひとつ。
 
 麺、豆腐、納豆、コンニャク(二団体)、モヤシの六団体で
組織している全国生鮮加工食品流通懇談会は9月1日付で農
水・厚生両省などに製造年月日表示を撤廃し、期限表示への一
本化を求める陳情書を提出している。今回の報告書は基本的に
その要望に沿うものだが、問題点あるいは解釈不明点もあるよ
うだ。
 
 第一は「品質が保たれるのが数日以内の食品」(農水省)、
「早期の消費が望まれる食品」(厚生省)に「使用期限」(U
se‐by Date)を表示することになっているが、この
対象となる食品(日配食品など)に対しては同時に製造(加
工)年月日の表示あるいは併記を行うことも考えられるとして
いることである。仮に「併記となると何のために表示改正した
のか分からなくなる」からだ。特に量販店が期限表示の一本化
に協力するよう行政当局の指導に期待している。
 
 第二は「使用期限」表示と「品質保持(賞味)期限」商品が
どのように区分されるかということである。生麺でも冷凍ゆで
麺や無菌ゆで麺もあるし、豆腐にも充填豆腐のように日持ちの
する商品もある。それらの線引きがどうなるかということであ
る。
 
 第三には食品衛生法上日付表示が義務づけられていない豆
腐、納豆、コンニャクなども表示が義務づけられるのかどうか
ということである。たとえば豆腐の場合、量販店などに納入し
ている大手メーカーはすべて日付表示を実施しているが、製
造・小売をしながら近隣の食料品店などへの卸業務も行ってい
る、いわゆる“豆腐屋さん”の場合は包装されていても日付表
示をしていないところが多いといわれている。日付表示が義務
づけされた場合、これら零細商工業者が果たして対応できるか
どうかという問題もある。
 
 さらに、「使用期限」表示を行う場合、製造後何日位に設定
するのかが最も頭を痛めるところとなりそうだ。豆腐の場合、
現在一般的な賞味期間は三日が標準となっており、品質保持上
は二日ほどのアローアンスをとっているということだが、「使
用期限」表示となった場合、三日でいくのか四日とするのか、
あるいは五日に設定するのか、この問題は日配食品すべてにか
かわる大きな問題である。基本的には製造業者自身が判断する
こととはいえ、業界としても何らかの基準マニュアルづくりが
必要となりそうだ。
 
 

 
『タカノフーズ、「おかめ納豆」拡販で西日本市場で消費者キャンペーンを実施』
1993/11/17 日本食糧新聞
 
 タカノフーズ(株)(東京都台東区、03・3845・70
10)は、西日本市場での「おかめ納豆」のさらなる消費拡大
とシェア獲得を目指し、消費者キャンペーンを実施している。
「納豆」は、ビタミンやカルシウム、食物繊維などを多く含
み、健康ブームで人気が高まり、さらに最近では洋風料理にも
取り入れられ、消費が拡大傾向(平成4年度売り上げ同社前年
同期比一〇%増)を示している。
 
 地域的にみると西日本は、納豆嫌いが多いといわれている
が、ここ数年、西日本の納豆の消費量が急激に増えて(平成4
年度大阪以西売り上げは同社前年同期比三〇%増)きていると
いう。そのため、同社は西日本市場でのシェア獲得を目指し
て、春に大阪での大量TVスポット投下を実施、認知度の上昇
に努めた。同社は今秋、引き続き、同地域での消費拡大、シェ
ア獲得を目標に消費者キャンペーンを実施している。
 
 同キャンペーンは、11月10日現在で応募総数四万五〇〇
〇通と快調な滑り出しとなっている。応募総数一五万通を見込
む。
 
 詳細は次の通り。
 
 ▽展開エリア‐愛知県、長野県、富山県以西の西日本▽賞品
‐(1)A賞がお米券(一キログラム)五%を三〇〇〇人(
2)B賞が同三枚を一五〇〇人▽実施期間‐9月21日〜12
月20日(当日消印有効)▽対象商品‐「おかめ納豆・極小粒
ミニ三」、「おかめ納豆・極小粒カップ三」‐写真‐▽応募方
法‐対象商品のバーコード二枚を、店頭備え付けのハガキもし
くは官製ハガキに添付、住所、氏名、年齢、商品の購入店名を
明記の上送付▽宛先‐〒160東京都新宿区信濃町三一・四ッ
谷郵便局留、タカノフーズ(株)「お米券プレゼント」係
 
 

 
『「納豆放送局」開局へ、効用、料理法の発信源に、東京で学術会議』
1993/10/26 日本農業新聞
 
 「納豆放送局」が十一月一日に開局する。これは全国納豆協
同組合連合会(高星進一代表、会員社数五百社)が二十四日に
東京の日本都市センターで開いた第一回納豆学術会議で明らか
にした。納豆が成人病予防に効果があることや販売業者のリス
ト、アイデア料理メニューといった納豆に関する情報をファク
スで取り出せるシステムを開設する。
 
 「納豆は地球を救う」をテーマに開かれた学術会議には全国
から約二百人の研究者が参加して業界関係者約三百人と交流し
た。栄養、医学、歴史などの専門家六人がそれぞれの立場で納
豆に関する研究を発表した。また、納豆パーティーでは、納豆
を使用したさまざまな料理を試食した。
 
 納豆に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」が血栓を溶かし、
成人病予防に大きな効果があることは世界に知られ、日本より
むしろ国際的に評価が高まっている。骨粗しょう症の予防に効
くビタミンKを多く含むことも解明されてきた。
 
 納豆放送局はこれまで経験的に伝えられてきた納豆の正確な
効用を伝え、愛好者を増やすことが狙い。アイデア料理や会員
社なども紹介する。同連合会では「納豆の研究は国際的に進ん
でいる。放送局を通じて、科学的に解明された効用の紹介、メ
ニュー提案を行いたい。素材としての納豆を見直してほしい」
と、求めている。納豆の市場規模は約九百三十億円で十年前と
比べ四二%増。業界では不況下の優良食品として納豆販売を伸
ばすチャンスととらえ、研究者などの支援体制を強化してい
る。
 
 納豆放送局のファクス番号は03(3769)5351。
 
 

 
『旭松食品「されど納豆です」新納豆菌で香り改良した納豆3品新発売』
1993/10/22 日本食糧新聞
 
 旭松食品(株)(大阪市、06・306・5301)は、こ
のほど新納豆菌を使用した納豆三品を新発売した。
 
 新製品は「されど納豆です」(五〇グラム×三、五〇グラム
×二、三〇グラムカップ×三、いずれもたれ、からし付き)。
約三〇〇種の納豆菌から選定し、バイオ技術で改良した菌(N
51993Z)を使用。従来、一〇度以上になると二次発酵し、ア
ンモニア臭が発生したが、この菌はその欠点を抑制している。
 
 しかも、時間とともに減少する血栓溶解作用のある酵素ナッ
トウキナーゼを、約五倍長期安定化させるのに成功。加えて、
血栓の一因になるといわれるビタミンKの含有を押えた“健康
志向食品”。
 
 高齢化社会に向け、より改良した手軽なバランス食品とし
て、たかが納豆「されど…」と命名。
 
 当面は、関東地区を主体に販売。すでに有力スーパー五〇〇
店での導入が決定している。
 
 荷姿は三カップが一〇入り、他二品は一二入り。希望小売価
格は五〇グラム×二が一一八円、他の二品は一五八円。
 
 

 
『旭松食品、新納豆菌を使った新製品「されど納豆です」で関東政略』
1993/10/20 日本食糧新聞
 
 旭松食品(株)(東京支店‐中央区、03・5543・21
41)では、このほど新納豆菌を使った「されど納豆です」を
新発売したが、同品を関東市場開拓商品と位置づけ、積極的な
取り組みを図っている。
 
 同社では、臭いをおさえた「なっとういち」で市場に参入し
て以来、順調に売り上げを伸ばし、前期(平成5年3月)納豆
の売り上げは三〇億円弱となっている。とくに関西市場では、
三〇%超のシェアを占めているとみられ、関西市場拡大の原動
力となっている。しかし、主消費地の東日本地区では、店舗カ
バー率も低く悩び悩んでいる。このため、血栓溶解作用のある
酵素、ナットウキナーゼを長期間安定化させることに成功した
新製品「されど納豆です」を、差別化した商品として積極的に
訴求。すでにダイエー、ニチイ、東急、いなげやなど五〇〇店
に導入。支持層を開拓するため「スーパーのパートさんに、二
万個のサンプリングを実施」(チルド営業部関東営業所森本雅
基所長)している最中。
 
 新製品の効能をイラストを交えて分かりやすく説明したパン
フとアンケートハガキを同封。すでに続々とアンケートも回収
されており「約一割は回収できそう」と、確かな手応えを得て
いるようだ。
 
 

 
『旭松食品、小野工場が竣工、関西のチルド生販拠点』
1993/09/22 日本食糧新聞
 
 旭松食品(株)(大阪市淀川区田川三‐七‐三、06・30
6・4121)は、かねて建設を進めていた関西地区のチルド
事業の生販拠点「小野工場」が竣工、納豆生産を開始した。新
工場は兵庫県の中部、小野市郊外の田園地帯に位置し、中国自
動車道の滝野社インタ近く。交通至便で、京阪神市場へのチル
ド製品の生産、物流拠点としては最適な場所で、敷地一万八三
〇五平方メートルに地域環境に十分に配慮した外観で緑地帯の
中の近代工場として完成している。長年の懸案であった関西地
区の生販拠点完成で同社の納豆チルド事業体制は一段と充実、
年々大幅に成長している市場であり、その対応が可能となっ
た。
 
 同社は「大豆を中心に健康貢献…」を企業理念としており、
「新工場は地域の環境にマッチした建物にするため十分に配慮
し、衛生面、水処理に万全を期し、内部も菌を扱うために見る
場所と作業場を完全に区別する構造にしている。消費者に喜ば
れる商品を供給すること、地域に貢献できること、そして働く
人たちの環境などを考えて建設した。当面は納豆を生産するが
いずれは、納豆だけではなく、チルドの生産をしながら関西の
物流拠点にして行きたい」(木下晃一社長)と語る。現在「な
っとういち」は二五%増の大幅な伸長率で販売推移しており、
今期販売計画は三六億円(前期二七億円)としている。
 
 なお、同社では9日、新工場に地域の関係官庁、販売関係者
など多数を招いて、竣工披露するとともに、小野商工会館にて
盛大に披露宴を開催、席上、木下晃一社長は次の通りあいさつ
した。
 
  ◇  ◇  
 
 木下晃一社長 小野工場は今年2月から建設を進めていた
が、このほど竣工、チルド生産、関西の物流拠点となる工場と
して落成した。ご承知の通り弊社は昭和25年に創業、高野豆
腐の生産販売を通じて現在全国シェアの五五%になっている。
続いて第二の企業の柱として昭和56年に生タイプの即席味噌
汁を製造販売して、生タイプ部門では業界のナンバーワンにな
っている。続いて昭和59年には、これからの食品はバイオテ
クノロジーにあると考え、納豆菌の研究を重ねて、バイオ研究
にて匂いひかえめの納豆を開発、「なっとういち」の商品名で
生産、販売したところ、とくに関西市場に受け入れられた。弊
社の工場は発祥地である長野県飯田市にほとんどが集中してい
ることから、一大消費地の関西地区に工場を持つことが私ども
の念願だった。この小野工場は納豆を中心としたチルド商品
と、それらの物流拠点としたいと考えている。チルド商品は日
持ちの関係から、消費地に近いところに工場があるのが有利な
ことは、ご承知の通りで、数年前から関西に拠点を設けたいと
土地を物色していた。交通の便がよく、水が豊富で、人手確保
など条件を満たすところは困難だったが、不動産、建設会社、
地権者、当地関係官庁の協力を得て、平成4年に土地を取得、
その後予定通りに竣工したことを感謝している。小野工場は長
さ一三五平方メートル、幅四五平方メートル、高さ一四平方メ
ートルのスケールで、建てるに際しては、地域の環境にマッチ
した建物、働きやすい環境、衛生的で見学できる工場、という
ことで設計に配慮し、設備は最新鋭の機械を導入して、できる
限り省力化を図った。地域に密着して、地域の繁栄に役立つ工
場として運営して行きたい。
 
 〈工場の名称および所在地〉小野工場‐兵庫県小野市新部町
字大寺一九六六、電話07946・6・7109
 
 〈建設目的と特色〉(1)関西地区におけるチルド事業の主
力生産、物流拠点として第一期工事を完了(2)生産能力は、
当面納豆生産のみとし、日産六t(一〇〇俵)(3)生産設備
は、高品質の商品を安定的に生産することを目的とし、コンピ
ューターを随所に導入し品質管理体制を強化する(4)市場隣
接工場として、少量多品種にも対応可能な新システムを導入
(5)小野工場の完成によって関東の友部工場、中部の高森工
場、関西の小野工場と、各主要市場に生産、物流拠点が配置さ
れ、市場にきめ細かな対応が可能となる。
 
 〈年間生産額〉一〇億円
 
 〈投資金額〉土地一〇億円、建屋、機械二〇億円
 
 〈建物概要〉鉄骨造、一部二階建て、敷地面積一万八三〇五
平方メートル(五五三七坪)、建築面積七、五三四平方メート
ル(二二八〇坪)
 
 〈人事〉二〇人
 
 

 
『フジッコ昆布ミネラル納豆キャンペーン、子供向け調理器具5点プレゼント』
1993/09/15 日本食糧新聞
 
 フジッコ(株)(本社‐神戸市、078・303・525
2)は、子供向けの調理器具を二〇〇〇人にプレゼントする
「フジッコ昆布ミネラル納豆」キャンペーンを実施する。
 
 キャンペーン期間は9月1日〜同10月31日までで、期間
中、対象商品(フジッコ昆布ミネラル納豆カップ三個組、トレ
ー三個組、二個組)にプリントしてある応募マークを二枚一口
にして官製はがき、応募はがきのいずれかに添付し、〒535
大阪市旭郵便局私書箱104号フジッコ(株)プレゼント係ま
で応募すると抽選の上二〇〇〇人にプレゼントされる。
 
 調理セットは料理研究家坂本廣子先生が子供のためにデザイ
ンした缶きり、キッチンハサミ、ピーラー(皮剥き)、計量ス
プーン、さいばしトングの五点。
 
 

 
『味の世界で東西交流、関西人に納豆、東京で牛モツ』
1993/09/04 日本農業新聞
 
 関西の食卓で納豆消費量が増えている。五年前に比べ倍増の
勢いだ。「納豆嫌い」で有名な関西人の味覚を変えようという
この戦略、いわば″食の常識″に挑戦した形。逆に「関西の
味」を東京に売り込む動きも活発。いずれも、味にこだわる関
西のユニークな食品企業群の活躍が背景にある。
 
 関西圏での納豆売り込みの仕掛け人は、凍り豆腐メーカーの
旭松食品(本社大阪市)。同社は九年前から商品ラインに納豆
を加え、関西での売り込みに社運をかけた。そして、三年前に
本社を長野県から大阪に移転、「納豆嫌い」の関西人の味覚に
挑戦した。
 
 結果は見事な作戦勝ち。今では年間売上高百五十億円の約二
割を占める同社の主力商品に成長。木下晃一社長は「納豆は健
康食品ということで見直され、それが関西にも波及したため」
と話す。
 
 納豆独特のにおいを抑える特殊な発酵菌を使用するなど、製
法にも工夫を凝らしたことがヒットにつながった。関西の納豆
消費量は関東の約四分の一とまだまだ少ない。それでも、木下
社長は「私は″医食同源″が経営信条。食わず嫌いを絶対に変
えてみせる」とファイトを燃やす。
 
 関西ではモツ、ホルモンと呼ばれる内臓加工品「こてっちゃ
ん」を販売するスタミナ食品(本社兵庫県西宮市)。最近の
「モツなべブーム」に乗って、五年三月期の売上高は前期比
九%増と順調に拡大。森島征夫社長は「原料は大半が輸入なの
で、円高で一層安く提供できるはず」と鼻息は荒い。
 
 同社は、今年六月に船橋第二工場(千葉県)が稼働。関西の
味「こてっちゃん」の東京圏での売り上げ増を狙う。今では東
日本での売り上げが四五%を占めるまでになった。森島社長は
「牛内臓の料理は世界中にある。将来はアジアに製造拠点をつ
くり、現地でも『こてっちゃん』料理に親しんでもらう」と夢
を描く。
 
 手作りデリカテッセン(洋風調理済み食品)の販売大手、ロ
ック・フィールド(本社神戸市)の人気商品は「神戸コロッ
ケ」。独特の味覚が若い女性の間で人気を呼び、今では全国ブ
ランドに成長した。岩田弘三社長は「デリカ分野で欧米に追従
する時代は終わった。今後は″ニッポンの洋食″の時代」と言
い切る。
 
 味にこだわるこれらの食品会社は、いずれも最近、株式を公
開、上場を果たしたばかり。深刻な消費不況下でも着実に売り
上げを伸ばしている。
 
 「任天堂や青山商事も最初は零細企業だった。社会構造の変
化をうまくキャッチすれば、チャンスはある」と岩田社長は言
う。大企業が苦闘する中、味覚を武器に元気印の関西企業の夢
は広がる。
 
 

 
『冷やし中華人気メニュー3選 「納豆冷やし」』
1993/06/07 日食外食レストラン新聞
 
▼作業マニュアル
 
大粒納豆を茹でて洗った麺の上にのせ、ねぎをちらし、卵黄、
もみのりを添え、冷やし中華スープ(ヤマサ)を倍にのばし
て、溶き辛子を加えてかける。
 
 ※納豆は、熱湯をかけてぬめりを洗い冷やし中華スープ(ヤ
マサ)の原液で下味をつけたものを使ってもよい。
 
 

 
『[食文化を訪ねて]「しょぼろ納豆」茨城』
1993/05/21 日本農業新聞
 
 「あのにおいとネバネバ……、どうも」という方も決して少
なくありませんが、最近、″納豆は地球を救う″と絶大なる評
価を得ている納豆です。作り方が簡単で栄養面の優れているこ
とから、本場、茨城県水戸地方では農家の栄養食、保存食とし
て昔から親しまれてきました。今では少なくなりましたが、寒
の時期に作って保存しておき、田植えの季節に欠かせない副食
「しょぼろ納豆」を水戸市郊外に訪ねました。
 
 千波公園で開かれている「グリーンフェア′1993いばらき」
のにぎわいをよそに、同市飯富町は田園の静けさを見せていま
した。JA水戸市婦人部飯富支部長の西宮みどりさん(五四)
宅へは、寒さがしみる二月に「しょぼろ納豆」の仕込みの時に
訪ねましたが、今回は田植えシーズンを間近にひかえていまし
た。
 
 「私がお嫁にきたころは、しょぼろ納豆を一斗のかめに作っ
ていました。ご飯の上にたっぷりかけ、お茶をかけて食べる
と、これがうまいんですね」と、顔をほころばせる西宮さん。
大豆は″畑の肉″といわれ、各家庭では手軽に納豆に加工し
て、いつでも食べていたそうです。
 
 一斗のかめに作ったといいますから、十八リットルもの容量
になります。の一斗のかめは、いまは梅干しの貯蔵用に使い、
「しょぼろ納豆」は二升(三・六リットル)のかめに作るそう
です。
 
 「納豆作りはほんとうに簡単」という西宮さん。昔は「水納
豆」といって、煮豆を入れたわらつつこ(苞=つと)を水を入
れたおけの上に置き、二昼夜もすれば出来上がります。「水お
けの上で水分が逃げず、うまくできるもんです。おばあちゃん
の代から作ってました」。いまは電気毛布を使って作ります。
 
 大豆は一昼夜水に浸し、圧力なべで煮た後、わらつつこに入
れ、わらつつこをお湯で少し濡らした後、電気毛布にくるんで
一昼夜すると出来上がり、といいますから、簡単ですね。納豆
菌を使わず、わらの中にある菌だけで作ります。こうして簡単
にできるのも寒いうちだけです。
 
 「しょぼろ納豆」を仕込むのも一〜二月の寒い時期です。割
り干しダイコンをみじん切りにし、納豆に混ぜた後、五%程度
の塩を振ってかめなどに入れ、よく密閉して保存します。かめ
の中は温度差も少なく、保存には最適です。ダイコンの辛みも
抜け、塩馴(な)れのうま味を引き出した塩蔵方法といえまし
ょう。
 
 春の農繁期の、猫の手も借りたいこの時期に「しょぼろ納
豆」をご飯にかけて食べるお茶漬けは、簡単でしかも栄養的に
も十分といえる食事になります。いまはお茶漬けで食べること
は少なく、西宮さんは、チャーハンや包み揚げ、てんぷら、コ
ロッケ、オムレツなどの具に入れるなど、若い世代でも食べや
すく工夫しています。
 
 最近は「しょぼろ納豆」を作る人は少なくなりました。JA
婦人部でも度々講習会を開いたりしますが、そのおいしさを理
解できても、いざ自分で作るとなると皆しり込みしてしまうそ
うです。そんな中で、西宮さんは、お嫁さんのみゆきさん(二
九)といっしょにお料理をし、味を伝承するようにしていま
す。みゆきさんも「もともと納豆が好きでしたから、しょぼろ
納豆もおいしくいただいてます」と、お母さんと知恵を出し合
いながら、いま風の味づくりに腕を磨いています。
 
 大豆は、煮た後は、自らが稲わらの力を借りて納豆へと自己
開発を遂げます。煮るためのエネルギーを加えるほかは、とり
たてて人の手を必要としません。栄養は、たんぱく質に脂質、
糖質、繊維質などのほかにミネラルは多種多様で、おまけにコ
レステロールはゼロ! 個人の健康と地球環境を守るには納豆
しかない、という食べ物です。
 
 しかしこの″庶民の味方″、いつどのようにして日本人の食
べ物になっていったかがはっきりしません。源義家が東征の陣
中で煮ておいた馬糧の大豆が発酵したことにヒントを得て考案
した、という伝説が各地にあります。奈良時代に中国から伝わ
った、ともいわれていますが、いずれ大豆と稲わらの組み合わ
せは農耕民族の食生活としては″必然性″十分です。
 
 江戸時代の初期には、水戸藩に「なんぞ なんぞ なんなん
ぞ なんぞの先に糸つけて……」という童歌が流行っていまし
たが、この中で「な」の字が十個歌われ、ナットウという答え
が分かるなぞなぞゲームです。こうした記録からも、当時、す
でに庶民の味になっていたことがわかります。
 
 茨城県の納豆生産量は、全国の一割強を占めますが、「水戸
納豆」といえば小粒納豆です。この小粒大豆は県北を中心に生
産されていますが、地味が悪いという地域の風土をうつしてい
ます。特に水戸市を流れる那珂川は、台風のたびにはんらん
し、収穫日を前にして浸水の憂き目に遭ってきました。そこで
早生系の大豆、小粒系の栽培が盛んになったわけです。
 
 この「水戸納豆」を全国ブランドにしたのが、一八九〇年に
開通した国鉄常磐線です。水戸駅で農家の子供たちが自家製納
豆を「駅前納豆」として、″ナットウ、ナットウ――″と、芸
術的かつ喜劇的なエールで呼び掛けたため、たちまち人気を博
しました。
 
 「手前みそ」ならぬ「手前納豆」といわれるほど、各家庭の
味がにじむ納豆は、素朴な郷土食です。冬を中心にした食べ物
ですが、「しょぼろ納豆」のような塩蔵物や干し納豆のような
乾燥物で、暮らしを豊かにしてきた農家の暮らしぶりがしのば
れます。
 
 <しょぼろ納豆・作り方>
 
 ▽材料=小粒大豆、切り干しダイコン、稲わら、塩。
 
 ▽作り方=〈納豆〉寒のうちの作業になる。大豆は一昼夜水
に浸す。圧力なべで煮豆の軟らかさに煮る。稲わらの苞(つ
と)を広げ、煮豆を入れる。その時、これは納豆菌がしんまで
回るように、煮豆の真ん中にわらを二本ほど差し込んでおく。
わらつとを少しお湯でぬらし、ふろしきに包んで電気毛布(ス
イッチは「弱」)にくるんで一昼夜おくと出来上がる。
 
 〈切り干しダイコン〉これも寒のうちに作る。ダイコンを縦
に粗く切り、割り干し(馬乗り)ダイコン風に作る。
 
 〈しょぼろ納豆〉納豆(一升ほど)に、切り干しダイコン一
握りほどをお湯で戻し、みじん切りにして混ぜる。塩分約五%
になるように塩を入れる。これをかめに入れ、軽く押さえ、落
としぶたできっちりし、目張りをして保存する。
 
 

 
『アマランサス入り納豆発売、青森県のJA新郷村』
1993/05/04 日本農業新聞
 
 【青森】健康食品として注目され、優れた栄養特性を持つア
マランサスの栽培に平成二年から取り組んでいる青森県のJA
新郷村はアマランサス入り納豆を開発、本格的に売り出してい
る。
 
 アマランサスは、メキシコからアンデス南部およびインドか
ら東南アジアを原産地とするヒユ科の一年草本。有史以前から
アンデス地方では体力増強用食物として利用され、たんぱく
質、脂質、ミネラル、繊維質などの含有量が多く、アミノ酸の
リジンなども多量に含まれる。
 
 同JAでは驚異的な栄養特性を有するアマランサスに興味を
持ち、転作作物として力を入れ、平成三年アマランサス入りせ
んべいの商品化に成功。現在では栽培農家も六戸に増え、面積
も約一ヘクタールと年々伸びている。
 
 今回、青森市のサン食品工業と提携して開発した納豆は、小
粒大豆に、蒸して柔らかくしたアマランサスを加え、食べやす
さの面で工夫をこらし、評判も上々だ。
 
 同JAでは、ラーメン、クッキーなども今年中に商品化した
いと、特産品づくりに意欲を見せている。
 
 

 
『納豆は世界を救う、来年6月・秋田で国際会議』
1993/04/24 日本農業新聞
 
 栄養価に富む大豆食品や納豆の普及で二十一世紀の食料危機
を救おう――と、国内外の研究者や業界関係者の呼び掛けが実
り″国際納豆会議″が来年六月、秋田市で開かれることにな
り、本格的な準備作業がスタートした。わが国納豆発祥の地で
全国第二位の大豆生産県である秋田での国際会議開催は、新た
な食文化の国際交流と地域おこしイベントとしても注目されて
いる。
 
 開催されるのは、「国際大豆食品フェア・第三回アジア無塩
発酵大豆会議」。一九八五年(茨城県・筑波研究学園都市)と
九〇年(インドネシア・ジャカルタ市)に次ぐ開催。
 
 大豆の、世界の生産量は約一億三千万トンだが、人類の生存
を支える上で不可欠のたんぱく資源。その大豆の生産拡大と有
効な食用化でアフリカなどの食料難に対応しようと、農水省食
品総合研究所(つくば市)の研究者や国内の学者らからなる
「日本伝統食品研究会」や国連大学などが共催し、今回も各界
の専門家、関係者などで「日本組織委員会」を結成、準備を進
めている。
 
 国際大豆食品フェアと″納豆会議″には、米国、中国、韓
国、東南アジア、アフリカ諸国などから約五百人の研究者、業
界関係者の参加が予定れている。フェアと会議では、大豆食品
加工、育種・生産技術、健康・医学面での最新の研究成果の発
表をはじめ、各国の大豆料理・納豆の展示、それに国際協力の
進め方などについての意見交換が計画されている。
 
 同会議の実行委員長で、全国納豆協同組合連合会副理事長・
地元秋田県同組合理事長の山田清繁ヤマダフーズ社長は、「九
〇年四月には秋田市で全国初の納豆シンポジウムが開かれた
が、今回は地元秋田では初の本格的な国際会議で、県経済連や
全農などの農業団体、関係業界広く各界の協力を得てぜひ成功
させたい」と述べ、秋田から世界へ情報発信できる絶好の機会
と期待を寄せている。
 
 <無塩発酵大豆> 納豆菌から作られる大豆加工食品の総
称。日本固有の伝統食品である納豆をはじめ、インドネシアの
「テンペ」、ネパールの「キネマ」、タイの「トゥアナウ」、
それに西アフリカ・ナイジェリアの「ダワダワ」などのたんぱ
く発酵食品も、納豆の仲間。
 
 

 
『発がん抑制を促進、注目される機能性食品、30日から学会で発表』
1993/03/28 日本農業新聞
 
 食べるだけで健康になれる「機能性食品」が注目されてき
た。三十日から四日間、仙台市の東北学院大学で開く日本農芸
化学会で、納豆やマツタケ、ショウガ科の薬味用食用植物が、
発がんを抑えたり、酵素処理すればアトピー性皮膚炎に悩む人
にも食べられる小麦粉になるなど、数々の発表が行われる。
 
 マツタケとがんについて発表するのは農水省食品総合研究所
と桃屋研究所のグループ。マウスに外国産マツタケ四種、市販
栽培きのこ九種、岐阜県産自然発生きのこを与えた結果、マツ
タケでは岐阜県産マツタケの効果が最も高かった。
 
 ヒラタケ、シメジ、クロカワなどにもわずかな効果が認めら
れるものの、マツタケの効果はずば抜けて高かった。ただ、が
んを抑えるにもお金がかかりそう。
 
 また、日本古来の発酵食品の納豆も効果がありそう。これは
東京農業大学と横浜市立大学木原生物学研究所の共同研究。納
豆の中に、発がんを抑える抗プロモーターという物質が出来、
正常な細胞を守る――というもの。
 
 薬味用食用植物の発がん抑制作用を発表するのは京都大学と
香川大学の共同研究。これまで国内の食用作物や海藻類の効果
を調べてきたが、今回は東南アジア諸国で香りや味付けに用い
られている三十二種を調べた。
 
 その結果、ショウガ科三種とミカン科一種、イネ科一種に、
強い発がん抑制の可能性があることが明らかになった、とい
う。
 
 

 
『大豆「トヨコマチ」を減農薬栽培、有機納豆が好評、北海道』
1993/03/18 日本農業新聞
 
 【東川】上川管内東川町のJAひがしかわの溝口泰男さんら
六戸は昨年、二ヘクタールの大豆「トヨコマチ」を有機減農薬
栽培した。この大豆を登別市の加工業者、道南平塚食品鰍ノ依
頼し、有機納豆を製造。このほどJAひがしかわの店舗で売り
出した。百俵の原料で今年は十万パックの納豆を作る計画だ。
この納豆は粒が大きく、「甘みがあって、軟らかくておいし
い」と高い評価を受けている。
 
 大豆栽培は九八%の肥料を有機質にし、農薬は通常の使用量
の四分の一以下にして栽培した。有機納豆は十センチ角の発泡
スチロールに六十グラム、パック詰めされ、二パックが一セッ
トとして店頭価格百六十円で売られている。
 
 大豆の加工には「オロフレ山渓水」エルムウォーターが使わ
れ、豆はじっくりと時間をかけてふかし、低温熟成発酵によ
り、豆の味を出している。パックの包装には「有機納豆」と大
きく書かれている。
 
 納豆にはパンフレットが添えられ、「農産物自由化の中で、
現在の日本の大豆は九五%が輸入されている。赤道を越えて船
で送られてくる大豆はポストハーベスト(収穫後の農薬処理)
の問題もあり、東川町の農家が苦労して生産した大豆で、心込
めて納豆にしました」と書かれている。
 
 

 
『大豆収量の日本一めざす、3年4毛作を確立、岩手の佐藤さん』
1993/03/12 日本農業新聞
 
 小粒大豆を″潤滑油″に三年四毛作――。岩手県岩手郡のJ
Aたきざわ管内の佐藤義一さん(六二)は、納豆用の小粒大豆
を手掛けて、平成四年度全国豆類経営改善共励会に東北代表に
選ばれたほどの農家。連作障害回避などを目的に「三ブロック
に分け、大豆―青刈りデントコーン(またはスイカ)―小麦―
秋野菜」の三年四毛作体系を確立。さらに畜産農家との提携で
有機物施用も十分。種子も全量更新し、目指すは「日本一の収
量」だ。 佐藤さんの経営は借地を含めて田が四・九ヘクター
ル、畑が二・九ヘクタール。約四割が借地。「自分の経験か
ら、田んぼを頼んで断られ、がっかりしたから、できるだけ引
き受けるようにしている」と地域づくりにも気を配る。
 
 大豆の小粒品種の中でも、極小粒種といわれる「コスズ」に
取り組んだのは、種まき期、収穫期が広く田植えとの労力競合
がないこと、耐倒伏性が強いことなどの栽培上の理由のほか、
「品質が安定しており、価格もよい」などのため。
 
 岩手県の普通大豆の平均収量は、多い時で十アール当たり百
六十キロ、少なくて百二十キロの水準。それを佐藤さんは小粒
大豆で、ここ四年十アール当たり収量は平均百七十五キロ。多
年で二百キロを超えている。小粒大豆は普通大豆の三〜四割減
の収量になるので、普通大豆なら二百五十キロ水準だ。以前、
普通大豆を栽培していたころ三百キロを取っていたというから
技術は折り紙付き。
 
 収量、品質が高いのは「三年四毛作」などの工夫のため。品
質向上と連作障害を避けるために、ほ場を三ブロックに分け、
大豆・青刈りデントコーン・小麦・秋野菜の四作物を三年間で
栽培している。また、有機物も、自家保有の乳牛のもののほ
か、地域の畜産農家との間で、麦かんをたいきゅう肥と交換、
年間十アール当たり二〜三トン施用。そのほか、溶リンやカル
シウム資材も施用、土づくりに力を入れている。大豆の線虫、
小麦のタチガレ病、スイカのツルワレ病、ハクサイのネコブ病
の発生がなくなったという。種子も毎年、少量の種子を導入し
て増殖、全量更新だ。
 
 省力化にも熱心。種まきは真空は種機を使う。「厚まきが防
げ、種子量が激減した」ので低コスト化にも役立っているとい
う。野菜ではダイコンは一粒まき、ハクサイでも二粒まき。こ
れで間引きの手間を省く。「欠株の心配はない」と佐藤さん。
輪作体系に自信を深めている。
 
 

 
『原料事情・商品市況 中国産大豆、手配始めたが供給不安続』
1993/03/08 日本食糧新聞
 
 中国大豆の1月末在庫は六六〇〇t程度。使用料は、味噌、
納豆など月平均で二万tほどで「適正在庫三万t」というか
ら、ないに等しいといえる。しかも、大部分のメーカーは「在
庫はない」という具合で、毎日の仕込みも「綱渡りの状況」と
いうのも、あながちオーバーとはいえない。先頃、中国糧油食
品進出口総公司から、現地の商社に入った連絡によると「行政
指導で三万tを確保。長期契約の12月、1月積み」に充てる
意向のようだが、4月積みまでの長契については「契約不履行
の可能性も否定できない」とし「九三年産の日本向け年間供給
量は、平年並みの約三〇万tは保証できない」とサジを投げた
形。行政指導の三万t分についても、産地で手配をはじめた段
階とはいえ、日本着は「3月いっぱいかかるかも」(商社)
と、即効性は期待薄だ。
 
 昨年8月に締結した長契は、九二年11月〜九三年4月まで
で、数量は一二万〜一三万tとみられる。公司では11月積み
は「五船のうち四船を船積みした」といい11月積みは残り一
船。行政指導で確保する三万tは「12月、1月積み」として
おり、日本側の「12月積み三万t、1月積み二万t」(住友
商事油脂部江成課長)と数字的には食い違うがいずれにせよ、
2〜4月積みの五万〜六万tのメドが立っていない状況といえ
る。
 
 

 
『朝日食品、朝日印納豆で春のキヤンペーン実施、マグカップなどプレゼント』
1993/03/03 日本食糧新聞
 
 納豆製造・販売の大手、朝日食品(株)(茨城県牛堀町、0
299・64・2711)は先に実施した全商品へのコミュニ
ケーションマーク導入による包装デザインの刷新に伴い、1日
から5月2日までの二ヵ月間にわたり全国で「朝日印納豆とき
めきツーウェイグッズプレゼント」と銘打ち、春のセールスキ
ャンペーンを実施している。
 
 今回のセールスキャンペーンの特色は、対象商品もA・カッ
プタイプ(スピードくじ付き)、B・トレータイプ(バーコー
ド応募)と二タイプに分けて展開する。
 
 〈プレミアムキャンペーン‐朝日印納豆ときめきツーウェイ
グッズプレゼントA〉▽対象商品‐カップタイプ三種「水戸の
モーニングさんカップ3」「水戸の田舎炭造しそのり付」「水
戸極少カップ3」▽期間‐3月1日〜5月2日▽実施地域‐九
州を除く全国▽応募方法‐前記商品のスピードくじを引き「あ
たり」が出たら、そのシールを官製ハガキに貼り送付する▽景
品‐同社特製オリジナルマグカップ▽当選者数‐一万一〇〇〇
名▽送り先‐〒104東京都中央区勝ちどき二‐八‐一六近富
ビル二階・朝日印ときめきマグカップ係
 
 〈同B〉▽対象商品‐トレータイプ三種「水戸こつぶ3P」
「水戸のモーニングさん3P」「水戸極少3P」▽期間‐3月
1日〜5月2日▽実施期間‐全国▽応募方法‐商品のバーコー
ドを切り取り、希望のコースを選択して店頭応募ハガキまたは
官製ハガキに貼って送付▽景品‐バーコード一枚‐特製オリジ
ナルマグカップ(毎週六〇〇名)、バーコード二枚‐2way
お弁当ふろしき(毎週二五〇名)、バーコード三枚‐2way
エプロン(毎週一五〇名)▽当選者数‐毎週一〇〇〇名(期間
中九〇〇〇名)▽送り先‐〒136‐91城東郵便局私書箱五
一号・朝日印納豆ときめきツーウェイグッズプレゼント係
 
 

 
『中国産大豆輸入が急減、頭痛める加工業界、外国依存体質もろに』
1993/02/19 日本農業新聞
 
 みそや一部納豆原料として利用されている中国産大豆の輸入
が急減している。中国国内での収穫遅れと需要増による価格高
のため、輸出向け集荷が思うように進まず、早急な数量回復は
難しい見通しだ。加工メーカーの中には米国、カナダ産に切り
替える動きもあるが、品質面に問題があることや中国産に比べ
て割り高なため、中小メーカーが多い加工業界では対応に頭を
抱えている。国産大豆の手当てもできず、また輸入依存の体質
のもろさが表面化した形だ。
 
 中国産大豆は、たんぱく質や炭水化物が多く、脂肪分が少な
い、さらに白目(しろめ)といわれる胚(はい)芽部分が白い
品種であり、みそに適している。毎年二十八万トン程度輸入さ
れており、このうち半分強がみそ用に、二割程度が納豆用に利
用されている。
 
 みそ加工メーカーは商社を通じて、昨年十一月から今年四月
までの六か月間で合計十二万トンの輸入契約を中国との間で結
んでいるが、「船積みが遅れたままで、一向に希望通りの数量
が入らない状態になっている」と全国味噌工業協同組合連合
会。
 
 大蔵省の貿易統計では昨年十一月に中国から一万トンの輸入
があったが、十月以前の契分であり、十二月になってようやく
二万二千トン入ってきただけ。
 
 中国側は十二〜一月船積み分として三万トン確保したという
連絡を日本側に通知してきたが、「現地で本格的に集荷するの
はこれからで、日本に着くのは三月以降になりそう」(久保輝
男全国味噌工業協連専務)。
 
 中国産大豆は、天候不順で収穫が遅れたことも原因の一つだ
が、それ以上に中国国内で畜産が増えて飼料用需要が増加して
いることや、豆乳など大豆加工品需要も拡大していることか
ら、輸出契約価格よりも市中価格の方が上回り、この結果輸出
向けの集荷が困難になっている。
 
 農水省では、外務省を通じて中国側に数量確保を働きかけて
いるが、業界関係者の間では「このままでは四月いっぱいでの
中国からの輸入は、せいぜい契約量の半分程度ではないか」と
いう見方が広まっている。
 
 米国産は中国産よりも価格が高いうえに、胚芽が黒い黒目
(くろめ)という品種のため、皮をむくなどの処理が必要で、
そのままでは代替できない。
 
 また国産は生産減で、価格的にも確保は無理。加工メーカー
の中には契約価格の引き上げや製品価格の値上げを検討すると
ころもでるなど、厳しい選択を迫られている。
 
 

 
『くめ・クオリティ・プロダクツ、簡易リサイクルトレーを使用した極小粒納豆「きうり」』
1993/02/19 日本食糧新聞
 
 大手納豆メーカー、くめ・クオリティ・プロダクツ(株)
(本社‐茨城県久慈郡、0294・76・3333)は22
日、簡易リサイクルトレーを使用した極小粒納豆「きらり」を
新発売する。内容量は四〇グラム×三、添付品は特製たれ・本
からし、形態はトレー三段式、小売価格は一六八円。
 
 同製品の特徴は、簡易リサイクルトレーを使用したこと。
 
 トレーはポリスチレンペーパーにポリエチレンを貼った二層
構造だが、納豆を取り出したあと、内側のポリエチレンが簡単
に剥がれるため、このポリエチレンの膜だけを捨てれば、容器
はきれいなポリスチレンペーパーとなりリサイクルが可能とな
る。
 
 環境問題が社会の関心を集め、発泡スチロール容器(ポリス
チレンペーパー)の回収とリサイクルの機運が高まっている今
日、時代の要請に応えた製品となっている。
 
 

 
『バイオテクノロジーの食品への応用、糖質分野の実用化進みニューバイオにも期待』
1993/01/29 日本食糧新聞
 
 食品工業とバイオテクノロジーは非常に長い歴史のなかで、
酒、味噌、醤油などの醸造、納豆やパンへの発酵利用など、豊
富な経験を基盤に独自の発展を遂げてきた。近年になって、そ
のメカニズムの解明とともに、より効果的な利用技術が確立さ
れ、高次の機能を有する新しい糖質の開発等で実用化されてい
る。さらに、今日では遺伝子工学とコンピュータ技術を組み合
わせることで、酵素蛋白質の改変を可能にするニューバイオテ
クノロジーが登場し、将来の食品工業への応用に期待されてい
る。ここでは、食品工業におけるバイオテクノロジー利用の概
観を示すとともに、最も実用化の進展している糖質分野の現状
と、将来の可能性について考えてみた。
 
 食品産業におけるバイオテクノロジーの原点は醸造業、発酵
業などの微生物・酵素を用いる食品加工にあり、広義には生物
の有する種々の機能を有効に食品工業に利用し、食品の健全
性・機能化および工程の効率化・合理化をはかるとともに、新
しい食糧資源を開発するための技術が食品バイオテクノロジー
ということができる。
 
 古来、清酒、ビール、味噌、醤油、パン、ブドウ酒および納
豆製造などの醸造・発酵工業においては微生物・酵素が有効に
利用され、さらに二〇世紀にはいってアセトン・ブタノール発
酵、クエン酸発酵、抗生物質の生産、アミノ酸・核酸発酵へと
進展してきた。酵素利用の歴史を見ると、当初動物や植物の酵
素の利用に始まり微生物酵素の利用へと進展し、一九六〇年代
後半からアミノ酸や異性化糖の製造に見られるように、固定化
微生物・酵素の利用へと発展してきた。
 
 さらに、その後、微生物の改良および培養技術が進み、一九
七〇年代に入って遺伝子組み換え技術や細胞融合技術などのニ
ューテクノロジーの開発が続き、最近では遺伝子工学とコンピ
ュータ技術を有効に組み合わせることによって、酵素蛋白質の
設計と改変を可能とする蛋白質工学(プロティンエンジニアリ
ング)がニューバイオテクノロジーとして登場した。
 
 以上のように、食品工業におけるバイオテクノロジーの発展
を概観すると、微生物および酵素の機能改良とその有効利用が
中心の流れであり、この傾向が将来の発展方向であることは想
像に難くない。
 
 遺伝子組み換え技術および細胞融合技術は将来にわたって微
生物の改良の目的でますます有効に利用され、さらに蛋白質工
学技術は酵素の安定性や機能変換のための必要不可欠な基盤技
術として、またバイオリアクターによる連続生産技術は工程の
効率化・合理化を推進する技術として将来の食品工業の発展に
大いに貢献するであろうと推察される。
 
 その他、生物酵素類似の反応を行う人工酵素の開発にも大き
な期待がかけられよう。
 
 農林水産省では表1に示すような食品関連バイオテクノロジ
ー研究プロジェクトを設立して食品産業の技術革新を推進して
きた。
 
 その中で、「食品産業バイオリアクターシステム技術研究組
合」では二〇課題の研究テーマのうち工業化可能な成果がいく
つか得られており、今後の展開が期待されている。また、「食
品産業酵素機能変換技術研究組合」(表2)においても酵素の
生産性・熱安定性の改良、さらに反応特異性の変換などの成果
が得られ、今後の発展が注目されている。
 
 将来、細胞融合や蛋白質工学等で得られた、新しくデザイン
された微生物や機能がプログラム化された酵素の食品産業分野
への有効利用がますます進展するものと予測されるが、その場
合には安全性の評価が重要であり、各省庁のガイドラインに照
合しての評価の一層の進展がまたれるところである。また、今
後とも産学官連携による研究開発、民間企業間による研究開発
の推進が食品産業分野におけるバイオテクノロジーの発展に重
要であろうことは言うまでもない。
 
 近年、微生物・酵素の生産技術の改良および酵素利用技術の
進展さらに糖質の分離・精製技術の発展によって新しい糖質が
相ついで開発されるようになった。とくに、その中でもオリゴ
糖の分野では澱粉、砂糖および乳糖等を原料にして種々の新し
い糖質が開発されている。表3には今後開発されるであろう糖
質も予想して示した。
 
 日本における食品用オリゴ糖の開発研究は一九七〇年代初期
に端を発し、一九七〇年代後半にはマルトオリゴシルスクロー
ス(カップリングシュガー)、フラクトオリゴ糖、マルトオリ
ゴ糖をはじめとした種々のオリゴ糖が市場に出回るようになっ
た。そして、オリゴ糖には低う蝕性やビフィズス菌の増殖効果
等の生理機能特性(表4)が備わっていることが明らかにされ
るにつれて、その市場も増大の一途を辿り、現在も新しい生理
機能特性を有するオリゴ糖の開発が精力的に進められている。
現在、国内のオリゴ糖の市場は約一〇〇億円に達するものと推
定される。
 
 以上のように種々のオリゴ糖の生産が可能になった背景には
近年の新しい微生物起源の酵素(加水分解酵素および糖転移酵
素)の発見とその利用技術および糖の分離・精製技術の発展が
ある。例えば澱粉加水分解酵素の分野では一九七〇年以降、新
しいマルトオリゴ糖生成アミラーゼが相ついで発見され、その
利用技術とオリゴ糖の分離、精製技術が進展してきたこと、ま
たフラクトオリゴ糖に代表されるヘテロオリゴ糖の分野でも微
生物起源の新しい糖転移酵素が見出されたことなどである。
 
 そして、最近では複合糖質のオリゴ糖鎖が生物情報に関する
分子認識に重要な役割を果たしていることが明らかにされ、糖
鎖関連の分野でも糖転移反応を有効に利用した有用オリゴ糖鎖
の酵素合成研究が盛んになっている。
 
 (1) 糖質開発の現状
 
 (イ) 澱粉を原料とする糖質
 
 澱粉は高分子のグルコースポリマーであり、微生物酵素であ
る加水分解酵素(α‐アミラーゼ、β‐アミラーゼ、枝切り酵
素、マルトオリゴ糖生成アミラーゼ)、異性化酵素(グルコー
スイソメラーゼ)および糖転移酵素【サイクロデキストリング
ルカノトランスフェラーゼ(CGTアーゼ)、α‐グルコシダ
ーゼ、β‐グルコシダーゼ】を利用して種々の糖質が得られて
いる。(図1)
 
 一九六〇年の酵素法によるグルコースの生産以来、澱粉糖分
野では、わが国は常に世界をリードしてきた。一九七〇年代の
バイオリアクターによる異性化糖連続生産は、バイオリアクタ
ーの工業的応用例の中では最大規模を誇り、国内で年間約一一
五万t近い生産量となっている。現在、第一世代の異性化糖
(果糖四二%)以外にカラムクロマトグラフィーを適用して第
二世代の異性化糖(果糖五五%)および第三世代の異性化糖
(果糖九〇%以上)の生産も可能になっている。また、CGT
アーゼの利用によるCDの生産、マルトオリゴ糖生成アミラー
ゼを用いたマルトトリオースやマルトテトラオースを主成分と
するマルトオリゴ糖シラップの生産、α‐グルコシダーゼの糖
転移反応を利用したイソマルトースやパノースを主成分とする
糖質の生産、β‐グルコシダーゼの糖転移・縮合反応を利用し
た機能性苦味オリゴ糖であるゲンチオオリゴ糖の生産、グルコ
ースを原料として酵母を用いた発酵法による低カロリー糖質エ
リスリトールの生産が行われている。その他、プルラナーゼや
イソアミラーゼ等の枝切り酵素の縮合反応を利用して分岐CD
の工業的生産も可能になっている。
 
 (ロ) 砂糖を原料とする糖質
 
 砂糖を原料とする糖質としては図2に示すように、アスペル
ギルス属の生産する酵素(β‐フラクトフラノシダーゼ)を利
用してフラクトオリゴ糖、CGTアーゼを澱粉と砂糖に作用さ
せてマルトオリゴシルスクロース(カップリングシュガー)、
プロタミノバクター・ルブラムの生産する酵素(α‐グルコシ
ルトランスフェラーゼ)を用いてイソマルチュロース(パラチ
ノース)、さらにアルスロバクター属の生産する酵素(β‐フ
ラクトフラノシダーゼ)を用いてラクトシルフルクトシド(ラ
クトスクロース)が生産されている。これら砂糖を原料とする
オリゴ糖は低う蝕性の糖質(カップリングシュガー、パラチノ
ース)として、また腸内フローラの改善用糖質(フラクトオリ
ゴ糖、ラクトスクロース)として現在種々の食品に利用されて
いる。
 
 (ハ) その他の糖質
 
 乳糖を原料とする分野では、乳糖のアルカリ異性化によるラ
クチュロースの生産、また乳糖の水素ガスによる還元処理によ
ってラクチトールが、さらに微生物起源のβ‐ガラクトシダー
ゼを用いてガラクトオリゴ糖が生産されている。また、大豆ホ
エーからのラフィノースやスタキオースの生産(大豆オリゴ
糖)、さらにキシラン、寒天、キチンおよびキトサンを原料と
してキシロオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キチンオリゴ糖および
キトサンオリゴ糖が生産されている。これらの糖質もビフィズ
ス菌の増殖効果を有する糖質または非発酵性の糖質として開発
されたものである。その他、表5に見られるように各種食物繊
維も市販されるようになった。
 
 (2) バイオリアクター利用の現状
 
 異性化糖のバイオリアクターによる連続生産以外に、以上述
べたオリゴ糖の中でイソマルチュロース(パラチノース)とガ
ラクトオリゴ糖はバイオリアクターによって連続生産されてい
る。いずれも菌体内酵素であるために微生物をアルギン酸ゲル
に包括固定化し、充填層型のリアクターを用いて生産されてい
る。
 
 その他、技術的にバイオリアクターによる生産方式が確立さ
れたものとして、フラクトオリゴ糖やマルトテトラオースの固
定化微生物あるいは固定化酵素による連続生産技術がある。
 
 (3) 糖質開発の将来
 
 以上述べた種々のオリゴ糖は大部分が種々の重合度を有する
オリゴ糖の混合物の形で食品用途に供されている。
 
 今後、分離・精製技術の進展により低コストで高純度に精製
されるとともに、さらに新しい機能特性が見出されれば、さら
に食品用途以外の分野への展開が期待される。それがオリゴ糖
の今後の市場拡大のための大きな課題でもあろう。
 
 また今後、遺伝子工学、細胞融合技術および蛋白質工学等の
ニューバイオテクノロジーの進展により微生物の改良とともに
プログラム化された酵素のデザインが可能になり、そのことに
よって新しい機能性糖質の創製が可能になるものと考えられ
る。そのためには糖質開発の分野にもコンピュータを駆使した
糖質のデザインという糖質工学の発展が重要であろう。さらに
利用面を考慮すると糖質の構造と機能との関係を評価するシス
テムの開発が望まれる。
 
 近年、食品の品質をより的確に評価する指標として、食品の
特性を機能面からとらえようとする考えが進展した。生命を維
持して行く上で基本的に重要な栄養素の働きを一次機能、感覚
器官に対する香味成分の働きで食品のアクセプタビリティーを
決定する要因を二次機能、さらに食品が摂取された後、生体の
免疫、内分泌、神経、消化などの系統を調節し、健康の維持や
回復に関係する生体調節機能を三次機能として把握しようとす
る考えである。一方、食品の機能が明らかにされるにつれて、
厚生省は保健の効果が期待される食品と特殊栄養食品の制度の
中に「特定保健用食品」として位置づけ、一九九一年9月に制
度化を行った。
 
 糖質については約一〇種類が関与する成分についての学術委
員会での内部評価が終了し、さらに機能性成分を用いて設計さ
れた特定保健用食品としての評価が進行中で、今後の進展が期
待されている。これまでオリゴ糖の機能性としては、ビフィズ
ス菌の増殖効果による整腸作用、砂糖との比較による低う蝕性
および低カロリー等の評価がなされてきた。
 
 今後、機能性糖質としてさらに発展するためには味覚・風味
機構の解明や消化吸収あるいは代謝において生体にどのような
影響を及ぼすのか等の栄養学および医学面からの研究がますま
す重要となるであろう。その研究の蓄積によってはじめて食品
機能からより高次の機能性食品への新しい展開が可能になるも
のと考えられる。
 
 経済社会の変化に伴って食生活もますます多様化の時代を迎
えている。その中で、一つの流れとして、最近、消費者のニー
ズに対応する栄養機能以外に嗜好性、健康増進、生体調節機
能、さらに食生活における利便性等を追求した新しいタイプの
食品が開発されつつある。
 
 それは食品が単なる栄養素としてではなく、食品の特徴をも
っとも端的に表現するパラメーターである食べる人間の五感や
心の営みにかかわる食品のアクセプタビリティーと健康増進に
寄与する生体調節機能を重視し、さらに食生活の快適性を付与
した新しい食品の登場である。
 
 糖質の分野においても整腸作用、低う蝕性、低カロリー等の
機能だけでなく、今後病気発症や成人病の予防、健康の回復機
能を有し、さらに食べる人間の五感や心の営みへの対応を考慮
に入れたより高次の機能を有する糖質の開発が期待される。
 
 そのためにはプログラム化された酵素によりプログラム化さ
れた糖質をデザイン化するテクノロジーの進展が望まれる。そ
の発展によって、将来、ティーラーメードの複合機能性糖質が
自由自在に生産可能になり、食品産業の分野において新しい需
要の創造と商品の高付加価値化が可能になるとともに、人間の
健康の維持・増進にも大いに貢献できるものと予測される。
 
 なお、現在、食品の三次機能が脚光を浴びている状況にある
が、生体にとっては一次および二次機能ともに重要な機能であ
ることは論をまたない。最後にオリゴの機能別に分けた将来の
食品分野を表6に示す。
 
 (日本食品化工(株)研究所・中久喜輝夫)
 
 〈参考文献〉
 
1、食品バイオテクノロジー
 
 貝沼圭二編著、明文書房(一九八八)
 
2、食物のバイオテクノロジー
 
 貝沼圭二編著、明文書房(一九八九)
 
3、未来に備え未来を拓く食のテクノロジー
 
 食品産業センター編、地球社(一九九一)
 
4、食品産業のためのプロティンエンジニアリング
 
 食品産業酵素機能変換技術研究組合編
 
  食品化学新聞社(一九九二)
 
 

 
『納豆大豆、試作2倍に、早期に技術確立目指す、佐賀・JA小城郡』
1993/01/23 日本農業新聞
 
 【佐賀・小城】今年は面積を二倍にして試作――。JA小城
郡(田中賢二組合長)は十八日、同JAで「納豆小粒大豆」栽
培実績検討会を開いた。関係者二十人が集まり、四年産の反省
を基に五年産では面積を二倍近い五ヘクタールに増やし、試作
することにした。
 
 「納豆小粒大豆」は納豆製造に使用する粒の小さい大豆の品
種。主産地では生産量が減少しているが、消費者の国内産志向
は根強い。
 
 四年産では、土質の違う北部、中部、南部の三地区合わせて
二百六十三アールで試作した。地区ごとにばらつきはあった
が、十アール当たり収量は二百キロと高く、中部地区では三百
キロ以上のところもあった。しかし、粒径が大きく実需者がほ
しがる粒径五・五ミリ以下のものが少なかった。
 
 栽培面では、主産地では一か所に集中してさやが付くのに対
し、試作地では茎全体に均一にさやが付き、刈り取り時に脱
粒、刈り残しが発生しロスが多かった。また熟期が早い分、カ
メムシの被害を受けやすく病害の発生した試作ほ場もあった。
 
 五年産では、四年産の試作者を中心に作付け者を推進し、二
倍近い五ヘクタール規模で試作する計画。種まき期、種まき密
度などについて技術員で詰めを急ぐ。
 
 同JA管内の水田転作は大豆が基幹品目で、ほとんどが豆腐
に好適とされる「フクユタカ」。交付金制度で価格が保証され
ているが、同JAでは、早期に栽培技術を確立し有利販売を目
指している。
 

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